キンキンこっそり勉強会
事情をいろいろ知ったからには、おせっかいかもだが…。
「なによ?」
ユキが部屋に帰ってくるのを待ち受けていた。
まぁユキも帰ってくるなり、じーっと睨まれた状態で出迎えられたのだ。
こういう反応はして至極当然なことだ。
「あーーーーーっ!!」
ユキは私が持っていたファイルをすごい勢いで取り上げてきた。
これもまぁ当然だ。
「勝手にみないでよーっ!!」
見ないでほしいと思うのも当たり前のようにわかる。
あくまで通信簿を含めた成績ファイルだったのだから…。
「てか、人のモノ勝手にあさって勝手にみるのやめてくれない!!?」
まぁ当たり前のように怒られた。
「あのさ」
「何よ!?」
「月城を見返してみない?」
なんか、私もこのまま月城にいいように扱われてばかりなのはシャクだ。
あと一年でここを出ていくとはいえ、それまでに少しでもあの月城の鼻を明かしてやりたい。
おそらく、このままだと次に嫁にやられてしまうのはユキだ。
ユキのこの器量なら、若さも兼ね備えて売れば、かなり言い値で売れるだろう。
私はあの事情を知って、それを阻止したいと思った。
二央は少なくとも5、全教科50点以上取らせて、留年さえしなければ、月城も文句は言わないだろうし、リキは私が思っている以上に頭がいい。だから、この二人はとりあえず、今のままでも余裕で面倒見れる。
問題はこの子だ!
40人中最下位って…。ホントびっくりした。
さすがに学年順位は最下位ではなかったにしろ、これはひどい…。
「君、受験生でしょ?」
「…。」
「まぁ少なくともサキさんが通っていた、一並商業ぐらいは行こうよ。」
「え…ちょ…勝手に決めないでよ。」
ユキは突然のことで驚いている。
「無理だよ!それ!!」
まぁ今の学力なままでは無理である。
「大丈夫。そこより低いところでもいいよ。でも、そこだと就職有利そうだから、あえてそこをチョイスしたまででね。」
まぁユキに母親がいないとなると、どちらにせよ月城がユキに金かけてくれるのはせいぜい高校までであろう。だからユキも高校出たら、妥当に稼げれるようにして、ここを出ていくことを考えさせた方がよさげだ。
「もしかして、何も聞いてないの?」
そうだ。そういえばこの言えば、ある程度歳が来るまで何も教えずに隠すことが当たり前だった。
「!!!?」
反応的にユキはまだ何も知らされていないようだ。
「多分、もうすぐだろうけど、月城から高校受験するかどうかを問われると思う。」
「え?」
あーそうかこの子、サキさんの時のことは全く知らないのか…。
なら…。
「リキちゃんもそうだったらしいから。」
「いや、リキさんは頭がいいから月城から、誘われていたみたいだけど、私は…その…。」
まぁ私が知る限りでは、確か月城は剣崎さんに「チャンスをあげた」とはいっていた。
剣崎さんだって、高校にすら行けないぐらい学力はなかったと確かに言っていた。だとするなら、月城はユキにもチャンスを与えるはずだ。
「え?でも去年、純子ちゃんが受験生の年だったけど、リキちゃんみたいに誘われなかったとか言っていた。」
ああ高校生メイドではなく、中学生メイドはまだいたのか…。
そういえば、もう一人ぐらいユキと同じ制服着てた子がいたの思い出した。
なんなんだ?この家?
完全に労働できない中学生ですら雇ってる状態かよ?
「だからあの人、絶対に私なんか話を持ち掛けてこないよ。」
待て?純子だと?
名前の法則的に純子は月城の娘ではないことは判る。
なるほど。
自分の血のつながった娘にしか、受験のチャンスは与えないと区別しているわけか。
ならば
「多分、ユキは選ばれるよ。」
「…え?」
「まぁ仮に選ばれなかったとしてもだよ。受験受けるギリギリになって申し出ても、多分受けさせてはくれるよ。だから、それまでがんばってみない?」
「…」
「ここで身分が高校生だと確か門限とかも緩くなるし、バイトも夕方の平日は都合によって当番制だから、選べばクラブ活動だってできるはずだよ。」
そう、確かユキは今、部活動ですら無所属の帰宅部だ。学校終わってすぐに帰って、即仕事という毎日。少なくとも中学生よりかは優遇されるし、楽しい青春が待っているという感じで誘ってみる。
ユキの目からは涙がこぼれていた。
「…よ、よ…ろしく、おねが…い…しま……。」
すごくぎこちない挨拶だった。
これでユキも私ももとで勉強することに決まった。
「ただ約束はしてほしいことがあるの。」
「?」
「お勉強をするのはこの部屋でだれにも内緒で行いたいの。」
「あ、なんかそれわかるかも。」
判ってくれた。
「あと、成績表とかっていつも月城に見せてた?」
その問いに関してユキは首を横に振っていた。
「だよね?」
まぁ見せないだろうなこれでは思える。
それに、あの様子では二央も月城にろくに見せてないという事は判る。
確か、今学期の期末テストだけは珍しく、自分から進んで見せに行ったと二央の口からも聞いた。
おそらく月城は自分の子の成績に関してはあまり興味がないとみてもいい。
「あの…どうしても見せないとだめですか?」
「ううん。こればっかりは今まで通り見せないで。」
あの時、剣崎さんが言っていた、月城からの妨害というのも気になる。
だったら、いっそ。
「いい。月城には受験は受けることだけは宣言して、今まで通り受験ギリギリまで、バカのふりをしていてちょうだい。成績表は私にだけ見せるという感じでいいから。
あ、あと保護者面談があるなら私が行くから、連絡プリントは私に回して。これだけは約束。」
このプロジェクト。絶対に邪魔はさせない!絶対に成功させてみる!
