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キンキン撤収!年度末!

曜子もとうとう保育園卒業する年になった。


曜子の保育園では今、

曜子と同じ年である年長クラスでは次一年生になるということで、みんな誰もがテンション高かった。

中でもやっぱり曜子のテンションは半端なかった。


「ホンっと楽しみだねー♪」


「あたし、ランドセルしょって学校行くのが楽しみ♪」


と言っていた中、


「ああ私はランドセルじゃないかなー。」


と言っていたのが、あのクラスで一番足が速い美紀ちゃんだった。



「え?」



みんなこの言葉には驚いていた。


「私、パパのお仕事でアメリカに行くの。」


その言葉に



「えーーーーーっ?」


みんなすごい驚いていた。


「じゃあ美紀ちゃんは笹畑小学校には来ないの?」


「そうなるね。」


卒業後まさかのお仕事で、あのなにごとも優秀な美紀ちゃんがアメリカに行くとはだれもが思わなかったであろう。



「ちょっと待って、そうなるとさ、ちーちゃん(千歳)とまーちゃん(真雪)とあゆゆ(亜由子)とみのっち(みのり)は明治里に行くでしょ?さやかとそのか(双子)は八幡小(一応隣学区)いくでしょ?

一緒に笹畑行く予定だったゆっきー(由紀子)は春休みに引っ越しするから…

じゃあこのクラスの女の子で笹畑行くのって、私と誰…?」


「曜子も行くよー」



そうなぜか、それに気づいた亜希が、たった今、ものすごい恐れていたことに気付いたのであった。


同じクラスの赤組には男の子女の子10人ずつというクラスで、本来ならこの保育園からはだいたい笹畑小と明治里小半数ずつの割合で行くことが主流だ。

だがたまに、隣学区である服部小や八幡小学区からも利用されることもあるので、今回のようなことも起こるのはよくあることだ。それも今回は双子の利用者だったため定員は簡単に埋まっていたということ。


「ねぇねぇ曜子も一緒に行くから大丈夫だよー。」


「……」


みんな黙りこくっていた。


「どうしたの?みんな?曜子も行くってばぁー」



この場で陽気に浮かれているのは、曜子だけだった。

曜子はまるで、ちびまー子ちゃんの山団君みたいに一人ではしゃぎまくっていた。


同じクラスから、同じ小学校への持ちあがりの対象者の同性が自分と曜子だけというのはかなり厳しい。

曜子と二人きりなんて、だれもが嫌であろう。



「あーでも白組からは結構女の子いるんじゃないかな?」


ここで気をきかせてくれたのは、しっかり者の千歳ちゃん。


「えっと、美和ちゃん、朋美ちゃん、典子ちゃん、めぐみちゃんがいくはずだよー。」


「んー」


ここで亜希が心のうちで思ったことは…


ノリがいい美和ちゃんはまだしも、朋美ちゃんはいい子なんだけど、まじめすぎて面白みないし、典子は地味で目立たない子だし、めぐみは幼さ全開で全く頼れない…。


なんか、このクラスの明治里女子ばかりが華やかすぎ…いうことに今更、気づく亜希であった。


「あ確か、朋美ちゃんと美和ちゃんってさ、亜希ちゃんと同じ通学班じゃなかった?」


「そうそう大丈夫だってー。」


「あと白組だと誰?」


「ねぇ曜子笹畑だよ~」


とここで陽男は空気を読まずに自分が笹畑行くアピールをしまくっていた。

当然他の女の子たちは曜子のことなど無視。


「あ、確か椎名ちゃんも行くはずだよ。」


「椎名ちゃんかー、あの子なら明るくてしっかりしてるから安心だわー。」


ようやく亜希の気持ちがパッとなった。

こうして考えると、同じ園から同じ小学校へと持ち上がりする子は案外少なかったりする。




そして…




「ごめん。私ね笹畑小行かないんだ…」



なんと椎名ちゃんまで笹畑小に行かないとまでいうありさま。




ちょっとまって!?



