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キンキンサンザン運動会

曜子は年少組になり、ほとんど初めての運動会。


一応去年も運動会はあったのだが、乳児クラスの参加は自由だ。

去年の運動会。曜子は不参加を選択したため、今回が人生初の運動会ということになる。


そんな曜子の初運動会だが、私は当然見に行かなかった。

ものすごく嫌な予感がしたからである。


これは、後で栄太からきいたはなしである。


栄太には妹が二人いる。


一人は今年長組の妹美衣子ちゃん。

もう一人はうちの曜子と同い年の椎名ちゃん。


栄太の妹は二人とも在園児なので、栄太は当然見に行ったんだと。

むしろ、妹が在園児にもかかわらず来てなかった私の方が、先生たちや同じようにしたの兄弟を持つ同い年の子たちから、変な奴思われていたらしい。


「特にさー、明治里に行った歩美や真理からは、なんでお前が来てないのか?とさんざん言われてたぞー。あいつら、お前に会えるの楽しみにしてたらしくてさー。」


ちなみに明治里とは隣の学区の小学校の名前である。

この保育園は主に私が通う笹畑小学校と明治里小学校へと上がるのが主流だ。


歩美か…。

歩美と真理とは小1の前半くらいまで、同じ学童で過ごしたぶりだな。

できれば、こういうときぐらいは会いたかったな~。


でもまぁ…



「まぁお前の妹があんなだからな~。お前が行きたくない気持ちはわかるわ~。」


まぁ栄太もだ。

曜子を初めて見た途端、めんどうくさい奴だと素早く察知したので、その事情はイヤというほど判ってはいた。が、まさか妹の運動会を見に来ない兄弟がいたということには、さすがに驚いたようだ。



「まぁお前が来なくて一番驚いていたのは、やっぱり先生たちだったなー。あれはマジで困っていたって感じ。まぁお前もあいつ生まれてから変わってしまったけど、やっぱり年下たちをさり気にフォローするのは、俺らの学年でうまかったもんなー。

あーあと一番さんざんだったのは、お前の母さんだなー。しっかしまぁ、よくあんな怪物相手にあそこまでやれるよなーと思うわー。」


ホント、他人の妹のことを言いたい放題言ってくれるけど、本当のことだから仕方のないこと。

むしろ、判ってくれてうれしいぐらいだ。栄太はホントにいい奴だ。




その栄太が見てきた今年度の笹畑保育園の運動会がどうだったかというと…



曜子が普通でいられたのは、準備体操までだったそうだ…。


まず笹畑保育園運動会の説明をすると、


各年齢の園児クラスは2クラスずつある。

大人同士の通称ではA組とB組ということになっているが、それだと子供がわかりにくいので各クラスでクラスカラーを与えられている。


まず年長クラスはあか組がA組。しろ組がB組。

次に年中クラスはきいろ組がA組。みどり組がB組。

年少クラスはあお組がA組。もも組がB組。

ちなみに乳児クラスにも一応カラーはある。2歳児がムラサキで1歳児と0歳児がオレンジで各年齢にひとクラスずつある。


まぁ笹畑保育園運動会の主な主役は3歳児以上。乳児クラスの子は簡単なかけっこと園児であるお兄さんお姉さんへの簡単な応援ダンスするぐらいしか種目はない。それも参加希望者だけという極少人数だけのかわいい出し物だけだ。


まぁいってしまえば、各学年ごとのA組とB組が、年長組の色の通り紅白にわかれて対戦する形だ。


曜子のクラスはあお組で、椎名ちゃんも同じくあお組。なので二人とも同じ赤チーム。そして保育園はたいてい、兄弟同士はなるべく同じチームにする配慮をしているので、栄太のもう一人の妹美衣子ちゃんも同じ赤チームらしい。ついでにあゆみ泊りの兄弟たちもみんな赤チームだったらしい。