私の心は決まった。
そして…。
今、私は本業のバイト中で。
二人まとめて同じ部屋で勉強会。
そういえば、二央は結婚式に呼ばれて、リキは呼ばれていない。
二央は事情を知っていても、リキはいまだに知らないでいる状態だ。
ホント同じ兄弟とはいえ、ここまで徹底して区別され、秘密を守らせているとは恐ろしい家族だ。
リキがいる手前、二央にはまだ何も聞いていないが、二央はナキの結婚についてどう思っているのだろうか?ホントこいつは、あの結婚式の最中も麻由一つ動かさずに食事をとるだけ取って過ごしていたが、何を考えているか、ホントさっぱりわからない奴だ。
こんなことなら、帰ってきてすぐのあの晩に聞くべきだったと後悔している。
まさか、結婚式に参加しなかったリキと下の姉妹たちには、一切情報を聞かせていない状態だったとは知らなかったので、今更聞くに聞けなかった。
ただあの後サキさんと飲みに行って、サキさんにはナキが嫁いだという事は話した。
そしたら、
「何考えてるんだ!?あのクソ親父は!!?あの子はまだ16になったばかりじゃないのっ!!?」
とすごい勢いで怒っていた。
「それも相手は61で、45歳も歳の差って!!?ふざけてるの!!?」
それを聞いた時には怒りを通り越していた。
「まだ、姉さんたちなら、判らんでもないかもだけど、それでもないわ…。」
まぁ、私もすごい姿を見てしまったけど、もしこれをそのまま黙ったままにしておいたら、それはそれで私まですごい勢いで怒られそうだと思ったので、やっぱり話しておいた。
それにもし月城家で、私に何かあったとしても少なくともサキさんには味方でいてほしいからという理由もある。
この結婚。
私も止めれるものなら止めたいとは思えはするが、そんなこと無謀でしかない。
仮にサキさんが、あの時月城に怒りをぶつけていたとしても無理であろう。
それにしても嫁にやるのが、
「なんでアキさんたちじゃないのだろう?」
とサキさんに行ってみたら、
「さぁね。多分だけど、あいつは25以上の女を女としてみてないのは確かよ。」
うわ…最低だ…。
「あと、あのブスじゃ嫁の貰い手はないだろうとも言っていた。」
またひどい話だ。
じゃあそのあんたが言うブスの母親は美人だったのだろうか?
