人質?になるのは誰なんだ?
人質……?……………………って…何?
「まぁいいわ!どーせあなたでしょ?」
「あ?」
水谷家の令嬢はいきなり二央を指名した。
「名前は?」
「火口二央」
え?二央はフルネームで答えていた。
「悪いけど、月城家の子供はなぜか、指定されない限り母親姓を名乗るのが決まりでね。
名字が月城じゃなくてもそんな驚く事じゃねぇ…。」
そういえばそうでした。
そこをきっぱり言えばよかったわけね。
「………えっ…?あなた…まさか噂のあの………。」
「なんだよ?お前さっきから、いろいろ失礼すぎるぞ。」
あの…こんなにも格式高そうな御令嬢に対して、お前呼ばわりするのもかなり失礼思いますが…
「言いたいことあるなら、はっきり言え。」
うわ…ここまで、こんな生意気なお嬢様に対して、ここまでため口口調で言えてしまうこと事態が信じられない…
「…なら違うわ。あなたではない。」
「は?マジ意味わかんねぇ。」
「私だって意味わからないわよっ!なんで人質が女なのよっ!?」
「じゃあ結局、俺なんじゃないのか?」
確か、月城はあの時「二央にはあとを継がせない」と言っていた。
じゃあ二央は元々ここにやる約束していたということ?
「だって、私たちの界隈じゃ有名よ!「間違っても火口二央には、誰も手を付けるな!」って!
だから、あなたではない!」
え?何?というか…私が手を付けてしまったんですけど…どうすればいいの?
それに、固有名詞指定で、そんなおふれが出されていたなんて…すごすぎないか?
「いくらなんでもひどいわっ!」
とまでいっていた。
もうホント意味が分からなかった。
「まぁいいわっ!この際あなたでも!むしろ女の方が安全ってものよっ!」
と言いながら、令嬢はユキを連れて行こうとした。
「待って!」
「何よ!?」
「その子を連れて行かないでっ!」
「は?」
「その代わり私が行きます。」
「せん…あ…星子姉さん…。」
「ふーん。あくまで妹を守るお姉さんね…。」
この子マジでめんどくさい…
できれば関わりたくない…
「まぁいいわ。あなたで…。」
まぁこの先どうなるかは判らないとして、一応、ユキが連れていかれることはなくなったわけだ。
「で?歳はいくつなの?」
なんかイヤなこと聞くガキだな…
「23です。」
「ふーん、それでも私と案外離れているのね。私は15。」
15歳って?まだ中学生じゃないの!?
ユキも一応15歳だけど来月で16歳になるから、おそらくは同学年ではないだろう。
この時ユキですら、思いっきり表情に出ていて、令嬢のななめ後ろから「何こいつ?」と言わんばかりな顔をして令嬢をにらんでいた。そりゃ自分より年下からこんな態度とられるのだから、やっぱりむかつくであろう。
「じゃいくわよ。」
早速、連れていかれるらしい。
「二央。妹たちを頼んだわよ。」
と私は一言二央に残していたら、
「何してるの!早く!」
すごい急かされてしまった。
もう、一時も猶予もないらしい。
勢いで来てしまったけど、冷静に考えてみたらここのなんて言ってたんだっけ?
たしか、この先ここに残るとか言っていたよね?
てことは、私はもう後戻りはできない。
まぁいいか…私は今までやるべきことはやってきたとは思うので、ここで死んでしまっても何も悔いはない…。むしろ、ここで死んで曜子から解放されるなら、それも悪くはない。
「全く何もよりにもよって、あんな忌み子よこすなんてなんなのよっ!!確かに評判通り顔だけは文句なしの合格だけどさ、騙されるところだったじゃない!」
とか何とか、連行中はすごいブツクサ言っていた。
「あの…なぜ、二央がタブーな存在になっているのですか?」
それだ…。
そればかりは聞いておきたい。
だって私はその二央の子供を産んでしまったからだ。
「まぁ月城家だけは知らされてなくても、不思議ではないですわね。
あくまで当事者ですから…」
「???」
「まぁ一番上の方のお姉さま方なら事情は分かっているかもしれないけど。
あの子は一族の血が濃すぎるから、あと最低7代先までは私たち一族たちとは交われないとのことよ。」
「では、あなたたちは親戚筋にあたるのですか?」
「まぁ当たらずとも遠からずって感じでしょうかねー?もしあっても、何代か先で血が混ざっていたりしてもおかしくないぐらいな薄い血のつながりでしょうねー。」
「え?それって?」
「まぁ一族同士で、それなりに調整しあって気を付けてはいるものの、たまにああいう一族の腫物みたいなのが生まれてしまうのよ。」
だから、二央は月城家を追い出されるというわけか…
「顔はすっごいイケメンなのに、ホントもったいない!あれが火口二央じゃなかったら、私が絶対…。」
令嬢はそれでもまだブツクサ言っていた。
まぁ目の前にイケメンがいて、そのイケメンが自分の手に入らないものだと判るとなると怒りたくもなるものだ。まぁ二央はどちらか言えば、かわいい系のではあるがそれでも結構顔は整っている。
てことは、月城家とはなーんも関係ない私が産んだ三緑は問題ないということか?