栄太が知る限りで兄弟が白チームだったのは、いばりんぼうな義彦とまじめな優等生粕谷君ぐらいなものだっと聞いた。もうここまで聞くまででイヤな予感しかしなかった…



「第1種目は徒競走。対象全園児。皆さん温かくお見守りください。」



まず1種目目の徒競走が放送とともに始まった。



まず一番最初に乳児クラスの小さい子たちから、よちよちしたかわいらしい競争が、観客席から、応援されて無事終わった。


そして次に走るのが3歳児。

4歳児5歳児となると、先生たちが子供たちの実力かねて一緒に走るメンツを決めるらしいが、3歳児は誕生日順で決めているのが毎年恒例である。そして各レースごとにチームから二人ずつ出して、4人ずつ走るという方式だ。


だから、6月生まれの椎名ちゃんは3歳児の第2レースで結構早めに順番が終わった。


「まぁうちの椎名の順番時は無事に走り終えることができたんだよなー。」


「うん、椎名ちゃん1等賞だったんだよね。すごいよー。」


「えー?知ってたんかよー。お前の母さんやっぱおしゃべりなんだよなー。」


栄太は自分の口からは絶対に自慢したりしない。

情報源は栄太の言う通り母からだ。


一等賞を取ったチームには各レースごとで3点ポイントが課せられる。

だから1等賞とるということは、その仕組みをよく理解している年長組の子からするとかなり重要ポイントであることを知っている。それゆえに年少組の子の立場は、年長組からの今後の優遇も変わってきたりするのだ。この先の保育園生活で、常に年長組からのいろんなお誘いが来るかどうかもこの時にかかっている。




ちなみに2等は2点。3等4等でも最後まで走り切れば1点ずつのポイントはもらえるだけどねー。


そして…



「3歳児第5レース。赤チーム 曜子ちゃん。美紀ちゃん。 白チーム 真悟くん。真雪ちゃん。」


曜子の名前が飛ばれた。



「いちについて!よーい!」


パンっ!



とうとう始まったと思ったら、


始まったとたんに曜子はこけた。


それも曜子だけではない。

同じチームの美紀という女の子までもが一緒に転んでいたらしい。


いうまでもなく…



「うわーーーーーーーん。わんわんわん。うわーーーーーーーーーん。」


曜子が転んだ途端にあの曜子の強烈な鳴き声は園庭中に鳴り響いていたらしい。」


そして一緒に転んだ美紀という女の子もなぜかずっと立てずにいた。


きっと曜子のその強烈な鳴き声で気絶しているのかと思いきや。

立てないまま曜子と何らか争っている様子だったので、先生も美紀の方を冷静にみると、なんと曜子が美紀の体操服をつかんでいたことに気が付いた。


美紀は必死な思いで


「もう、はなしてよー!!」


と曜子に訴えていたが、曜子はなかなか話してくれそうもなかった。


「曜子ちゃん手を放して。」


先生が必至で呼びかけるも、曜子の強烈な鳴き声でまた、その声はほとんどかき消されていた。


「もうさわんないでよーーーーっ!!」


さすがに美紀も怒っていた。

もうこれは仕方ないと思ったのか。先生は曜子の手を美紀から無理やり離した。


ようやく曜子と美紀を離すことができたと思ったら、



「もう…イヤっーーーーー!!!」



美紀は完全に萎えてしまって、もう走る気すらなくなっていたらしい。

いうまでもなく、白組の二人はとっくにゴールしていた。


運動会の進行上の都合により、時間がない状況だったので、その時は美紀も曜子も二人とも先生たちが抱きかかえてまで手早く退かせていた。



聞く話によれば、曜子と一緒に走る予定の美紀はクラスの女の子の中でも1,2を争うほどの足の速い子だったらしい。


そうそのあとすぐに先生が曜子に「なんであんなことしたのか?」と聞いたら、


「だって、美紀ちゃん足早いんだもん。美紀ちゃんにつかまっていれば曜子も早くできう思ったんだもん。えーーーーん。」



だったそうな…。


まぁ小さい子が考えそうなことだけど、それはだめだとこのとき先生は曜子に諭したそうだ。


この時の曜子のあお組担任はまさみ先生。この保育園で2番手ぐらいにベテランな先生だ。ちなみに3歳児もも組はかなえ先生だったらしいwかなえ先生も「ついてないー」とまで言っていたが、「少なくとも担任じゃなくてよかった」ともいっていたなー。



