運命はすでに動き始めている。
いろいろ話し合ったものの…
結局は何もかも元には戻るのは無理だった…
あの場にいたリキ以外の者は問題なく納得してもらえたが、やっぱりリキだけは無理だった。
まぁさすがにあれだけ暴走して、自分を壊してしまったのだから、そう簡単には元に戻ることはないであろう。
おまけに、あの寺のきまりで今年の年が過ぎる日まで、頭は剃髪した状態でなければならないルールがあり、その状態で学校へ復帰していた。
そんな奇妙な状況でも本人は堂々といていて、一切気にしてない状態だったことがまたすごかった。
学校での状態は私が行ったわけではないので、詳しいことはよく判らない。(ちなみに高校生組だけの保護者役は私にまかされているのだが、リキには嫌われたので上原さんが行っていた。)一度だけ個人懇談会に行ってきた上原さん曰く、やっぱりリキは同じ学校の生徒たちから、いろいろひそひそ言われていたらしい。がそれでもリキは全く気にせずに堂々としていたそうな。
あと担任からもリキの頭について指摘されたそうだが、
「別に校則を破っているわけではないので、関係ありません。」
とリキ本人が一蹴してしまったらしい。
それでも担任はリキの頭の件では、やっぱり心配しているらしく、
その後も一度、学校から呼び出されれて
「確かに校則は破っていませんが、あれだけ目立ってしまうといじめの原因になりそうで心配です。なんとかなりませんか?」
という打診があったそうだ。
かといって本人は全く気にせず、今まで通り丸坊主のままでも普通に電車に乗って、堂々と学校に通っている。それどころか、
「私は大丈夫。そんなからかう奴なんか相手にしてなくていいのよ。」
「だいたい、そんな奴相手してる暇もないわ!」
と自分の周りが気にするよりも気丈にふるまっているので、周りはこれ以上何とも言えない状態だ。
そしてリキの自分へのいじめ対策はまたすごいものあった。
現在、リキの机やいすにはすごい落書きをされているらしいが、本人は全くお構いなしにその席を使っているらしい。たまに机やいすの上に花瓶や画びょうや汚物などが置いてあったらしいがリキは…。
花瓶は後ろの席の机に即おいて、自分はしっかり自分の席を使っていた。
画鋲は床に払いのけてから、使っていた。
で汚物が置いて会ったら、隣の席の机と即交換して、自分は遠慮なくその隣の子の机やいすを使っていた。
まぁ定番で下駄箱の方にもいたずらがされていたが、
果たし状や偽ラブレターや呼び出しの手紙は、どこかほかの適当な下駄箱に放り込んでいた。
上履きを盗まれたら、学校のスリッパを借りてことを済ませていた。
ゴミとかも捨てられていたが、それもそのまま下駄箱から払い出し、一切片づけず床に散らかしたままにしておいた。
まぁ最後のゴミの件に関してはあまりよくないことではあるが、こればっかりは先生も察してはいたので、わざわざリキを責めることはしなかった。
むしろ、先生からすればリキのこの何事も動じない態度には助かっていたとのこと。
ただ、教師としてはいじめが発生しそうだということは、かなり気にかけていたらしい。
そして学校側が一番頭を抱えている問題といえば、それ以上にリキのこれまでの男関係の噂もすごい勢いで流れていて、いまだにそのことで周りはいろいろ言っているらしい。
本当に学校側としては、このような印象の悪さは簡単には見過ごせないだろう。
それに関して、PTAをはじめとする一部の父母たちからも不満の声や苦情が出ているらしい。
そのことに関してリキは
「あくまで周りが言ってるだけの噂ですので、先生は気になさらないでください。」
とまるで何事もなかったかのように否定も肯定もしない言い方で、先生を言いくるめていたという。
「そんなことよりも、私はこれまで通り医大に進みたいと考えております。残念なことに今の状態では推薦は無理ということは存分に判っております。これからラストスパートかけて頑張りますのでよろしくお願いします。」
とあくまで自分の進路のことしかすでに目が行ってないらしく、自力で頑張っているとのこと。
そしてリキは当然のことだが、家庭教師は私が担当なので断り、今は進学塾に通っている。その塾では一応性別不明な地味な私服で行っているので、あまり目立たないのでそこまでからかわれないらしい。むしろ塾は自分の勉強のことで手一杯な者しか来ていないので、他人をかまってる人など誰もいないとのこと。
いろいろ話し合っても、あくまで私には頼りたくはないらしい。
ここまで徹底されると私からはもはやリキには何も話す言葉が見つからない。
確かに私も高校の時につまらないことで停学くらったが、そのことでリキほどキツイあたりを受けたわけではない。
ホントリキは強いとしか思えれなかった。
そして…問題はもう一人のいじめられっ子である。
キキ
やっぱりキキは先輩メイドからのあたりはひどい。
それどころか…
「お前のせいで、私までもがこんなことすることになったじゃねぇかっ!!」
後輩(実は妹)であるトキからもあたりがひどかった。
まぁ立場的にはキキの方が先輩だが、体格的に圧倒的にトキの方がでかい。特に横。