どういうこと??




椎名ちゃんの件に関して聞いた時には、さすがに私も曜子もびっくりである。


私はその件に関して、椎名ちゃんの兄である栄太に尋ねてみることにした。




「あんた、まさか引っ越すの!?転校するの!?」


「ん?」



まさかね…。

栄太たちが引っ越すのは無理がある。

なぜなら、栄太の自宅は商店街の中にあり、それもその中でも結構広い土地で経営している旅館だからだ。ちなみに私の家も同じ商店街の中にある不動産屋を営んでいる。それ故に同じ商店街の不動産のほとんどを牛耳っていることもあり、子供の私もこのあたりの事情は結構知っているつもりでいた。


どちらも自営業の子であり、引っ越すいうことは



「あんたんち、旅館たたむの?」


「ちげぇよ」


「じゃああんたの親、離婚でもするの?」


「それも違う」


「じゃあ何?あんたたちだけ自宅をどこかに移すの?」


「それもない」



となると何なんだ?



「椎名のことか?」


「そうよ。椎名ちゃん笹畑に来ないってどういうこと?あんたたちまで転校してくの?」


「俺と美衣子は転校しねぇよ。転校するのは違う奴だってーの!」


「あんたと美衣子ちゃんは笹畑で椎名ちゃんは違うとこ行くこと自体が誰も納得してないんだけど。」



栄太は困った顔で…



「じゃあさ、まだ誰にも言うなよ。」


「うん」


「実は椎名さ受験してさ、国立小学校の受験に合格したんだよ。」


「えぇーーーーーーーーっ!!?」


「わーーーーっ声が大きい!落ち着けってーーーーっ!!」



「ごめん…。」


さすがにこれにはびっくりした。

まぁあのしっかり者の椎名ちゃんなら、幼いうちからの受験でもやってのけれるタイプだと思うけど、まさか、この年でそこまで大出世するようなコースに乗れるとはホントにすごい。

