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キンキンお騒がせ受験生

あれから二か月…。


あの騒動の3日後…朝美の子は生まれた。男の子だった。

小野坂の子だから、彼らは彼らの教育方針の下で育てるらしいので、将来的にここの使用人になるかどうかも不明だ。少なくとも小野坂夫婦は自分らの子が男の子であることにホッとしている感じではあった。



そして私もここで臨月…。


あれから、ユキの成績が下がってしまったので、最後の追い上げに必死だった。


12月8日…


最後の個人面談の日…。


「私、一並商業に行きたくない!」


ユキはいきなり、言い出したのである。


「え?ここまで来て、高校諦めるの?」


そうだ。

また一生懸命追い上げて、クラス順位31番までまた戻すことができたのに今更?進学をあきらめるの?


「まさか、月城さんから、受験反対されたの?」


とこっそりユキに耳打ちした。


まさか月城に、何か言われたのであろうか?

まぁどちらにしても月城から授業料を払われないとなると、高校すら行くことができないのは確かだ。


ユキは首を横に振った。



一応、月城にもユキが高校にはいくということは、月城も納得済みとの話はつけてあることは私も知っている。月城曰く「じゃあがんばれ」と言われたということも知っている。いったい、この上月城から何を妨害されてこうなっているんだろう?



「私、双竜工業を受験する。」


「え?」


いきなり、これまで聞いたこともない学校名が出てきた。


「つまり…小川さんは進路を変えると…」


正直言うと…双竜工業高校って、いきなり言われてもなんもデーターがないので、


「この辺りで、一並以外で就職率が高いという評判で、一並より偏差値がやや低めという条件だとここしか思いつかなくて。」


「なるほど、小川さんなりに考えた結果なのね…。」


それにしても工業高校って言ったら、ほとんど男の世界…。

またなんで、そんな世界に飛び込もうとしているのかと思ったら、あくまで就職率の問題なのね。


「私、なるべく早く就職して独立したいんです。」


まぁこの子はそうでもしないと、自由は勝ち取れない。



「またどうしていきなり変更したの?一応、成績的にも問題ないのに、あえて落とすの?」


「原因は判りませんが、ここ最近でいきなり内申点が下がった子たちが、みんな一並商業になだれ込んできたじゃないですかー。」


あーそういうことか…。

この間、河川敷でケンカしたあの子たちの事かな?

ユキ曰く、あの場にいた子たちはユキを除いて、あの後すごい怒られていたということは聞いた。

ユキより成績が悪い坂本さんなんて、全日制高校はもはや絶望的だということ…。


まぁあの子たちが本来、普通レベルの高校から、レベルを下げて受験するとなると商業高校ぐらい下げないと無理なわけだ。


「それなら、確実にいきたいし、一応、余裕は欲しいので。」


それに、おそらくだがああいう女子は工業系には来なさそうだ。


「なるほど、そういうことなのね…。わかりました。」


了承はしてくれた


担任も少し変だとは思ってはいるようだが…


「んーでも…」


担任はまだ何か言いたいようだ。


「何か、他に問題でもありますか?」


「うん、いえね。その志望校のレベルを落としたことによってなんだけど…」


まぁ先生の言いたいことは判る。

志望校のランクを落とすことによって、おつむの偏差値レベルの違いで、学校になじめないことが発生するということは、いやというほど判る。


「もしかしたら、推薦で通るかもしれないから、一旦推薦入試の方で受けてみない?」


「ホントですか!?」


さすがにここで、二人でハモってしまった。


とりあえず志望校が女の子で工業高校いうのは、やっぱりどこか引っかかるものの…

推薦で行けるとなるとこれ以上においしい話はない。


「うん。まぁその方が小川さんとしても、私としても余裕があっていいかなと。」


「よろしくお願いします!!」


ここでユキの受験先ははっきり決まった。




帰り道…



「いい、推薦入試を受けるということは月城に内緒よ。」


「え?なんで?」


「いいから、そうして」


「でも、推薦入試の人一般入試の日は違うよ。そこどう説明したら?」


「黙っておけば、日にちなんか言わなくても判らないわよ。」


「でももし、推薦入試で受からなかったら、一般で受けるのよ。そしたらどうするの?」


「その時は、受験費用ぐらいは私が立て替えてあげるわよ。その費用、どうしても返したい思うなら、将来の出世払いで、返してくれればいいわ。だから、あなたは安心して、一般入試でも二次募集でも何度でも受ければいいわ。」


