キンキン初めて奪われる?
あれから…
あの時月城が連れていったメンツは、曜子の受験日まで帰ってこなかった。
うち相原だけは、仕事道具を取りに戻って来ていたらしいが、すぐに現場に戻ったとのこと。
そして、あの新年会の翌日に私に会いたいと言ってきた人物もいた。
中川サキだ。
本当にこの人とは久しぶりに会う。
私が妊娠出産した時期を見事なぐらいにスキップしてしまうほど会ってなかった。
おそらく、サキさんは私が子どもを産んだことは知らない。(と思う)
まぁまずはサキさんの方から…
「大丈夫だった?うまくいったらいいけど…」
会ってまず一声がこれだった。
「実はね。少しぐらい前に琴金という人から、依頼があってね。
探し人が星子ちゃんだったのね。
ホントこれ聞いて驚きしかなかったわー。」
これを聞いた途端、やっぱりあの家族から常に見張られている現実を思い知った。
「ホントよかったわー。数ある興信所の中から、うちを選んでくれたのが運の尽きだったわね。」
「なんで、私が逃げてる相手が判ったの?」
「それはね。あなたに帰る場所がないと聞いていたからよ。
帰る場所がないはずなのに、家族からは娘を探しているという依頼でしょ?
だったら、あの時星子ちゃんが言っていた相手って、家族なんじゃないかなって。」
さすがだ。
「でもね。あえて、一度はあなたの姿だけを見せる形にさせてもらったわ。」
「!!!?」
そうなんでわざわざ私と曜子を引き合わせたかだ。
「今後も琴金さんがうちを使ってもらうためにね。多分だけど、今後琴金さんがうち以外のところを利用するとなると余計にまずくない?」
なるほど。
「で、あなたと合わす場所は今住んでいる場所から、離れているところでないとすぐに特定されるから、あの場所で合わせたわけ。
あの場所は月城の館からは結構距離はあるし、曜子さんが受験する笛東短大付近だったから、ちょうどいい思ってね。」
「私を探している人がいたら、一度相談してほしい」とは言ったものの、それをうまいこと回避へと誘導してくれたわけだ。
って!笛東短大って⁉
はっきり言って受ければ誰でも受かる短大と言われている大学だ。
はっきり言って曜子でも受かる…かもしれん…。
まぁ東京にあこがれてるだけで、受ければ受かるといわれているある意味地方からは人気短大なので、競争率が無駄に高い年だったらいいが、そうでもない限り、適当に面接でハキハキ答えていれば、間違いなく受かる。
そして、曜子の特技はハキハキ答えること。
絶望だ…。
私、結局妊娠したせいで就職するのは無理だったが、教授からの受けが良かったので、大学院だけは合格していたのです。まぁ授業料は払ってもらわないといけないので、それだけは親には前々から報告はしていた。来年から二年…曜子に会わないようにしないといけないわけで…。
「でね。まぁそれだとさすがにまずいと思ってさ、悪いけど…この際父さんに協力してもらうことにしてああなったのね。」
「どういうことですか?」
「まぁ、はっきりとは言いにくいんだけど、多分あの子…」
「まさか…」
「あの人に連れていかれたなら、無事では済まないとは思う…」
なんか申し訳ないことをしたとは思ってはいるけど…
星子さんはどうしたい?」
それを聞いて、いくらなんでも…
と普通の神経の人なら、大嫌いな自分の妹のことでも心配するとは思うが、
私にはすでにそういう気持ちはさっぱりなくなっていた。
私はもう、迷うことなく首を振った。
「ありがとう…」
「…え?」
「それでいいわ…。」
とまで言ってしまった。
「…本当にいいの?自分の妹よ…。」
さすがにサキも、曜子を売ったことには責任を感じているらしい。
でも大丈夫だ。
一応曜子は去年の11月で18歳になっている。
「いいのよ!あの子ももういい歳なんだから、痛い目見ないと判らないから!」
ほんとそれだ!
