キンキン吠えるよ発表会
あれから1年ほどたった。
曜子も4歳児となった。
去年の運動会はほとんど曜子が原因でさんざんだった。
で今年の運動会はどうだったか?と母から聞けば、
「曜子ちゃんも立派に成長したわー。星子ちゃんも見にこればよかったのにー。」
とはいっていたものの、いまいち信憑性なかった。
この人はもの事ポジティブにしか見なさすぎる。
去年と同じように栄太にも聞いてみたら、
「んーまぁ去年よりかはマシだったかなー…。」
と遠い目をしてそう言っていた。
ああこれは…。
多分だが、なんか隠してそう。
もしくは口にも出せないことを曜子はやらかしたかだ。
まぁいいや。そこはそこでだいたい予想はつく。
「それよりも。。。もうすぐ保育園発表会だよな。」
「ああ…」
そういや去年、曜子が途中で強制退場したんだっけ?
ただ単に突っ立っているだけでダンスすらできない子も実はいたらしいが、曜子はその子以上にやらかして退場したんだっけ?
おまけに自分の出し物で、ミスったリベンジで年長組の出し物「シンデレラ」にまで無理やり出演してしまうという想定外のやらかしまでやってしまったとか?
去年はいろいろ栄太から聞いて、さすがにいかなくてよかったとさえ思った。
今年の発表会も母からくるように言われてるけど、当然私はじいちゃんとともに逃げる予定だ。
じいちゃんは毎週土曜日には朝早く散歩に出て、その帰りには喫茶店でゆっくりモーニング食べて帰るのが日課だということは知っている。休日に早起きすれば、じいちゃんのこの習慣に乗っかることができるのだ。だから私は休日は絶対的に早起きをする習慣があった。
ここまでくると、じいちゃんはなぜ通うことはうまいこと避けている感はある。とにかくじいちゃんと一緒にいれば、曜子とは関わらないで済むいう要領だけは小学生に上がってから、よくわかったことだ。
「なぁ、お前また保育園の行事来ないのか?」
「まぁ」
行きたくないことは栄太も重々承知なのでは?と言わんでもわかるだろう。
「気持ちはわからんでもないけどさ。お前に会いたがっている奴が多くてさー、来ないと俺がまた責められるんだよなー。」
私だって、別れてしまった友達とはたまには会いたいしお話ししたい。
でもまた行ったら多分私が終わるのが目に見えてわかるので…。
「まぁ今はホント奇跡的にも、あの曜子がお前の妹いうことは誰にもバレてないようだけど、どちらにしてもあの曜子が学校に上がったらそういうわけにもいかなくなるから、慣れておいた方がいいと思うけどなー。」
それなんだよね…問題は…。結局5年生になったら、曜子が1年生で入ってくる。そこの年から、特に通学班は私にとって暗黒時代となることが予想される。5年生の時は多分、6年生の伊藤さんと高畑さんが班長と副班長をやってくれる予定だからいい。
その時は問題は6年生になった時だ。私と伊藤さんの妹の貴子ちゃんしか6年がいなくなる。その時は絶対的に貴子ちゃんに班長を押し付ける勢いでいる。あの曜子がいる通学班で班長になるのは地獄でしかない。
「あ…うん、また感想聞かせて…。」
「ったく、今回は椎名が合唱でソロパーツ歌うから、聞いてほしかったんだけどよー」
「なんだー。優秀な妹をまた自慢したかったんかいなー」
そんなことだろうと思ったよー。
と思っていたら栄太はまた顔を真っ赤にして
「うっせーなーそんなんじゃねぇーよー。」
とちょっとすねてる。
「あはは、でもよかったじゃん。椎名ちゃん今回いい役とれてー。」
「まぁ…な…。」
「椎名ちゃんの声。すごくきれいな声してるから、ホントはまり役思うよ。」
「ありがとう。」
という会話をしたばかりの4日後の土曜日…。
「プログラム6番 年中きいろ組 輪唱かえるの歌 切手のない贈り物 あなたに愛をこめて」
「かーえーるがかーえーったー♪」
でまず始まる
最初の切り出しの子ほんの5・6人だけが歌っていたようだが、やっぱり歌がうまい子が選出されていたらしく、かなり上手に歌えていた。
続いて次のグル-ぷもあまり違和感がなかった。
問題は中間点のグルーブ…。
なんかとんでもないほど吠えるように歌う男子3人ぐらいいた。そしてそのグループには曜子がいた。
もうそこまで来るとめちゃくちゃだ。
次のグループはドン引きしながらもなんとか普通に歌っているようだが、結局前のグループに声がかき消されている。もうこれどうなるよ?と思っていたら、
「ケロケロ歌うよ♪かえるさん♪」
最後はまた一番最初のグループの子がまた再度歌っていたらしく、そのおかげで結果的になんとかうまく占めることができた感じだった。
はっきり言って、4グループ目の子たちの歌声は全く聞こえてなかった…。
おそらく、歌があまり得意ではない子たちが、4グループに割り振りされたとみる。
次は無難に切手のない贈り物という曲のチョイスだったが、これもこれで例の曜子たちのグループが無駄に吠えていた。なんかまるで、あの子たちは曜子の声をかき消したいぐらいの大きい声で吠えるように歌っていた。まぁあの声3人がかりでやっと曜子のあの声に対抗できるんだろうなとはいえる。そこまで曜子の声は強烈的にでかいのだ。
はっきり言ってあんなの騒音すぎる歌声だったというのに主任のかおる先生は
「はいげんきいっぱいにうたえましたー」
とニコニコに褒めまくっていた。
まぁどちらにしても曜子一人の声で独走されたよりかはいいかとさえ思える出来であった。
個人的にはその3人のボーイたちに感謝だ。
そして問題はラスト曲。
栄太の妹椎名ちゃんがソロで歌うパーツが多い曲である。
そこは曜子たちのグループは歌わずに楽器の鈴を使う役目を曜子たちは担当していたらしい。
ちなみに曜子たち以外のグループは合唱担当した。
「あーなーたーにおくりーたーい♪」
「るるるるるるーーーーー♪」
そこまではよかった。
なんと最後のパーツを
「愛をこめてぇーーーーーかいたてーがみーはーーーーーかーぜにーーーーのーーーーってぇーーーー!!!おーーーくーーりーーーーまーーーすうーーーーーー♪」
とあのキンキン声で曜子が全部歌い切ったようだ。
あれほどまでに最後の歌は歌うなと先生から言われていたにもかかわらず、曜子はよりにもよって本番で主役の椎名ちゃんのきれいな歌声をかき消したらしい。
それを何を勘違いしてか、なぜか一応そのまま拍手喝采でそのステージの幕は閉じたとのこと…。
いうまでもなく曜子は裏では批難ゴーゴーで先生に怒られたという。
曜子が何で椎名ちゃんの役を奪ったかと理由を後で聞いたら。
「だって椎名ちゃん一人の声だとみんなが聞こえないかと思ったんだもん」
らしい。
そういう場面判らなかったとはいえ、何とも言えない幕開けだった。
これで私はますます曜子とは関わりたくないと思えて来たのだった。