まぁ個人的に太っ腹なことを言ってはいるが、正直、なんで他人の子にここまで金かけるんだ?とさえ思うが、なんでか無償でやってるこの仕事、すごくやりがいがあって面白いのだ。


こんな時だった…


いきなりおなかの痛みが…。陣痛だ…。


「ごめんユキ…。」


「どうしたの?」


「あとの書類とか手続きは、担任の先生と相談しながら、なんとかできるよね?」


「…え?」


「ごめん…産気づいてきたみたい…。」


「えーーーっ!!」


「一応まだ、歩けるし大丈夫だけど…これで家に連絡頼めるかな?」


ユキに携帯を渡した。


どちらにしても、この件に関してはすべて月城の言いなりなため、まともな病院では産めないことは、すでに確定している。


「もし、私に何かあって、このまま受験とかで困ったことがあったら、私の引き出しの一番上を見てなんとかそれ頼って…。」


もう、遺言かのように伝えるだけは伝えた。



それにしても…


なんで私は今、子供を産むことになっているのであろう。

本来なら、産めない状況下である。

それを他人の都合で、他人の命令だけで、自分の意思など全く無視で子どもを産むなんてこと、ありえない。


産むまでは言うこと聞くかもだが…、


「育てるのは無理です…。」


とまで、あの月城に言いきってしまった。

自分の妊娠に気付いてすぐのあの時のことを思い出していた。


「一応、面倒は見るよ」


「あのそれって、つまりはこの子もいずれは使用人にさせるのですよね?」


それもその挙句、あくまでその面倒の保証があるのは義務教育まで。

それ以降は、ある日突然、勝手に嫁に出して厄介払いするという育て方…。

この子の人生は生まれる前から決まったようなものである。


ずっと、月城をにらんでいると…


「まぁ場合によるな…それは…。」


場合によるって…

その場合のことだが、私はとてもじゃないけど、この子のことをずっと面倒を見るのは無理だ。


それに、私はここの家庭方針の空気を読んで考えると、それ以上の面倒事を月城に頼まないと無理なぐらいな状況である。


まぁ私もこの先、結婚する予定は特に考えてないので、経済的な問題だけなら、なんとか援助できるかもしれないが、リキやトキの母みたいにそう頻繁に子どもに会いに来るなんてことは、おそらくできない。


それでも塾代や進学費用までは、どうにかなるかもしれないが、私が見てない隙に自分の子が月城の駒に使われると思うと…やっぱり納得できない。人任せな子育て状態で、半分捨ててしまったかのように放置しまった我が子でも…必要最低限は守りたいとは思っている。


「一応、困らない程度にここでサポートするつもりだが、これ以上に君はいったい何が不満なんだい?」



あと…何よりも…



「この子を琴金という名前で名乗らせたくない…。」


「ん?」


これ。


私の子の琴金という苗字はあまり聞かないどころか、うちを含めてあって全国に3軒位しかないほぼ身内なのである。この、家のルール通りで行けば、あの跡取りの二央ですら、月城の名前を名乗っていない。おそらく、二央の名字である火口は母方の名字であろう。したがって、この子はおそらく私の名字である、琴金と名乗らされるであろう。


それだけは絶対的に避けたいのである。


そうなると、私は完全にこの子のことを見捨てる状態ではあるが、すべてはこの子を守るために仕方ないことである。


私だって本当はかわいい我が子を見捨てたくなんてない。


でも、あの曜子の存在のことを思うと、この子にとって害でしかないのである。曜子だけではない!うちの家族にこのことがバレたら、大変なことになるのは想像がつく。あんなのに関わるとなると、この子にとって負担でしかないのだ。


