シンデレラバトルは誰が勝つ⁉
月城家に残った娘は残り4人。
月城家の娘は10歳になるとメイドの仕事を手伝うことになる。
残りの娘のうちの六女のリキはすでにメイドの仕事は放棄している状態だ。
他は八女ユキ、九女キキ、十女トキの3人。
ここ、最近でメイドの数は思いっきり減少したため大忙し…なーんてことはなかった。
何せ、今までサボりまくっていたメイド長のアキとフキと実質上短時間バイトのリキが抜けただけなので、一気に3人抜けたとはいえ、あまりたいしたことはなかった。
が
問題は…
ばっしゃーんっ!!
またバケツをひっくり返す音が聞こえる。
もう、ここ最近はほぼ毎日にこれだ。
「キキーーーーーーっ‼‼」
キキはこぼしてしまった水を必死で拭いている。
「あんたはいつになったら、まともに使えるようになるんだーーーっ!!」
ここ最近、キキは毎日怒られていた。
トキがメイドになってから、キキは毎日誰かに怒られていた。
最初のうちは
「違います!これは私がやったわけではありません!」
と弁解していたが、
「人のせいにするのは、おやめなさいっ!!」
と毎回それをいわれるだけなので、今では弁解する元気すらなくなっていた。
ひたすら、黙って仕事をするだけになっていた。
トキがメイドになってから、約3か月…。
キキの目から生気がなくなっていた。
私はこの光景を見るとつい手助けをしようとするが、それが見つかると、
「先生、ちょっと…。」
とそこで呼び出されて、
「余計なことをしないでください。」
「え?でも…」
「今ここで、あの子を助けてしまうことはあの子のためにはならないので、そういう余計なことをすることはやめていただけますか?」
この日は、ララさんに見つかってしまったので、このような注意を受けてしまった。
「そもそも、この仕事は私たちの仕事であり、先生の仕事ではありません!」
とぴしゃりといわれてしまった。
最近聞いた話によれば、ユキもララに見つかって、叱られたとか言っていた。
先輩からは叱られて、唯一後輩であるトキからは嫌がらせされて、板挟み状態で攻撃されて逃げ場がない状態だ。
この間なんか、この寒い中浴室で泣いているのを見たので…
ドア越しで話を聞いてみれば、お風呂に入る前に用意をしておいた自分の着替えが、出た時にはなくなっていたらしく、キキの引き出しから、下着や着替えを持って行ったことさえある。
そのあともゆっくり話を聞いてみたら、最近、トキが風呂を覗いてくることがよくあるらしく、それが嫌だと言っていた。
「それって、前みたいに一緒に入ろうとかじゃなくて?」
「……あの子自分は服着たまま、ニタニタ笑っているだけで…」
「それは気持ち悪いわね。」
まぁいわれてみれば、自分以外の他人の体も気になるお年頃なのだろうけど、ここまであからさまなのはさすがに気持ち悪い。
私も高学年ぐらいにもなれば、誰とも一緒にお風呂に入りたくないと思えていたのは確かだ。私も母から「曜子と一緒に入ってあげて」と頼まれたこともあったが、絶対的に断っていた。
というか、普通の姉妹なら、小4ぐらいまでは一緒に入るかもしれないが、私なんて小学生になった時点で曜子とお風呂に入るなんて嫌だった。
「困ったねー」
あ、そだ
「あのさ、プールバックって今どこにある?」
「今は使わないから、引き出しの奥にある。」
「じゃあさ、これからお風呂に入る時はそのプールバックに着替えとタオルいれて、出窓のところにそれ置いておくようにすればいい思うよ。」
「あ、そうか…」
「そんなようにさ、とりあえず少し考えて工夫して行動してみた方がいいと思うよ。キキちゃん、最近仕事でも失敗多いのは工夫を考えないからかもしれないから…。」
「…」
まぁキキが仕事でミスが多いのは、本当はキキのせいではないのは私も判っている。
でもここは、どうしてもキキが自力で乗り越えないといけないところだ。
他の先輩メイドたちが言うようにいくら他者からの妨害があったからの失態であろうと、そんなの言い訳でしかならないのが社会の厳しさだ。
その厳しさをこんな幼いうちから、受けてしまうのは酷かもしれないが、この先それをやっていかなければならないのは、この子には避けられない課題だ。
「まぁそれを一人で考え込むのはつらいだろうから、もしよかったら、これから一緒に考えていかない?」
「…」
キキからの返事はなかった。
たぶんだが、もうそれすら考える気力すらないのであろう。
あの丸坊主にされても、何一つ気にせずに突き進むリキとは違って、この子は繊細過ぎるな。
「まぁいいや。気が向いたらまた話しかけて。」
私はそのまま行こうとしたら、
「…あ…あの……。」
と後ろから声が聞こえたので振り返ると
「ありがと…う……」
と小さな声だったけど、それは聞こえてきた。