もうほんとにうちの誰かさんにも爪の垢飲ませてやりたいぐらいだ。


「まぁこれも椎名が年少の後半ぐらいから、言い出してたことなんだよな。」


「そんなにも前から?」


「まぁそこまで準備がはやくないと、こんな平民の中の平民から、そんなハイレベルの学校になんか合格しねぇよ。」


まぁ確かにな。

こんなことになるなら、私も受ければよかったとさえ思っているぐらいだ。

私だって自分で言うのは何だが、あの時からしっかり者ポジションだった。

そうすれば曜子とは違う学校に行けたはずだ。


多分、私をまねて曜子も受験してくる可能性はあるとは思う。だが、あの曜子じゃ小学校のお受験なんて、どこの学校にしてもほぼほぼ受からない確信はある。


「でもなんで?」


私はやっぱり、椎名ちゃんの受験動機が気になる。

やっぱり栄太は困った顔していた。


「教師ガンガン物語だっけ?そのドラマの再放送かなんか見てた時にいきなり、


「あたし、制服の学校行きたい!」


と言い出してさ…」


なんか苦しい言い訳だな…。


「あのさ、はっきり言いなよ。」


「あ…」


「曜子が原因でしょ?」


私も曜子と同じ学校に通うのはいやだ。

たった2年間でもいやだ。


もし、曜子と同級生で6年間も一緒なんて言ったら、もう地獄でしかない。

椎名ちゃんの気持ちはイヤというほど判る。


「…んまぁ……、やっぱり判るか…」


私は栄太から、絶対的に目をそらさなかった。



「…ごめんな……さすがにホントのことを言うとつらいかなと思って黙ってた。」


「私は大丈夫だから、ちゃんと話して。」



「わかった。実はさ、お前の言うとおり椎名は曜子のことには3年間も同じクラスでもう、限界超えてうんざりしてたんだよ。」


だろうな…。

2歳児クラスの時から、ずっと同じだったと聞かされていた。


「さすがに3連続はないだろと思っていたら、年中まで3連続で同じクラスになるしでさ。

さすがにうちでは、椎名だけじゃなくて俺も親も美衣子も、お前んとこの曜子には心底頭抱えてるんだよ。」


「やっぱりな…ホンと恥ずかしい…。」


「ええっ!?気づいてたんか!?」


「え?だって、美衣子ちゃんは態度からしてあからさまだし、あんたは毎度曜子のことに関してはあきれ返っているようなことを思いっきり口にしてるし、おじさんとおばさんも曜子がいる時は顔が引きつってて、目が笑ってないしでさ。」


もうさすがにわかる。


どこへ行っても曜子と一緒にいれば、だいたい似たような態度とられる。

自分一人だと、やっぱり周りの人は私には普通にやさしい態度になるので、皮肉にもみんな誰もが態度に出る。


「だから、さすがに椎名も曜子から逃げたかったんだよな。受験準備を年少の時からしていてさ、年中になったら曜子と離れられると思ってたんよ。でまた運が悪いことに年中になっても曜子と同じクラスで、椎名のストレスがMAXになってきたんだよな。さすがに最後の年ぐらいはクラス離してくれと先生に頼み込んだぐらい。」


そこまで栄太の一家から曜子は嫌われていたらしい。


まぁ、あの曜子だ。栄太の一家どころか、下手したら商店街にいる全員から嫌われてそうである。

なんか、曜子のクラスも笹畑学区から出て行く予定の子が男の子含めて5人もいるとなると、まるで曜子から逃げているようにしか思えれなくなってきた。


とあれ?あとさっき栄太変なこと言ってなかったっけ?


「あのさ、栄太さっき転校するのは違う奴だとか言っていたけど…あれ誰なの??」


「ん?お前親から聞いてないのか?お前の通学班の伊藤姉妹だよ。」


「えーーーーっ?貴子ちゃんがっ!?」



それマジで困るんだけど…。



「…てことは私、5年から役職やるってこと?」


冗談じゃないっ!!


「ま、がんばれー。幸い俺の班は次の6年二人いるし5年も俺含めて3人だから、うまくやれば役職逃れることできるけどなー。」


「私もあんたの班に入ることできないかな?」


「ま、無理だろうねー。あきらめろ。班長がんばれー。」



「違うわよっ!副班長よっ!」


「てか、お前の班。伊藤姉以外に6年っていたっけ?」


「いたわよ!高畑さん。」


「ん?そいつとっくの昔にいないぞ。」



「え?」


「確か、そいつキッズハウスで親が住み込みで働いていて、4年生ぐらいまでそこで住んでいたけど、親がそこでの仕事辞めたから、いつの間にか消えてたんだよなー。」


キッズハウスとは、また我が商店街の中にある特殊保育所のことだ。

夜間保育や数日間だけ一時預かりや学童では賄えないぐらい残業がある家庭の子とかを夜遅くまで預かってもらえる施設みたいな場所だ。小さい子とか場合によってはお泊りも可能な保育所である。

高畑さんのこと、影が薄くてあまり見てなかったけど、まさかそんなところに住んでいたとは予想外だった。

そして伊藤姉妹は、商店街の少し路地に入った借家地にある、ささやかハイツの住人だったことを思い出した。

ちなみにそこの大家はうちである。まぁあくまで賃貸住まいなので、いつ転校するかもわからないのも頷ける。


ああもう、曜子が同じ通学班にいる時にまさか4月から2年間も班長を務めるとなるとは思わなかった。

はっきり言って絶望でしかない。


「まぁ気落ちするなよ。サポートはする。」



「じゃあお前家の班に入ってよー」



「それは、いやーーーーーーw」



「もうっ」



結局こうなるのだった。


どちらにしても地獄の始まりはもう見えていた。

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