だから、トキに体当たりされたら、いつも倒れるのはキキの方だった。
「いい!?これ、あのクソババア(ララのこと)が来るまでにやっておくのよ!!」
「え?これあなたの仕事よっ!?いやよっ!!」
「つべこべ言わずにやっとけ!ブスっ!!」
「きゃッ…」
結局最終的にぶっ飛ばされて、仕事を押し付けられてしまうなんて日常茶飯事いうことをユキから聞いた。ユキも余裕がある時はキキが押し付けられた仕事を手伝うことはあっても、トキからキキをかばうことは無理とのこと。
「まぁ本当はよくないのかもだけど、トキとはなるべく関わりたくないのが本音でね。あの子はホント少しでも関わるだけでめんどくさい。ただでさえ関わるのめんどくさいというのに、自分のこと以外で関わるのはほんとごめんだから、キキにはもう少し強くなってほしいかな。」
とのこと。
まぁいわれてみれば、トキはホント我儘すぎて、私から見ても曜子並みにめんどくさい。
今のキキをみていると、この先キキはうまくやっていけるのであろうか?とかなり心配している。
今ここでメイドとなってしまった今、キキの将来ほとんど決まったようなものだ。
キキが高校受験の頃にはおそらく、この家に家庭教師など存在していない時期だろう。何せこの家で一番家庭教師が必要なのは、実質上二央だけなのだから…。というか、元々二央だけのために私はここに雇われたのだから、二央さえ高校を卒業してしまえば、私はこの家からお払い箱となる。
まぁどちらにしても学生時代までしかここにとどまらないことを決めているので、それはいいのだが問題はここに残されるキキとトキである。ユキはまぁあと一年ぐらいはなんとかやり過ごせれるだろう。
家庭教師もなく、このままメイドとしてこき使われているとなると、おそらく高校進学は無理であろう。そうなるといずれは、いきなりどこかに嫁に出されるというところまで見えている。
それを思うと、この二人が本当に哀れに思えてくる。
トキが付けば、ずっとキキとトキを見つめていたのだがこの時、トキは自分が見られていることに気付き、
「何?なんか用?こっち見ないでよー!気持ち悪い!」
とまで言われて、あっけにとられていた。
この家では本来、一番立場が低い召使たちから、このような態度を取られることはまずない。
いいや。本来あってはならないことだ。
「ちょっとばかりいい身分だからって調子に乗らないでくれる?」
もう、すごい勢いでいろいろ言ってくる。
まぁこの子は親から、実はこの家のお嬢様であることを告げられたことがあるゆえに態度がでかい。
でもそれは、今のところはそれは口に出してはいけないことになってはいる。もし次、口に出してしまったら、この子はこの家から追い出されることになる。
「今はお母さんがお母さんをお休みしてるだけよ。私もリキやしのぶさんみたいにいつかまた、お母さんがここに来てくれるから、私は他よりは上よ。」
すごいことを言っている。
まぁ確かに最後の誕生日会に母親が来なかっただけのことであり、最後に母親に会ったっきり母親とは連絡が途絶えてしまっただけだから、完全に捨てられたと本人目線決められたわけではない。それにトキはいざって時はパパである月城が全部カバーしてくれると思っているのであろう。がこの態度はない。
「そうなったら、私もリキさんと同じようにこんな仕事しないで自由に生きるわ。」
とまで言っている。思っていた通りだ。
ここで働くスタッフたちは、私を含めいろいろ跡がない事情があって、ここに置いてもらうことに必死に生きている者ばかり。ユキやキキは表向きはもう後がない孤児だ。
そんな中、どうも最近リキがメイドの仕事を一切しなくなったことで、こういう調和が乱れ始めたともいえよう。どっちにしてもトキは勘違いしている。
「でもさ、リキって間抜けだよねーw」
さっきまで、リキにはさん付けで呼んでいたのに、たった今リキのことを呼び捨てにした。
「何をしたか知らないけど、罰ゲームで丸坊主でしょ?ぷぷぷぷぷーーーーーっ!!めっちゃうけるんですけどーーーっ」
なるほど、やっぱり自分よりずっと異端な者にかけては当たり前のようにバカにするわけね。
「私は絶対にあんなへましないわ。小夜みたいにメイドでもきれいなドレス着てパーティに連れて行ってもらうし、しのぶさんみたいにきちんとした教育を受けて見せるわ。」
ホンといいとこどりばかりの人生を自分は進んでいきたい思っているらしい。
これの中身の詳細を何も知らないとこうなるのだろうか?
ここの家の娘たちの本当の末路を知らなすぎるとはまさに恐ろしい。
それにしのぶだって、高校生とはいえ近場の一並商業なので職業訓練校だ。一応、空手のスポーツ推薦で進学はするらしいので、高校生メイドの出身の中では比較的、学はあるかもだが…、
こんな生意気なガキだからこそ、トキは皆から嫌われている。
でもまぁ、私はこの先トキがどうなるかなんてことだいたい読めているから、黙っているだけなのにね。
そして…
どちらにしてもキキとトキ。この二人には二人が全く予想にもしてなかった将来が、私がこの屋敷に健在する期間の中で決まるという運命にあるのであった。