だから、あくまで表向きだけは、私とこの子は他人な状態でないと厳しいのである。


もし、このまま月城の言いなりになって産むというなら、私がこの子を人知れず生んで、人知れずどこか養子に出して、経済的な援助だけは自分ができる限りしかできないけど出して、たまに陰からこっそり様子を見に行くぐらいしかできないのだ。


私があの家族から、逃げるのにあたって一人で逃げるのがやっとだというのに、この先、子供まで抱えて逃げることを考えると、半端なく厳しいのだ。


「わかった。ではその件に関しては考えておこう。」


月城からはこの子の件では、そういう話になったのだ。



あれから、この件に関して、月城とは一切話し合ってないまま…出産を迎えることになった…。


事情はどうであれ、私はこの子に琴金と名乗らせることだけは阻止しないといけない。

そして、あくまで表向きだけは他人のふりをしないといけない。私に子供を持つ権利などないのだから…。(もともと学生ゆえに、それは難しいけどね。)



2005年12月10日22時53分



私は母となった…。

あくまで生みの母なだけではあるが…。



名前は


三録


「ミロク」と読むらしい。


さらに…


月城三緑


と発表されたことは、さすがに誰もが驚きを隠せなかった。



それを聞いた私本人ですら…


「…うそ……。」


と思わず声に出てしまったぐらいだ。





そして、さらに不思議なことに三録には、月城家特有のあの月の方のあざがどこにも見当たらなかったのだった。それには流石に焦った。


だが、顔は誰から見ても二央にしか似てないのにだ。

さらに血液型まで調べてみると、私と二央との子であることには、ほぼ間違いはなさそうだ。月城と私の子だとしたら、ありえない血液型になるので…。


私のその焦りに気付いた月城は


「知ってたんだね…」


とぼそりといった…


「気にしなくていい。この子は間違いなく、月城家の血を継ぐ者だ。多分、この子は稀に現れる新月の子だね。」


「え…?」


月城家の一族は、全員三日月みたいなあざが出ると私は思っていたが、どうやら各自違うらしい。

アキさんとフキさんは背中の中央部に上弦と下弦の半分ずつのあざがあるらしいし、なんと月城本人は満月らしい。

三緑に限っては新月ゆえに特に見えないとのこと。


「まぁこれで一応は、月城の血をつなげることができたわけだ。」


つなげる?って…?


「戸籍上は私の子となかったが、問題はないかね?」


問題はないって…

あるにはあるけど、さすがにこれ以上の我儘は言えないので、納得せざる得なかった…。

今までどの子にも月城姓を名乗らせることはしなかったのに…なぜ…?というのは本当に誰もが疑問でしかないであろう。


おそらく、私以上に納得してないのは二央の方だ。

三緑が月城姓を名乗ることになったのを知った二央は、やっぱりいい顔はしなかった。


すごく、運がいいことに男の子が生まれてきたが、すごく複雑な気持であった。



そして更なることに…


「乳母は朝美君に任命する」



あの…朝美さんだって、自分の子で精一杯なはずでは…?



「朝美君は来年でメイドとして定年を迎えたため、残留するためには他の職種も兼ねてないと正直ここにはおいては置けないきまりがある。なので、これは本人も了承済みなんだよ。

