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キンキン気になる実家事情

あの時私さえ、祖母の葬儀にいかなかったら…


あの後ずっとそう考えていた…。


いくら曜子が嫌いだからって、曜子が叔父から襲われて「ざっまぁー」なんてことは到底思えれない。私だってそこまでクズではない。


ちなみに従妹の亮子は葬儀に顔すら出さなかったらしい。

それを考えると亮子は薄情かもしれないが、賢いと思えてしまう…



それでも仕事はなんとかこなさないと…



と思っても…



「先生…これ間違ってる…」


「あ…」


こういうことばかりだった。




「大丈夫か…?」




こんな子供にまで心配させてしまう自分が情けなかった。




当然、目の前にいる希実は、私に何があったかなんてこと何も知らない。


希実はおそらく、大好きな祖母が亡くなってへこんでいるとしか思っていないのであろう…


残念ながら、はっきり言って、母方の祖母にはそんな思い入れはない。

母方の祖母はここの月城家同様、自分の娘の結婚相手を勝手に決めてしまうような人間だ。

もう、その話はここにきてもうんざりするほど聞かされているので、どちらかといえば嫌いである。



ところがだ…



「仕方ない思うけどな…」


「?」


仕方ないって…



「ストーカーか何かだろ?」


「え?」


「俺の母ちゃんもさ、よくそんな顔をしている時、毎回ストーカーのことで悩んでいたんだよな…」


ある意味ビンゴだったのには驚いた。


「まぁ多分、ここにいる限りはなんとかなる思うぞ。」


「え?」


「俺もそうだから…」


「じゃあ希実君も、まだそのストーカーに悩まされているの?」


「まぁな。奴もまだ生きてるからな。」


希実の言うとおり、ストーカーというものは生きている限り標的を追い続けるものだ。


希実は火口家に匿われることによって、安息を得たのだろう。

何せ、火口家は面立ちのいい人でない限りたどり着けない場所だからだ。

もし、希実達親子を追い続ける者がブサイクだったら、見事なぐらいに逃げ切れたということになる。


「だから俺、火口家の跡取りとかになる気はさっぱりないけど、少なくともあの家に置いてもらえるだけの人間にはなりたいはおもうよ。」


「そうか、そうなるといいね。」


それにしても希実の母はホントに偉いと思う。


私なんか、三緑のことを完全に諦めているのに、希実の母はそのストーカーにめげずに幼い希実をしっかり連れて逃げているのだから…。

以前の夜逃げ騒動で、少しだけ「夜逃げには慣れている」という話を聞いたが、おそらく希実の家族は借金取りからではなく、ストーカーから逃げていたのだろう。


私にはおそらくそんな真似はできないな…。



それにしてもこの子すごく勘がよすぎないか?



それどころではない…



「多分だけど…先生のストーカー。今回かなり大ダメージを食らったよね?」


「え…?」


なんでそこまで知ってるんだ?こいつ?



「まぁ先生がここに来てから、そのお相手さん。かなりお灸をすえられて、結構手こずってるけど、やっぱり先生のことは諦められないみたいだね?」


「え?ちょっとなんで?」


この子には何も喋ってないはずなのに、そこまで知ってるんだ?



「で?誰?それ?」



「誰って?」



「元カレって感じじゃなさそうだし。いったい何者よ?」


とまで聞いてきた。



「…あの……なんでそこまで知ってるの…?」



やっと自分の質問を投げかけることができた…



「私、何も話してないよね?」



といったとたん




「あああああああーーーーーーーーーーーーっ!!」



希実はいきなり叫び出した…



「え?」



さすがにこの反応には驚いた。


まさか…相原君がばらした…?

いや相原君が知っているのは、私が祖母の葬儀に出掛けて曜子に追いかけられたことぐらいだ。


それですごい勢いで逃げたということだ。

あとあえて言うなら、その愚痴を少し聞いてもらったぐらいだ。



その時にはまだ、私は曜子が美鳥おじさんに襲われたという話は知らなかったし、その話は兄と電話口で話しただけなので、誰にも聞かれてないはずだ。

家電なら、内線いうのはあり得たが、生憎兄ですら、私の連絡先は携帯の番符号しか教えていない。だから、内線を通じて聞かれることはまずない。


なのになんでこの子はここまで知っている?