もうほとんど消え入るような声だったが、「ありがとう」と言える元気は出てきたようだ。
正直、もっと元気を与えたいとは思うが、私にはこれが精いっぱいだった。
そして、この3日後…
夕飯に赤飯が出た。
まさかと思ったら…
その赤飯の大元となったのはキキではなく、トキの方だった。
なるほど…
だから、トキはキキの体のことが気になっていたわけか…
まぁ明らかにキキよりもトキの方が太っているゆえに、年は幼くてもそうなるのは無理はない。
今日のトキの機嫌は明らかに悪そうだ。
何をやらかすか本当に判らないぐらいに。
そして今日は他にも…
「今年もクリスマスパーティを兼ねた忘年会の時期になったので、今年の参加者を発表します。」
火口二央
阿部カオリ
下山エリナ
田中小夜
上原由美子
琴金星子
小野坂 学
小野坂朝美
竹井しのぶ
小川ユキ
佐久間キキ
運転手・スタッフ
井上与志之
相原伸久
他BD一同
どうも去年もあったらしいが、私は三緑を産んだばかりで参加はしなかったこの忘年会。
また、どういう集まりだか判らないが毎年あるらしい。
聞いた話によれば、去年参加した新年会は月城グループの会社関係だったらしいが、今回は違う系列の集まりらしい。
「あの」
「なんだね?星子君」
「今回三緑は、私や朝美さんがいない間、誰が見るのですか?」
「ああ大丈夫だ。当日限定乳母はすでに雇っている。」
またか…
いくら、私が三緑のお世話をしなくてもいいとか言われているとはいえ、私だって普段からミルクあげたり、おしめを変えたり、お着換えやお風呂だって入れている。ここにいる限りはなるべく、三緑のお世話はしているのだ。そして時には、匠くんのお世話だってついでにしている。ホントこの二人のお世話は上原さんと朝美さんと私の共同作業でもある。
それでも結構頻繁に当日限定の乳母の世話になることが多い。
それに何より今回は…
「質問!なんで今回キキが参加できるんですか?」
そこだ。
ちなみにその質問はトキがしてきた。
本来、この集まりは15歳以上でないと参加できないとは聞いていたので、ユキは去年までは参加してなかった。そして、リキは去年は普通に参加したらしいが、今回不参加となっている。それもまた不自然である。
「えー今回はいろいろ事情があってこうなりました。
詳細を言いますと、リキさんはまだ…」
実はリキはまだ丸坊主のままである。
どうも、今年中はしっかり髪をそり落とした状態で過ごすことがしきたりらしい。
さすがに丸坊主のまま参加させるのは外聞的にもそぐわないので、今回は不参加なこと。
「そして今回、リキさんの代役として、同い年であるしのぶさんに務めていただくことになりました。」
何それ?な理由だが、これも何事もないことを願おう。
「で質問の本題であるキキさん。
マナーの勉強をするということで、今回は特別に参加を許します。
今回のパーティでしっかり学んでくるように!以上!」
はっきり言って、これは誰もが「ん?」と疑問に思うことだ。
「ちょっと待ってください!!」
やっぱりこれにはトキは納得してない模様。
「私も連れてってください!」
末っ子だけが置いて行かれるというおち、まさにシンデレラそのものである。
「だめだ」
シンデレラのお話では、シンデレラの父親だけは主人公の味方な感じではあるが、生憎この家で、一番意地悪なのは父親だったりする。
「君はまだ何一つ、作法を学んでいない。」
「そんなことない!私だって上原さんから、さんざん食事の作法とか学んできた!だから…」
おそらく、この家の子はそういうことにかけてはかなり厳しく躾られていることは伺える。
キキにしてもトキにしても、サキもリキもユキも二央も、この家のこの所作や作法はやっぱり他の家の子とは違うって、やっぱり品がある。あの性格や言動や中身に品がないアキやフキにしても社交場にいる時だけはそれなりに切り替えができている。
「残念だが、君を連れて行くわけにはいかない。」
「なんでよ!!?」
「口の利き方に気を付けたまえ!」
めずらしく月城の口調が強い。
「君、仕事。まともにしてないよね?」
「え?」
この時、トキはキキをふと睨みつけた。
明らかに「お前チクったな!」と言いたげだったが、
その時月城はトキの手を取って、
「この手はとてもじゃないけど、仕事をしているような手には見えない。」
なぜにバレたかと判った瞬間トキの目からは涙があふれてきていた。
「労働の作法もまともに学ぼうとしない者を今回の集まりに参加させることはできない。
以上だ。」
たしかにトキに足りないものは、労働の厳しさを知らないことだ。
これでこの件に関してなんとか片を付けることができたが、
今回のこの集いで、私たちはまたとんでもないことに巻き込まれることになる。
ある意味何も知らないままなトキの方が幸せだと思えるぐらいに…




