キンキン理不尽選択肢
さて…日比野はざっまぁーだったが…
私にもバツはきた。
5月…ユキの中間テスト最終日の朝…
私はユキやみんなを見送った後倒れた…。
この日、自分の講義は2コマ目からだったので、他の学生より出るのは遅い日だった。
気が付いたら、夕方になっていた。
それも寝かされていた部屋は自室ではなく、知らない部屋だった。
それも寝かされていたベッドはいつも通りのものではなく、かなりふかふかで高価なベッドだった。
いうまでもなく、ここに始めてきたゲストルームとも、部屋のレイアウトがかなり違う。
部屋の中には戸が二つあり、一つはトイレ付きのバスルームで、もう一つは、外から鍵がかかっていて部屋から出られなかった。
これってもしや…?
以前、リキが言っていた軟禁部屋?
てことは、ドアに手をかけただけでもまずかったかもしれない。
私が目覚めたことがバレてしまった?
でも、いつまでもこのままではいられないのも確かだ。
少し時間がすると、ドアが開く音がした。
「お目ざめかい?」
入ってきたのは月城だった。
「水分持ってきたよ。飲むといい。」
月城が水差しとコップを持ってきて、なんと月城自身が、コップに水を入れて差し出してきた。
この家の主なのに、召使委がするべきことを目の前でしていたこと事態、めったにお目にかかれない場面だった。
それに関して恐れ多くて、水を飲めないでいると…
「大丈夫。ホントにただの水だ。毒もなにもはいってないよ。」
ああ、そんなことは忘れていた。
いや、忘れるぐらいの場面を見たので、そっちの危機はすっかりだった。
ホントにのどが渇いていたので、一気に水を飲みほしてしまった。
「…」
「…」
「…」
しばらく沈黙は続いた。
「ところで…」
やっぱり口を開いたのは月城の方だった。
どうなるんだろ?私?
このまま、月城の愛人コース一直線なのか?
何度かこういう危機に見舞われたことがあったけど、なんで数っと回避できてはいる。
が今回ばかりは無理だ。軟禁部屋に月城と二人きりで、誰もこの状況で邪魔する者はいない。
亮子が月城の元愛人なんか、性の捌け口なんか、立場は知らんが、とりあえず月城が亮子のおさがりであることは判っている。私は他のおさがり男ならどうであれ、亮子のおさがりだけはイヤだった。もうほんとにこれまでなのか…?
と思った時だった。
「誰なんだ?」
と静かに月城が言った。
「え?」
誰って何?
「君のおなかの子は誰の子なんだ?」
と言われたとたん…
「!!!?」
私は言葉をなくした…。
「誰って…?え…?」
誰なんでしょう?
って自分でもわからないでやんの…。
ホント今更だけど、我ながらそういうことに関してはホントだらしないことに気が付いた。
「真面目そうに見えたので、そういうことは放っといても大丈夫そうだと思ったのだが…君っていう人は…君っていう人は……」
なんてふしだらな女なんだーーー!!?
と言われかねないこの状況…。
あの…最も女にだらしないあなたにそれ言われたくないんだけど…と言いたいのだが、ホントによく判らないこの状況…。
でもそれでも私だってそこまでしていたわけではない…。
でも、ここで私がしなければいけないことは一つ…。
「申し訳ございません…。責任もって堕胎はしますので、どうかこの件はご内密にお願いできないでしょうか?」
ホントあっさり堕胎すると決めてしまったが、もしこうなってしまった場合、ずっと前からそうすると決めていた。
というか、どちらにしてもその選択肢しかない。まだ学生であることはもちろんのこと、この世に曜子がいる限り、私に子供を持つことは難しいだろう。曜子のそのものが存在するゆえに許されないことでもあるのだ。
そしたら…
「いいや!勝手に堕胎することは許さない!」
「え?」
「そんなことより、誰の子かが問題だ!!」
そんなことよりって?私のことはどうでもいいのか!?
「小野坂の子か?相原の子か?二央の子か?それとも最近まで付き合っていた外部の男との子か!?」
なんなんだ?このおっさん?
一体、私がどれだけの男と関係結んできたと勘違いしてるんだ!?
「なんで?小野坂さん??」
もういろいろ頭が回らなくなってきて、いつも通りの口調になってしまった。
「あいつ、君をここに連れてくるときに一緒にいて、君のことを彼女だとか言いよった。」
「え!?」
だから、月城は私には手を出さんかったんか!?