そして、と競争で曜子に与えられた点数は0点。美紀も0点。

最後まで走らなかった者には点数は与えられない。これはこの保育園での伝統の裏鉄則だから…。



第2種目は年中組の出し物大玉転がし。

これも無事に済んだ。それも絶好調で赤チームが勝利だった。


第3種目は乳児組による応援ダンス…



「みーんなだいすきー運動会—――♪とっても楽しい運動かーい♪楽しくダンスだるんるんるん♪」



音楽に合わせて乳児たちは適当に踊っていたらしい。

まぁ中にはぼーっとつったたままなんもしない子、輪からはみ出る子も当たり前のようにいる。


そんな中でまたトラブルが起こった。



曜子だ。



なんとその曜子が乳児クラスが踊ている中に勝手に入っていった。



そうその乳児の中でもキャッキャキャッキャッ言ってただ単に走り回っている子を追いかけまわしていた。



「ホラーーーだめでしょー?みんなと一緒なのーーー。」



と言いながら追いかけまわしていたらしい。

それも情けないことに乳児クラスのその子の方が足が速いらしく、曜子の足ではとてもじゃないけど追いつけない状態だったらしい。


それってマジで恥でしかないんだが…。


曜子はその出し物の最中、ずっとそれだったらしい。


でもまぁとりあえず、小さい子がすることだからという理由で、その時はだれもそれを注意する者はいなかったらしい。


それにしても曜子のお節介は目に余るものある。


ただまた、その演目が終わった後ですぐ、


「曜子ちゃん。曜子ちゃんが練習したの以外は出ないでね。」


とまさみ先生から言われてしまったらしい。




そして…


「第4種目は玉入れ。対象3歳児。皆さん声援よろしくお願いします。」


また曜子が出る出し物だ。

これもなんもなければいいのだがとは思うが…



3歳児の玉いれは基本…



「男の子よういっ!!」



パンっ!



男の子と女の子で活動する時間を分けているのだが、



「お前の妹さ、男子が投げるときにまちがえていってしまってさー。」



やっぱりなー。


曜子は基本、先生の説明や話など聞いてないのだ。

そりゃそうなってもおかしくはない。


そこでまた起きたトラブルというのが…。



ボコッ…


「いったいなーっ!」


後ろから、頭に球があったった曜子が振り向くと、



「おまえでてけ!」



と相手側の白組の男の子の一人が曜子の体操服を引っ張った。



「はー?おまえいわんでー!!」



そしたら、


「赤チームずるいんだよっ!!」



「そうだそうだっ!」



と言って、白チームの男の子たちは赤チームにけんか売って妨害しだしたらしい。


もう会場は玉入れどころではなく、ほとんど殴り合いか雪合戦だったらしい…。



「なにするんだよっ!!?」


「いってぇーーーーな!」


「てか女連れてまで、人数増やしてずるいんだよっお前らーーーーっ!!」



と一人の男子が事情を言うまで、なんもできなかったらしい…。



そしたら、状況に気付いた赤チームの一人の男の子が


「また、曜子かよっ!!いいかげんにしろよっ!!」



と言いながら、曜子を女子が待つ待機場まで連れて行って、ようやく白チームの男子が納得したかと思ったら、



パンっ!!