「ごめん…今のは聞かなかったことにして…」



希実は何かを隠そうとして必死だ。



「聞かなかったことにしてと言われても…聞いてしまったことだし…誰も知らないはずのことをそこまで言われると…」



その時だった。ドアが派手に開く音がした。


誰かと思ったら…


「希実さま。どうされました?」


すごい勢い良く、入ってきたのは希実付きのメイドのミホだ。


「イヤなんでもない…大丈夫だ。それにその希実さまという言い方は…」


「いいえなりません!あなたとあなたの母上は遠縁の筋でありますが、火口家の一員です!

そこのところはしっかり分別しておかないわけには参りません。」


「まいったなー…」


今までが放置児で過ごしてきた希実からすると、どうもこの状況はまだ慣れないらしい。


「大主様も、希実さまのことは、次期当主よりも火口家の才能を受け継がれていると申しておりました。」


「そんなこと言われてもなー…」


「それだからこそ、もしかしたら火口家の次期当主は希実さまに帰られるかもしれないんですよ‼しっかりしてください!」


「俺はそういうのさっぱり興味ないんだよ。」


ん?まて?


火口家の時期当主って、まさかそれ?二央のことよね?

つまり、月城は二央のことを月城家の当主にする気はないとは言っていたけど、まさか…月城さんは二央を火口家に返そうとしているってことか?

まぁいろんな人から話を聞く限りは、結果的にはそう繋がる。


何せ火口家の正式な跡取りは二央しかいないのだから。


そしてその二央よりも、火口家の才能を強く受けついているのが希実だということを、今聞いてしまった。



これ、二央にとって結構深刻な問題ではないか?


能力の問題で家督争い何てことよくある話だ。



おまけに、同じ屋根の下に住んでいながら、今のところはお互いが火口家の一族の者と明かしていないのだから、こんなことが二央の耳にでも入ったら大変なことになる。


って変な話だが、あれだけ月城家と火口家って交流がある場にいても、ほとんどお互いに名乗りもしないし、接触がないのがまたすごいものある。これもまた、あの一族たちの暗黙のルールであるといえよう。もう月城家にいて3年目に入った今では、ホントそういう空気を読むことはなれた。


最近になって気が付いたが、月城さんは基本、この家の者に関してはフルネームでは絶対に言わない。常に、男性職員に対しては苗字のみでよび、女性職員や自分の子どもたちや愛人には名前でしか呼ばない。希実が来てからというものの、今では行事に参加する人リストをいちいち紙に書いて張り出すことは無くなった。あと、二央と希実とはほとんど接触をさせないように気を配っているのが、ひしひしと伝わってきている。


それって、火口家の複雑な問題を表に出さないように必死なのだろう。


私がしている家庭教師の仕事も昼は希実君で、夜は二央とユキというシフトになっている。

ちなみに希実君は夜は上村さんからのマナーレッスンというカリキュラムが組まれているので、二央とは食事を食べるとき以外の接触はほとんどない。その食事の席も二央と希実の席は思いっきり離れているので、会話すらできない状態だ。




「あ、あの…」



「火口家の才能って?」



「ああーーーーーーーっ!!」



それを聞いたとたんにまたこの反応だ…




いったい何なんだ?




「あなたには関係のないことですわ。」


「え?」



「そうそう。先生には関係がないこと。」


なんか隠している…

それに、ここに来るまでずっと不登校で放置児だったこの子にも何らか才能があるのなら、まずはそこからでもいいから、この子の才能を伸ばしてあげたい。


「それはいけません。私は家庭教師として、その才能について知っておく義務があります。

ぜひ、そのことについてきちんとお話ししていただけますでしょうか?」



私は真剣だ。



なのに…



「え…?」



また反応が変だった。



それどころか…




「……無理」



とまで言われてしまった。



無理って?


いったいなんなんだ?こいつら?

まじでふざけてるんか?



と言いたかったが、



「無理って…?いったいどういうことなのでしょうか?」



家庭教師をしてきて、今まで「無理」だなんて言われたことなかった。


家庭教師をしていてここまでバカにされた気分を味わされたことは無かった。


「いや…いくら先生でもこればっかりは無理だと思う…」


希実にそれを言われてしまい…



「あの…たいへん申し上げにくいことなのですが…。火口家は通常より強い直観能力を持つものが多いのですね。


そこは一族にしか受け継がない能力なもので、希実さまも先生には無理かと申しあげたわけです。」



「え?何それ?」


じゃあ…?さっきのも…その直観能力から来たもの?