でも、そんな曰く的なものを背負っている者の子供を産んでしまったとなると私も結構、罪を背負ってしまったということか?とさえ思えてくる。
「さぁついたわよ」
「?」
コンコン
令嬢はドアをノックした。
「おばあさま。香奈江です。」
「お入り」
どうも令嬢の名前は香奈江というらしい。
戸を開けると、それはそれは立派なお部屋だった。
「失礼します。」
「こんな夜遅くに来るなと何度も言っておろう。」
確かに夜も遅い訪問だ。
「どうしてもお話しておきたいことが」
「なんだ?」
「私、この人と結婚します。」
「!!?」
「!!?」
何を言い出すかといえば、かなりぶっ飛んだことを言っているではないか?
女同士と結婚って?
「それは正気か?」
「水谷家の正妻及び正婿は代々、なぜか子を残すことができない者しか来ないため、結局代々お飾りになる宿命なんでしょ?」
なんだそれ?
ホント金持ちの家のしきたりはよく判らん。
正婿ってなに?
「いかにもそうだが」
「なら、相手が女の子でもいいじゃないですか。つまり夫が女だと子孫は残せない。そういう原理じゃいけませんか?」
なんなんだ?それ?
やっぱり、ユキを連れて行くのをやめさせてホントによかった。
こんなふざけたことにあの子を巻き込ませるわけにはいかない。
「私やっぱり、無理です…。おばあさまの言うことには従えません。
一応、形だけは結婚式はします。お願いです!私のお願い聞いていただけませんでしょうか?」
なんだかよくわからないがものすごく必死だ。
しばらく、沈黙が続いた。
そりゃそうだ。
こんな無茶なお願いをしているのだ。
「許さぬ!」
「え…?」
「香奈江。もう遅い。それは無理だ。」
「そ、そんな…。」
香奈江は絶望的な顔をしていた。
「話が違うではありませんか!?16歳の誕生日までに相手を連れてこれば、考えてくださるって言ったではないですか!?」
「うむ、確かに考えるとは言った。で考えてはやった。それだけだ。
いくらなんでも女と結婚するなんてことは戸籍上できないから無理だ。」
考えるだけ考えてはやったというのは、かなり意地悪いものあるが、女同士では戸籍上夫として籍を入れることができないのはそうですわな…
「それに相手はもうとっくに決まっておる。」
「…そんな……。」
「そう驚く事でもなかろう。式は明後日。お前の16の誕生日に予定通り執り行う!」
え?16歳の誕生日目前だったわけ?
それなら、決まっていてもおかしくはない。
「これも掟じゃ。
水谷家は代々基本ほぼ女しか生まれないため女主とする。(たいていは)長女が跡取りとする。
水谷家の跡取りは結婚できる年齢の誕生日に、必ず結婚しないといけない。
水谷家は代々正婿との間には子ができないため、裏事情では一妻多夫とする。
これはわしら水谷家が血を残すためにしてきた伝統だ。
覆すわけにはいかない。」
そんなのって?
一族のエゴでしかない。
そこまで血を残さないといけない家系なのか?
「仕方ないのだ。
もし血を絶やした場合。我々一族は…………」
なんだそれ?とおもったとたんだった。
「イヤーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「………でな。」
肝心な部分は全部香奈江の叫び声でかき消されて聞こえなかった。
「まぁ別に何人男がいようが、別に悪くはないもんだぞ。
わしも若いときはしっかり遊んだわい。ま、今も現役だしな。」
なんかさり気にすごいこと言っている。
「お方様、いかがいたしましょう?」
「うむ。薬を打っておけ!式まで見張りをつかせる。」
「はっ」
「いやーーーーやめてーーーーーっ!」
香奈恵のおばあさんのおつきの者は香奈恵の腕に注射を打とうとしていた。
「いやーーーっ!!…やめてください。」
「お前が、わしの言うことを聞かないからだ。」
「打たないでください」
「じゃあ、わしの言うことを聞くか?」
これってマジでひどくないですか?