それに、上原さんにも乳母の先輩として、サポートはしてもらっている。大丈夫だ。」


めちゃくちゃな…


「それに君には他のことでも、まだ動いてほしいことがある。だから、今はゆっくりしてたまえ。」



動いてほしいことって…



もうこの人の人の使い方には、本当についていけない。




そして…来月の新年会…。

また例のごとく、そこに付き合わされることになるのだが…


そこでまた、とんでもないことが起きた…。



「あー!みつけたー!」



この声…

いやぁな予感…。



みんなで会場から出てきたときのことだった。



そこに曜子がいた。



それを見てみんなびっくりしていた。


「小夜が二人…。」



そうだ。


いつも通り、美人枠として小夜も宴会に来ていた。


そして目に前には曜子がいる。


その場にいる全員が混乱している。



「お姉ちゃんいったいどこに行ったのよーっ!」



「おねえちゃん?」


「って誰…?」


ああ、そう問われて他人のふりをしたい。


「というか、あっちの小夜はしゃべってねぇか?」


「小夜…あんた双子だったん?」


「…?」


小夜は黙ったままだ。


「だよなーどう考えたって、お姉ちゃんは小夜だよなー」


ああこのまま、小夜がお姉さんで済んでくれますように…。


私はすぐ横にいる相原君に


「ごめん、すぐ車出して…」


「えー」


まぁ双子の姉妹ご対面という、はたから見れば面白い場面で、相原もここを離れるのは惜しい思っていたか?イマイチすぐには動いてはくれない。


もたもたしているうちに、曜子が私の方に向かってかけてくる。


逃げなくては…


と思った時には遅かった…



「んもう!お姉ちゃん無視しないでよーっ!!」


「えええーーーーーっ!!!?」


「星子ちゃんがーーーお姉ちゃん??」



誰もがびっくりしていた。


「もう絶対にはなさないんだからーっ!!」



「……。」



私は声が出なかった。

なんで偶然とはいえ、行く先々で見つかるんだよっ!!


「どこに引っ越したかホント心配したよーーー」



もう何なんだこいつはーーー!!?


「あー曜子ねー。一応今、AO入試で明後日試験なのよーー。曜子も受験結果によっては上京することになるかもだから、よろしくねーー。これからは一緒に住もうねーーー。」



とまで言いやがった。



「わーお姉ちゃん。すっごいいいドレス着てるのねー。ワインレッドなのっておっしゃれー。東京の服ってこんなにおしゃれなのねー。曜子もこういうの着てみたーーーい。」


冗談じゃない!!


「あれ?あの子私と同じ背格好じゃない?」


曜子は小夜の存在に気が付いたらしい。


「あちらはピンクのきれいなドレスで、かわいいーーー。

あーでも曜子はピンクより水色がいいかなーーー?」


あーまたはじまった。「曜子水色がいいー!」っていうあれ、マジ不愉快に懐かしい…。



私は…私は…



「くるなよっ!!」



「え?」



私はいきなり大声で怒鳴ったので、みんな驚いていた。



「私はね、あんたとは別れたいがためにわざわざ遠くの学校選んで上京したの!!」


「え?」


「いいかげんに私にまとわりつくのやめてっ!!!あんたと一緒にいると恥ずかしくてしょうがないの!!」


「そんな悲しいこと言わないで…」



「だいたいあんたみたいなバカ!東京の学校なんか受かりっこないわよっ!!」


「ちょっと星子ちゃん…そんなこと言わなくても…」



とだれかが言いかけた時だった。



「おや?私もよっているのかねーーー?小夜が二人いるように見えるのだが…?」


そこ江すかさず、小野坂が月城に何やら、いろいろ説明している様子だった。



「そうか…。もう一人の小夜は星子君の妹さんなのだね。どおりで、よくみたらどこかのおしゃれな制服を着たお嬢さんではないかー」




そこへ月城が曜子の前にきて



「はじめまして、月城です。君は星子君の妹さんかね?今日はお姉さんのところに止まる予定なのかね?」


「はい、できればお願いしたいのですが、姉はあの通り毎回嫌がっておりまして。」



「よかろう。では私がこの子にお部屋を手配しよう。では、小野坂、相原、小夜、あとアキとフキも私についてくるように。」


「かしこまりました」


「あとの者は、井上君の車で帰りたまえ。よろしく。」



といって、月城たちは曜子を連れてそのまま行ってしまった。



この先で、彼らがどうなったかは…またあとで知ることになる…。


そして曜子の運命は…

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