今までさんざん甘やかされてきたから、ここで痛い目見ないとずっとあのままだ。
東京は怖いところで、お前なんかが来るところじゃない!とはっきりわからせないと、私もこのままずっと曜子に付きまとわれることになる。
だからこれでいいのです!
「だからもし、これからもあの子が来たのだったら、徹底的に追い払ってほしい!」
とまで言っていた。
「…いいの?」
とサキさんはしばらく黙っていたが…
「高くつくわよーーー」
とにんまり笑っていた。
「えーーーーーっ!!?そんなにも高かったのーーー!!?」
私もびっくりだった。
まぁ
「あったりまえじゃーーーん!」
そうだよな。
サキさんにとっては仕事だ。
「…それでいくらなの?」
「イヤぁ今回のは、私が相談もなく、勝手にやってしまったことだし、予想以上に面白かったから要らないけどさー。
これからはそうはいかないわよー。」
「もう、びっくりしたーw」
「あはははははははははーーーー」
気づいたら笑いあっていた。
サキさんの本音的には、さすがにまだ女子高生の曜子にとんでもない目にあわせてしまったのは、罪悪感もあったらしい。
しかし、サキ本人も曜子を初めて会った時から、嫌いだったらしいので、この結果なのだってさ。
ホント、曜子はどこまで嫌われるのだか…呆れてものが言えない。
そして…
相原が帰ってきて…
びっくりしたことは…
相原はすごくげっそりしていた。
その日も相原の隣で食事をとっていたが…
相原はろくに箸もつけずに、いきなり席を立ってトイレに駆け込んでいった。
そう、相原はそれから3日間、ずっと自分の部屋ではなく、相原専用美容室で引きこもっていた。
おそらく自室だと同室の井上さんもいるので、多分一人になりたいのであろう。
そして、美容室もこの時ばかりは閉じていて、誰も利用できなかった。
ようやく出てきたころに…
「…あのさ……」
と相原が話し開けてきた。
「申し訳ないけど…」
「曜子のこと?」
「ああ…」
何があったんでしょ?ここは黙ってっくことにしましょうか…。
「ごめんな。いくら何でもあれはない思う…。」
そんなにひどいことをしたのか?
まぁ曜子のことだから、どう考えても処女だろう。
あんなめんどくさい女、これまでに相手にする男がいたとしたら奇跡だ。
確かに、月城がすることといえば、処女からすれば過激すぎるのは判らんでもない。
まぁ他の男はどうであれ、月城なら曜子だろうが容赦ないだろう。
「それをあの人は、「これでもまだ易しい方だよ」とまで言いやがった。」
「あの…まさか…」
「試験前日…
あの人、何を血迷ったか、「あんたの妹と小夜で双子モデルができるな」と言い出して、
何を発注したかといえば、あの時小夜が来ていたドレスの色違いに水色があったから、それとか、他の衣装も持ってきて、ホテルのスィートルームで撮影会をしたんだよ。
あとついでにアキさんとフキさんの二人もいたから、双子のツーペアモデルで撮影してな…。
なんか、受験前だというのに奇妙な一日を過ごさせて、本人さんたちは楽しんでいたわけよ…。
その間、俺はずっとスタイリストの仕事で大忙しで…。
あ、カメラマンは一応、月城さんの身内でそう言う人がいたから、いきなり呼ばれてやっていたって感じ。
それであんたの妹さん。すっごい調子に乗って「これで私もモデルデビューだー」と一人ではしゃいでいたのな。」
うわー受験前にありえない過ごし方…
いったい何なんだ…
「問題は…夕食後でさ…」
ああ…もう完全に察しが付く…
「今度はとんでもないことにみんなでスィートの大きなお風呂に入ろうということを言い出して…」
お風呂って…
結局そういうことじゃん…
「当然、君の妹さんはすごい勢いで拒否してて、もうそれからが大変だったよ…。」
まぁ詳しいことは…大人の事情なので機会があれば他の話で…
ここでは言えないこととして、それは省略とします。
でどうなったかといえば…
「多分だけど…妹さん。受からないよ。」
曜子はその夜のことがショックで、次の日は受験どころではなくなったらしい…。
そこで…月城の提案で、小夜に替え玉として試験を受けてもらうことにしたらしい。
曜子はバカで怠け者なので、見事にその提案を受け入れてしまったらしい。
まぁ小夜ならね。
所作だけ曜子よりきれいだし、礼儀正しい。
ただ、小夜は普段何も喋れないのだ。
いくら、面接がメインな試験とはいえ、その面接が受け答えできないのであれば、意味がない。
あと、軽く常識程度に学力試験があるらしいが、小夜はクラスどころか学年で最下位の成績だったということは、月城の館内では誰もが知っている情報だ。いくら、よほどのことがない限りすべることはない短大でも、受けるのが小夜ではほぼ間違いなく不合格だ。
問題は…
「そんな中でどうやって、曜子を家に帰したわけ?」
「あーあのね。実はまだ東京にいるはずだよ…。」
「えーーー」
あいつまだいるのか?