「だから、君のことは小野坂のこともあって、一応一時的に応対したんだよ。でもって君があの後、超有名大学の学生と知って、今偶然にも家庭教師枠が開いてたから、これは使えると思って、君を雇ったんだよ。」
なんかいろいろ、違和感あると思ったけどそういう事だったわけか。
でもなんで小野坂さん、私のことを彼女だなんて言ったんだろ?
でも…小野坂さんの彼女って…
「小野坂さんの彼女って?朝美さんですよね?」
「ああそうだよ。」
「なら…」
「彼女など3人ぐらいいても不思議ではない思ったから、ホントに信じたよ」
それはあなたの頭の世界だけの問題だ。
「でも私、小野坂さんとは知り合いでもなんでもなかったですよ。」
「それは本当か?」
私は首を縦に振った。
そもそもなんで小野坂さんは私のことを彼女だなんて言ったんだ?
もう、全然意味が分からない。
「小野坂の子じゃないなら、そこ問題ない。実は朝美さん。先月から妊娠していることに気付いてな。もし、君も小野坂の子を宿しているとしたら…大問題だったんだよ…。」
まぁそうなるわな…
しかし彼女が複数いても問題ないというのに、子供の問題となると大問題って?いったい?
あなただって、リキとナキという同い年の腹違いの実の娘がいるというのに、それでも大問題とか言える立場なのでしょうか?
「あの?それでなんで相原さん?」
「さっき、相原を問いただしたら、相原が君と付き合ってるとか言っていて…」
「はぁ?」
何言ってるんだよ?相原君よ…?確かに…
「えっと、確かに相原さんから、その話は持ちかけられましたが…その…まだ保留でして…付き合うも何も…。」
それだ…
相原とはあれから進展など一切ない。
「それは本当かね?」
それもしっかり首を縦に振った。
いったい何なんだ?
ただ見覚えがあるとすれば…。二央か日比野ぐらいだが…一応ここに来てから一回は生理はあった記憶がある。となると日比野は違う…。
まさか…
ここでとんでもないことに気が付いてしまった…。
この子は二央の子…
いやこれは絶対にバレてはいけないこと…
だからごまかすんだ!
「だからこの子は…」
と言いかけたとたんだった。
「俺の子だ!」
といきなり部屋に入ってきたのは二央だった。
「御覧の通りああいってるが本当なのかね?」
こんな状況だというのに、なぜか二央よりも月城は冷静だ。
本当といえば本当なのだが、
「ちがいます!」
否定するしかなかった。
よりにもよって15歳の跡取り坊ちゃんとの子どもを身ごもったことなんて言えるわけがなかった。
もう意味が分からなかった。
なんでこの家の男どもは、どいつもこいつも頭がおかしいんだろ?
「だから、オヤジが先生に手を出すことは、俺が許さない!」
なんなんだよ?
この静けさは…しばらく続いた。
当たり前だ。
15歳の若造が私のおなかにいるのは自分の子だと言い張っているのだ。
こんな状況で黙らないものはいないだろう。
「ホントにお前は、どこだろうと入ってしまう奴だな…。」
「別にいいだろ?ドアだけはきちんと鍵まで閉めてきたし。」
そういう問題じゃないけど、まぁこの話は誰にも聞かれたくない話だ。
「二央。その話は本当なのだろうな?」
「ああ」
「じゃあ話がある。ここじゃなんだから、場所を移そう。」
私も一緒に部屋を出ようとした。
「あ、君はここにいたまえ。」
「え?」
「ゆっくり体調を整えるようにと、医者からの伝言だ。しばらく、君の世話は小夜がここでするから、安心したまえ。」
そういって出て行ってしまった。また外からカギがかけられて出られなくなってしまった。
困った…
この先いつまで私はここで閉じ込められる予定なのだろう?