「あの…気持ち悪いとか信じられないとか変だとか思われるかもしれませんが…、火口家の者もなるべく意識して、他人のことはいろいろ読まないようにしていますので、普段はあまり見ていないとだけ申し上げておきます。」


なるほど、希実はまだそれが慣れ切ってなかっただけのことか…


「ごめんミホ。俺さ、先生のことはずっと元気なかったから、気になっててつい見てしまったんだよね…」



「え?じゃあ…」


「そう、バレそうになって、つい叫んだ…」




ということだった…




「もういいです。私には無理な世界だということは理解できました。」



「あ、あの…気を悪くしないでくださるとありがたいです。」



「…」



まぁいわれてみればそういう不思議世界の能力を伸ばすなんてことは、さすがに私では無理であると一瞬で理解はした。


それに…



「一応、おおよそは当たっていたので、私もびっくりでしたから、私もつい詰め寄ってしまいました。こちらこそ本当にすみませんでした。」



とだけ言っておいた。



そしてミホは…



「よろしいですか?くれぐれももうこのようなことは、悪用なさらないでくださいね。

あなたの能力は人を困らせるためにあるわけではないのですから。」


「わかったよ。」



「ほんとすみません。

火口家はこの能力を生業に生活しているのです。

依頼されれば、仕事としてその能力を使うことになりますが、それ以外ではなるべく沈めて生活できていますので、そこだけは信用してください。


本来なら、こういう能力でお金を儲けると能力は消えるといわれていますが、あの一族の因縁ゆえになかなか消えてくれない能力らしいのです。」



「俺は別に、この能力のおかげでストーカーから逃げきれ安かったから、ありがたいと思ってるけどさー」


「希実さま!いけません!むやみに使っては絶対にダメです!」


なるほどね…


「でもさ、俺ら何も悪くないじゃん。変な奴から逃げる事ってそんなにも悪いことか?」


まぁ気持ちは判る…


「確かにそうかもしれませんが…これからはなるべくやめてくださいと申しているだけです。

こうやっていちいち説明するのも面倒ですし、先生みたいに受け入れてくれる人ばかりではないことだけは理解してください!」



「はいはい…」



火口家は平たく言えば、占い師や霊媒師やそういった類のふしぎ家系でしたか…



なるほどね…


二央も時々黙り込むところがあるけど、変なことを言うまいと必死でそれを抑え込んでいたわけか…


おまけに、もう一つふしぎな話だったが、それだと美人しかその家にたどり着くことができないという不思議な一族だということも納得は行く…



このこともくれぐれも内密にということをミホさんから言われ、この件に関しては終わった。



私もこの能力、曜子を避けることができるなら使いたいとは思えたのは私だけの秘密であった。




しかし問題は実家のこと…



私は、このまま本当に実家のことを何一つせずに放置して大丈夫なのだろうか?


おじさんは思っていた以上に厄介な人で、そのおじさんのせいで曜子はショックを受けてまた面倒なことになっているらしいしで…

確かに介護は必要ないかもだけど、会話がかみ合わないような人がここまで多いとなるとかなり厳しいと思う。


兄との電話の後で、久しぶりに風子おばさんとも電話で話したが、風子おばさん曰く…


「花江姉さんは美鳥兄さんと6つも年が離れているから、小学校ですら一緒の時期がなかったかもだけど、私は美鳥兄さんと2つしか年が離れていなかったから、子供時代はあんなのと一緒にされてほんっとに恥ずかしかったわ!


姉さんは今になって私の苦労が判ったみたいよ。だから、姉さんは今まで星子ちゃんの気持ちが判ってあげられなかったのかもね。実は姉さんが中学生の時、私と兄さんの様子見て、他人事のように笑っていただけだったのよね。私は兄さんのことですごい困っていたのにさ。自分だけ能天気でさ、ホント姉さんずるかったのよ。


あれあの当時滅茶苦茶ムカついていたから、意地でも押し付けてやったわよ!」


とすごい勢いで、家族会議のことを聞かされた。


私も風子おばさんの気持ちは判る。私もあの曜子のことを、さんざん押し付けられてきたからねー。

その同じ人物から…


あのひと(母)もあの人でホント今回、自分の弟を見ることで反省してほしいと思えた。



今は遠くにいて何もできないこと…

その点が私にとって実家にものすごく借りを作っているようでならなかった。


これってまた近々、父が曜子を私に押し付けに来るのであろうか?ということも頭によぎっていた。


いうまでもなく…



曜子はやっぱり懲りないのであった…




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