「まぁ諸事情によって、小夜が妹さんの制服汚してしまったからなー。」
「まじかー」
「まぁ、あの子の気持ちの問題もあるけど…制服をクリーニングが終わるまで、あるところに軟禁されてるよー。
さすがに、あの子のためにずっとスィートを貸し切ることはもったいないみたいでねー。」
またあるところに軟禁ですかー。
まぁ確かに曜子ごときにスィートをずっと貸切るなんてもったいなすぎる。
「まぁあちらの親御さんにも試験終わったら、少しは遊んでから帰ると言っていたらしいから、なんもあやしまれてはないみたいだけどねー。」
「でも、それって月城の別荘とかでしょ?足がついてしまうのでは?」
「あー大丈夫大丈夫。一応そこにつくまで、ずっと目隠ししてたから、気づかれてないよ。
帰る時も移動中はずっと目隠しする予定らしい。
で、もし仮にばれても、もうそこは4月から他の人に売り渡し予定だから、関係ないんだと。」
ホント金持ちのすることは、いろいろ信じられないことばかりだ。
「あーあと」
「なに?」
「もしまた、君の家族が付きまとってきた時は、これを突き出してみればいいよ。」
相原は私に封筒を差し出してきた。
「え?なにこれ?」
「あ、みないほうがいい…って」
という前に私は中身を見てしまった…
「これって…」
「ああ見ちゃったか…まぁしゃーない。」
誰から見ても、とがめられる写真じゃん。
「まぁ一応これ、君の妹じゃないよ…。……でも…判るよね?それの利用価値?」
確かに今、こんなもの世間で広まったら、曜子は卒業寸前で退学になることは間違いなかった…。
イヤそれどころか、曜子は社会的に死ぬであろう。
なるほど、まさかここまでやるとは思わなかった…。
そして、相原も言っていた。
「俺はお前の妹は嫌いだ!」
と…。
まぁ、当然の結果だと思った。
そして、その3日後…
「ちょっとーーー!星子ーーーー!曜子ちゃん不合格じゃないーーー!!?いったいどういうことよーーーっ!!?」
母からの発狂電話がかかってきた。
まぁ誰でも受かるような学校だから安心していたものの…それに裏切られるショックはでかいよね。
どうやら母は、私がまだ二年大学院で過ごすことを知って、それなら曜子も東京の適当な短大に入れて、私と一緒に住めばいいと考えて急遽、曜子に東京の適当な短大を見つけて受験させたとのことだった。
東京の短大をすべった曜子は、予定通り来年からは滑り止めで受けた地元の専門学校へ通うことで解決しました。
さて、こっちの問題よりももう一人の受験生のこと。
「ところでさ」
「なに?」
「リキちゃんは、やっぱりまだ怒ってるの?」
「ああな。」
「正直、二人分のバイト料もらっているのもなんか、申し訳なくて…」
そうです。リキは相変わらず、へそ曲げたままであれから一回もきていない。
そしてまだ、バイト料だけは、なぜか二人分もらってます…。
「まぁしゃーないんじゃないの?」
あれから、リキは今更ながらギャル化して、好き放題している。
「まぁリキは真面目過ぎたんだよ。たまにはああやって、はっちゃける時もあっていいと思うよ。」
二央は相変わらず、我関せずな態度を貫いている。
「そういえばなんだけどさ…」
「今度は何?」
「ユキちゃんって、まだ14歳なの?」