リキや二央はどうであれ…
心配なのはユキだ…
とりあえず、今回の中間テスト前まではなんとかなったからいいものの…
受験勉強や次のテストまでの指導もしないとさすがにあの子が受験に臨むのは無理だ。
4月の新学期の実力試験ではクラスで最下位は免れ、後ろから3番目の成績にはなれたものの。まだまだだ。
それに今回の試験結果だって気になる。
今年は受験生でだれもが頑張る時期だ。だからこそ、成績は上がりにくい。
今までは成績優秀者ばかり見てきたが、二央やユキみたいに崖っぷちな成績の生徒を見るのは、今回が初めてだ。それゆえになんか今までとは違って、歯ごたえあるせいか結果が今まで以上に気になる。
その後、私の食事とかは、小夜が運んできてくれた。
部屋を出入りする者が小夜だけなため、人と会話することが一切なかった。
リキ曰く、隙を見て出たはいいけど、外でマッチョなボディガードが待ち構えているとなると、妊婦の私じゃ絶対にかないっこない。なら、どっちにしてもおろしてしまうのだから、流産覚悟で戦えよとか言われそうだが、やっぱりそれはなんか違う気がする。
それにしても退屈だ…
食事だって、やっぱりのどに通らない時期だ…。
いろいろ辛抱ならなかった…
そんな時だった…
「次々ーーー!」
ジャラジャラと音が隣の部屋からしてきた。
やっぱり麻雀あってるらしい。
「もう勘弁してくれよーーー!」
「そうだーお前弱すぎるからヤダーーー!!」
という声も聞こえてきた…
もう辛抱ならなかったので…
「なら、私が相手する!」
もう退屈すぎた結果がこれだ。
小夜も必死で私を部屋に戻そうとするが…小夜一人の力では限度があった。
「え?おい?」
「いいんかこれ?」
ボディガードたちもびっくりしていた。
「おもしれぇやん。なら勝負だ。」
「負けたら脱ぐいうことでw」
とは言われたものの…
「んなわけねーだろ!」
ともちろん心に決めている。
マジで退屈ゆえにやるだけのゲームだ。
まぁそれは冗談たったらしく、久しぶりの麻雀は楽しかった。
「やったー!自摸 二盃口 ドラ2!」
「お、姐ちゃん強いなー。」
「なんか、俺たちが脱がなあかんか?」
「だからー、それ関係ないって!もう。」
と調子に乗っていた時だった。
「ほーん、星子君、麻雀強いのなー。」
という声が背後から聞こえてきて、全員がシーンとなった。
「それも男相手に脱ぎ麻雀で、男相手に脱がせてるって…どんなんよ?」
その声はいうまでもなく月城だったのだから…
まぁ月城もこの部屋で麻雀やって待機しているのは、月城本人も了承はしているものの、脱ぎ麻雀をほのめかすような麻雀ルールで囲うべき存在が、なぜか一緒に麻雀やっているのだから、さすがにあきれているであろう…。
ボディガードたちは一斉に立ち上がり、
「申し訳ございませんでしたーーーー!」
と一斉に謝っていた。
いや…私もどうしようか?な状態だった…。
「にしても見事な二盃口だ。」
てかもう、体が固まって動かない…。
「お前ら…」
「はい」
「弱すぎ。」
「えーーーーーーーーーっ!!」
そして月城はそっと私の肩を抱き、
「これは星子君には、ひと仕事終えた後に絶対に麻雀大会には出場してもらおう。」
「は?」
「それはあんまりじゃないですかーーーーー?」
この中でも一番強かった槇原が不服そうにそれを言っていた。
「もちろん槇原君にも出てもらうが、そのためには、きちんと精進するように!」
なんかよくわからないが、そういう大会があるらしいとのこと…
「私と星子君はここで大事な話があるので、君たちは席を空けてもらおうか。」
あれから何日たった事だろう?いちおう、何日かたってはいるとは思うがあまりにも退屈すぎて、何日たっているのかさえも判らなくなっていた。
でも、もたついてはいられない。
おなかの子はやっぱり育っているのだから…
「3日ほど開けてしまって申し訳なかった。」
三日間だったんか。
それでも待った。
「まさか、帰ってくるなり麻雀してるとは思わなかったけど、逃げなかったのなら、まぁいい。」
なぜか怒られなかった。
「ひとこと言わせてほしい」
と言われ何を言われるのか?と思った。
「おめでとう!」
といわれた。
「え?あの…?」
「どうした?」
「私…その…子どもは諦めるといったはずですよ!」
「何を寝言を言っているんだ?」
「え?」
「ここに書いてあるではないかーーー!?月城誠三郎の指示に従います!って!」
私は一番最初にサインした契約書を改めて読み返してみた。
確かにそうは書いてあるものの…
「申し訳ないけど、君には産んでもらうよ。月城家の子を。正式には私の孫だけどね。」
「そ、そんな…」
それを聞いて絶望しかなかった…。
「勝手なことは許さない。もし承諾しないのであれば…その子が産まれるまであの部屋にこもってもらう!」
とまで言われてしまった。
それ、困る…
ユキの家庭教師のことだけじゃない!
自分の学校の単位だって取れないじゃない!
就活だってまともにできない。
私は早く卒業してあの家と縁を切ることが目標なのに!
こんなところで躓くなんて…。
「困ります…」
「まぁそりゃ困るよね。」
「なんでですか!?」
そうだ。
なんでこの家はやたらと人を増やしたがるのかが判らない。
おまけに増やした挙句、その後のことはかなり無責任すぎるのだ。
すごい金持ちのはずなのに、子供全員にまともな教育ができないのであれば、子どもなんか作るな!だ!