「ま、もう遅いけどな。」
とっくに針は刺さっていた。
「……あ…ああぁ……」
香奈江の目はあっという間にうつろになってきた。
「いいか?お前は明後日の誕生日、花嫁となる…。それは決定事項だ。判ったな。」
といったとたん
「…はい…おばあさま…」
さっきとは打って変わって、なぜか香奈江はいいなりになっていた。
これって…
実は以前も見たことがある…
前にトキが月城に反発した時もまるで操り人形かの如く、いいなりになっていたことがあった。
それにしても、ユキと同い年の女の子が明後日結婚すると考えると、恐ろしいものあった。
そして私たちはこの冬休みいっぱいはこの家で過ごすように言われているとなると…その結婚式をユキも聞きも目にするとか⁉
それだけはなんとしても、あの二人にだけは見せてはいけない気がする。
「あんたも部屋にお戻り。」
「え?あの…」
「大丈夫だ。月城の家の者には、わしらは何もできぬ。
だいたい、あれぐらいの仕置きだったら、月城の家でもあってもおかしくは無かろう。」
どうやら、違法薬物か何かは謎だがそれについて、疑問に思っているのだろうか?
それも疑問ではあるが、そんなことよりも…
「あの…それではなくて」
「なんだ?」
「その、あさってのあの子の結婚式のことですが、それは私たちも参列することになるのでしょうか?」
「なんだ?そなたはわしの孫の結婚を祝ってくれないのか?」
「いえ、私だけならいいのですが、せめて弟と幼い妹たちだけは免除していただけないかと…」
「妹たちの年は?」
「弟は17歳。妹は15歳と11歳です。」
ご婦人は少し間を置き考えたのち、
「よかろう。基本15歳以下は参列不可だ。」
ホッとした。
「でも弟はちと微妙だな…。ま、いっか面倒だ。免除しよう。」
私たちだけの身だけでもなんとかうまくいった。
私は皆がいる部屋まで帰ることができた。
が私は香奈江のことはどうしても救えなさそうだ。
予定通り、式は行われた。
金持ちの正婿とかってまた、とんでもないことにまた年の離れたおっさんだった。
それもバツ2の男で、前妻との間に一応子供は一人ずついるらしい。
かつて徳川家康も若いときは子供を産んだことがある女性を側室に迎えていたことが多々あったため、それにあやかり、水谷家でも正婿はたいていは、過去に子供をなしたことがあるバツが付く男を婿に取っているとかで…。これまた滅茶苦茶な話である。
どちらにしてもなるべくなら、一人目の婿で跡取り問題は解決してほしいという気持ちは判る。
が逆徳川家康の法則を使うこの家はさすがに異常である。
と思っていた時だった。
「ま、俺らが関わる家はまともな家がないのが当たり前だな。」
という声が聞こえてきた。
声がする方を向くと二央がすぐ隣に座っていた。
いつのまに?
「あんた免除されたんじゃ?」
「別にいいよ。あいつらとちがって、こういうの慣れてるし。」
「ちょ、あんたあの子たちどうしてるのよ!?」
「どうって?」
二央は上の窓の方を指さした。
そこにはユキとキキがいた。
隣には水谷家の乳母っぽいおばさんも一緒にいる。
それなら安全か?と思いきや。
おいおい、どっちにしても結婚式みてるんじゃないか?
きれいなウェディングドレスを見て、感動しているような純粋な目で見ていたのだけは救いであった。
頭の飾りつけのせいで上から顔がはっきり見えないせいか、まだベールはがされていないせいか?遠すぎて花嫁が誰だか理解していないだけなのか判らんが、窓越しに目をキラキラさせて見学している。
二人はこっち見て、手を振っていた。
ホント二人がまだ純粋な表情で純粋な気持ちで見学してるだけならとまだ安心はしていた。
でもこの結婚式…
実際は異常でしかないものでしかない。
それでも私たちはただのゲストなので見守ることしかできない。
ホントめちゃくちゃな家とばかり、ここ近年関わっている。
結婚式は無事終了はした。
ずっと催眠みたいなものに駆けられているのかよく判らないが、本当にいいなりだった。
そしてさらに驚いたことが…
花嫁の父役が
「この度はうちの娘の結婚式に参列していただいてありがとう。」
あの時、一緒にダンスしたオジサマだった。
「あの子の母の正婿の水谷幸助です。」
それにはホントにびっくりした。
「娘が最後にわがまま言って本当にすまなかったね。」
「いえ、お気になさらずに。」
「あの子の母はすでにいないから、実質上、親は私だけになるのだよね。
だから、あの子には幸せになってほしいとは思うものの…
やっぱりこの家の掟にはあらがえないというか…そこが残念だが…
私たちは本当に見守るしかないのだよね…」
てことはこの人もバツイチか何かか?
まぁいいや。
どちらにしてもこの家でまともそうな考えな人は、この人しかいないのだなということは判った。
「でも本当によかった。君が僕との約束を守ってくれていて。
察しの通り、あの会場にいた関係者の家はどの家もまともな家はない。
それだけは肝に銘じておくれ。」
そして…
まぁお察しの通り…
その夜は当然…強行突破されるという、別のお話ということになる…
でまた、新年早々水谷家から、とんでもない騒動に巻き込まれることになる。