「ああそれか…またなんで?」
「私、ユキちゃんと同じ部屋でさ、ユキちゃんにどこまで話していいか?ずっと悩んでいたのよね」
「ああ、確かユキは1月27日で15になるぞ。」
「ああ、そうだったんだ。」
「まぁここの家って色々めんどくさいよな…。」
というか、ほぼ受験直前に自分の家庭の事情を知らされることになるわけか…
なんか、いろいろ厄介だな。
ユキが、受験前に自分の家庭の事情を知って混乱しないかが心配である。
「二央も一年ぐらい前まで知らされてなかったんだよね。」
「まぁな…。まさか、自分の姉たちが政略結婚のコマにされてることを知った時は、さすがにショックだったな…。」
そうなると、そこが問題だ。
どうしよう…。
ホントこの家は、ことごとくメンタルの強さが要求される家である。
「実はね…ちょっと相談があるんだけどさ。」
「ん?なんだ?」
「ホントはリキちゃんはすでに知ってることだから、リキちゃんに頼もうかと思ったんだけど、いまりきちゃんがあれでしょ?」
「ああ」
「だから、二央お願い!ユキが家庭の事情でショックを受けてしまったら、あなたがユキを励ましてほしいんだ。」
「えええーーーーーっ!!!?いや必要ないだろーーー!!」
「それだと困るの…私一人の力じゃ無理かもしれないから…。」
「どういうことだよ?」
「実はユキ…」
私はこの時になってようやく二央にユキが高校受験をすることを話した。
誰にも聞こえないように小声で…。
「そういうことか…」
「もしかしたら、あのこ。持ちこたえられないかもしれないって思えてきて。」
「まぁ俺は、世間からは金さえ払えば入れるボンボン学校と言われるような学校に中学の時から入ってて、受験とは無縁の世界で来たけど、まぁここの女姉妹はそういうことは避けられないだろうな…」
聞いた話によれば、リキは誕生日が早かったせいか、その時はショックは受けたものの、受験までには時間があったし、母親の力添えもあってなんとか持ちこたえたとは思う。
ユキの場合は違う。母親もいなければ、受験直前の時期に生まれた冬生まれ。
絶対的に不利だ…。
だから、私は二央に協力を促したのだった。
「わかったよ。一応、俺もあいつの兄貴だからな。」
受験直前の1月27日…運命の日…
ユキは月城の部屋に呼ばれ…
すごい泣きはらした顔で部屋に帰ってきた。
やっぱり…
「…先生……?」
「うんうん…」
私が励まそうとした時だった。
「わたし!がんばる!」
「え!?」
「私!何が何でも女子高生になってみせるっ!!」
「え?え?え?」
私はびっくりした…
なんか、ユキが月城からいろいろと話を聞いて、自分もお姉さんらと同じ道をたどってはいけないということに気が付いたらしい。
逆に受験魂に火がついてしまったようだ。
そして困ってる人がもう一人…
「おいおい話が違うじゃないかー。あいつすっかりやる気になってて、俺にまで勉強教えろとうるさいぞ!」
二央だ。
そして、ユキは見事に双竜工業高等学校に合格した。
まさか月城もユキが高校受かるとは思っていなかったらしく、驚いていた。
月城にとって予想外の自分の娘の進路だった。
私もようやく月城の鼻を明かすことができて大満足した。
本当に私にとってかなり長かったサクセスストーリーだった。