そこで試合終了だったらしい。



玉入れ男子戦は曜子の存在など全く気付かなかった、白チームの男子の一部だけで勝手に試合が続いていたらしく、どう見ても白組が有利でしかなかったらしい。


そのあと行った玉入れ女子戦は、赤チームがなかなか優秀で頑張ったが、やっぱり3つ差で赤チームが負けとなったらしい。



結局、曜子が足引っ張っていたとさ。




「ごめん…もう聞きたくないな…。母さんから聞いていた感じとは全然違うし…。」




「えーなんだよーーー。まだ肝心なところ終わってないのにさーーー。」


まだあるらしい…。



「何よもう…。」



もう聞いてるだけで、すでにイヤになっていたが、

陽子は年長組の出し物、紅白リレーに自分も出ようとしていたこともあったらしい…。


そして最後の種目の帽子取りでまたルールを把握しておらず、いきなり自分が一番に帽子取られて、帽子取られた男の子のことをずっと


「帽子かえしてっ!!」


「帽子かえしてっ!!」


「帽子かえしてっ!!」


とあのキンキン声で何回も連発しながら追いかけていたらしい。


いうまでもなく、相手側の男の子は曜子を無視して次の標的を見つけては、どんどん帽子取っていって絶好調だった。

当たり前のことだが、相手側の男の子の方が素早いので、曜子の足ではなかなか追いつけなかったらしい。

それでもなんとか、最後の方でその男の子も誰かとにらみ合いになっていた時に、やっと曜子もその子に追いついたとき



「ようこの帽子かえしてっ!!!」



とその子の頭の真後ろで叫んだらしい。

あの帽子取りで騒がしい中なのにその声は何よりも響いていたらしい。


その曜子の破壊的なキンキン声のせいで、その男の子はぐらついてしまい、そのすきに男の子は帽子を取られてしまったらしい。

それどころかその男の子は曜子の声で、そのままぶっ倒れてしまったらしい。


まぁ曜子のあの強烈な声には誰もかなわないであろう。


まさにその男の子は試合に勝って勝負に負けたという瞬間だった。


ちなみにその男の子は帽子を取った数は合計二桁越えの記録だったらしい。


「まぁその子もさー、あの声を耳に近い場所で聞いて鼓膜破けてなかったことだけは救いだったけどなー。あれはかわいそうだった。」



「うわーごめんなさいー。」


「それ以降、その子は曜子には絶対に近寄らないようにしているらしい。まぁ幸い違うクラスどころか、学年が1個上だったことが、その子もまだ運がよかったよなー。」


すごい判る。


私の曜子のせいでどれだけ耳がピンチになったか…。

それにあの声におびえながら過ごしている生活している私からすれば、イヤというほど判る。

私も寝るときは曜子と一緒に寝るのはイヤで、じいちゃんの部屋で寝てるぐらいだからなー。


いや寝るときどころか、勉強するときだって曜子と一緒の部屋じゃやかましくてたまらない。

だから、子供部屋ではなくじいちゃんの部屋で勉強していて、私は事実上、ほとんど子供部屋なんかにいない。


「なにしゃべってんの?保育園の運動会のことか?」


振り返るとあのイヤな義彦がいた。


「俺の妹白組で勝ったけど、栄太んとこは赤組だっけ?」


まぁ最初からご察しの通り、今年は白組が勝利した。


「残念だったよな」


もう義彦はたったそれだけのことでマウントしまくるから、こいつもマジで嫌い。


「しっかし、あの運動会強烈だったよなー。誰だっけ?なんか一人クソやかましい女いたよなー。

まぁどーでもいいけどー。ガハハハハハーーーーー。」



と一人で言いたい放題言って義彦は笑いながら、その場を去っていった。

ホントこれもまた独り勝ちである。




それにしても…聞けば聞くほど恥ずかしい…。



「私、運動会いかなくてよかった…。」


曜子が私の妹であることがまだバレてないことだけでも命拾いしてる。



「まぁ、お前は来なくて正解だったよ…。」


それにしてもたった一人でよく、運動会ごときのイベントをあそこまでめちゃくちゃにできるのか?

小さい子にはありがちなこととはいえ、一つのイベントを一人でめちゃくちゃにしてるのは、なんともありえないように思えるのは私だけだろうか?

あれでもうちの母は、運動会終了後も曜子のことを悪く言うことは一度もなかったのだから、そこもある意味すごい思う。


さて、ここまで曜子がやらかしてしまった今、この先どうなっていくのやら…。

不安でしかなかった。

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