「いろいろ知っちゃったみたいだね。」
「…」
「まぁ事情はいろいろあるにはあるんだが、これ以上は知らない方がいいよ。この家から抜け出せなるだけだ。」
確かにこんな家から抜け出せなくなるのは勘弁だ。
「まぁ子どもについては心配しなくてもいい。必要最低限は育てていくつもりだ。」
とは言っているものの…
「私はイヤです!」
「?」
「いくら、自分の身勝手でできた子供を産んだとするなら、その子がかわいそうです!必要最低限とか言ってるものの、ある程度歳と取れば、都合よく利用して、都合のいいところに嫁に出すだけなんでしょ?そんな未来しかない子供を産んだところでかわいそうなだけです!」
そうだ。もしこの子が男子だったら、もしかしたら二央みたいに育ててくれるかもしれないが、女子だったら、悲惨な未来しかない。サキやリキの母親みたいにある程度面倒見れる余裕があるのならマシだが、私なら、この家から離れた後はこの家とは一切かかわりあいになりたくないので、それもあまり好まない。
「わかった。」
判ってくれるのか…
「ならば、誰にも知られずにこっそりその子を産めるように手配しよう。」
「ですから困ります!」
「何が困るというのだ?」
「多れながら、私にはここで家庭教師という仕事があります!その仕事は放棄したくありません!」
「なかなか仕事熱心ではないか。ならば、二央とリキにはこの部屋まで通わせればいいだけのことだ!」
それでは困るのだ。
あと一人、生徒を抱えているのだから。
ユキには頑張ってもらわないと、こいつの鼻をあかすことはできない。
こいつの鼻をあかせられるかどうかは判らないけど、こいつの思い通りにならないことを一つでも作っておきたいのだ。
「そんなの嫌です!」
そうだいやだ。
「それに私は学生です!単位を取らないと卒業できません!」
「ならば、妊婦でありながらも通い続ければ学校は卒業できるではないか!」
まぁ確かにそうだ。
今は高校生ではないので妊婦だからと言って、学校側は退学にはしないであろう。
「それにリキの母親なんて「こんな好条件滅多にないし、社会出てから子供産むとなると自分の仕事や出世にも響くから、今のうちに子供産んでここで育ててもらうの手伝ってもらう!」とか言ってノリノリで、私の子を喜んで産んでくれたぐらいだぞ。」
なるほどそれでこんな状況か…。
だから、リキが存在するわけか…
「まぁあいつは…あまり恋愛には興味ないけど、自分の子供だけは欲しいという希望だから、あいつだけの考えで理にかなっていただけだけどな…。
まぁあいつとは子供ができるまでの仲だったけど、それでも結構長い付き合いになるよなー。ホント、友達みたいな関係で、ども母親より楽な存在だよ。」
言われてみれば、学校に通ってさえいれば、なんとか卒業はできる…
しかし…
「大きなおなか抱えたまま就活しないといけないのは、やっぱり嫌です…。」
「そこは自己責任だろ…。大きなおなかしていても雇っているところを探せば?」
なんなんだこの男は?
「とにかく悪いようにはしない。就活のことはまぁ君だから…私からなんとか押せるところがあれば押しとく…。」
何?その「行けたら行く」みたいな言い方?余計に納得がいかないものあるが、
「どちらにしてもだ。その子を産む方向性で頼む。さもないと産まれるまでそこで過ごすことを命じる…。」
そればかりは譲らないらしい。
ホント判らない…
が
今の私には月城に従うしかなかった。
仕方なく、今は月城に従うことにした。
まぁ出ていくという選択肢もあったが、住居など簡単に見つかるわけもなかった。
私はいつも通りの部屋に戻った。
そしたら、何よりもうれしい笑顔を見ることができた。
「星子先生」
ユキだ。
「私、後ろから6番目になれたよーーー」
少しずつではあるが成績は上がってきたようだ。
「よく頑張った。」
私はこの子を見捨てるわけにはいかない。
この子にも近いうちに私が妊娠していることがバレるだろう。
もしかしたら、軽蔑されてしまうかもしれない。
その時にもこの子に対しては、凛とした態度で臨みたい。
そう思うまでだった。
なんか自分のおなかの子よりも、やっぱり仕事を優先してしまうタイプなんかな?自分?と今からそう思えてしまうのであった。
何せやっぱり、曜子の存在のことまで考えると、私はいつでも逃亡費用を稼ぐことだけを考える人生になりそうだと、言うことは予想できるからだ。