「なわけないじゃない。姉さんたちにそっくりよ。」
とサキさんは言っていた。
どうも見たことはあるらしい。
「たまに姉さんたちに会いに来てたよ。」
ああ、離れて暮らしてても会いには来るんだ。
「まぁあいつ曰くだけど、ブスだからこそ姉さんらの母親に手を出すだけだして捨てても問題ないとまで言いきっていた。まぁあいつは元々年齢的にも結婚できない歳に子供を作ってしまったからねー。」
確かになんか違和感あると思ったらそれだ。
「まぁあれも元々いいとこのお坊ちゃんだったからねー。それなりのフォローはあったわけよ。それも三男坊で兄さん二人いたらしいけど、どちらも夭折したので実質上一人息子で跡取りでさー。」
まぁそういう事だろうねー
「これまたすごいことによ。アキ姉さんとフキ姉さんはある闇医者のもとでこっそり産ませたらしいのよ。で姉さんたちの母親は、あいつとおない年の当時高校生。そのまま全部隠ぺいしてしまったから、母親は、産むだけ産んでなんもお咎めなしですんだらしいのよね。
というかね。あいつ本人が「自分とブスが関係を持ったこと事態がバレるのが嫌だった」というのが本音で、関係者全員で全力で隠ぺいしたのが事実なんよね。」
なんかとんでもない話だ。
そんなくだらないことが理由で隠ぺいだなんて…。
なんて贅沢な隠ぺいなんだろう。
「ただ、やっぱり子供を産んでしまったという事実は変えられにので、母親に一筆書かせたらしいのね。
この子たちを月城家で預かり育てる代わりに慰謝料や財産分与は与えないとか、こちらの育て方や方針には一切口出しはしないとか、いろいろとね。」
すごく身勝手な話だが、出産費用や育児費用は全部こちらで受け持ってもらっているのだから、文句ひとつも言えない状態なのであろう。
「おまけにね。姉さんの母親。あの後、なんもなかったかのように自分だけ普通に別の人と結婚して幸せになったのよねー。それで新しい旦那との間に生まれたのが私と同い年の男の子で双子でさ、小さい頃はたまについてきてて、一緒に遊んでたわー。」
ああだから、月城はあの二人の面倒だけは見るつもりでいるわけだなーとこの話を聞いてそう察した。
こうしてみると、女の面倒までは見ないけど、一応子供の面倒だけは見るから偉いとは思う。ただ、育て方があまりにも雑過ぎるけどねー。
一応育てるだけ育てて、永久就職させるそのやり方は何とも言えない。
「せ…い……先生。」
あ、バイト中でした。
「できたよ。」
リキは得意げに自分が説いた数式を見せてきた。
やっぱり思っていた通りよくできる子だ。
「じゃあ、お茶もって来るね。」
リキは表向きは二央付きのメイドだ。こういう時は食事やおやつを運んでくる担当である。
まぁ勉強をしている合間にもお仕事をしているふりをしていないと他から怪しまれるので、さり気に役割を担ってる。
さてリキがいない間に、二央にもいろいろ聞きたいものだが、いつリキが帰ってくるか判らないし、かといって勉強中に無駄な時間を取らせるわけにもいかない。最近は二央と二人で過ごすことが少ないのでなかなか腹を割って話す機会がない。
そしたら
二央は私の手を取りいきなり、何か握らせてきた。
手を開けてみるとメモのような紙に「あとで見て」とだけ書いてあったので、あわててポケットに入れた。
よくわからないが二央も何か察したのだろう。
「お待たせー。今日はアップルパイみたいだよー。」
やっぱり何事もテキパキこなすリキゆえに、戻ってくるのもやっぱり早かった。
二央もリキの性格をよく把握してる。
焼きたてのアップルパイを食して、本日午前の勉強は終了した。
さて…メモをこっそり見てみると…簡単に地図が書いてあった。
今日15時に来て。
どうもこの場所に15時に来いとのことだった。
えっとここって、電車で4駅先の場所だ。
何があるんだ?
行ってみることにした。
ついた先はなんと…
ここ、私が倒れたところじゃん。
亮子が住んでいるマンションだった。
ここに来いとかいうものの??
あれ?数字?801?
801まで来いと?
でもここ、暗証番号がいるのでは?
2946
あ、これ?
これって、ツキシロを数字にしただけ?
まぁいいや。これで。
あ、あいた。これであってるんだ。
ああ正直ここはいりたくないんだよなー。
亮子に見つかるかもだしで…。
でも仕方がない…。
多分この場所でしか、二央とはまともに喋れないとは思う。
だから行くしかなかった。
インターホンを鳴らすとドアは空いた。
「よっ」
その部屋で二央は社長椅子のような椅子に座って待ち構えていた。
「まぁそんな怖い顔するなって…。」
「…」
「なんか結局、後戻りできないほど知っちゃったみたいだな。」
やっぱり何もかも知ってるかのようだ。
「リキの手前喋れないことがあったんだろ?」
そこまで見抜いているとは…。
「まぁさすがにナキがどうなったかのことについてはリキに話すのもきついわな」
「なんで…」
「まぁ判るよ。今時あれはないよな。」
そうだけど…
「安心しろ。あいつ、少なくともリキにはああはしないだろうから、判っている通り、リキには黙っとけよ。」
とはいうものの、それは私もさすがに察して、リキには何も言ってない。
そうじゃなくて…
「あなたは何も思わないの?」
「何もって…。」
そうだ。いくら跡取りとはいえまだ15歳。
嫁に行ったなきよりも年下だ。
そんな歳で、あんな異常な結婚式に参加させられたのだ。
なんとも思わない方がおかしい。
「そりゃ不憫だと思うよ。」
「なら!」
「それで俺に何ができるんだ!?」
言われてみれば、二央だって月城の子供…。
それもおそらく、ただの愛人の子で月城に認知すらされてないかもしれない立場だ。
「俺…ほんと男で生まれてきただけ、マシだったよ…。
それを思う権利だけはあるだけでそれ以上でもそれ以下でもないんだよ!」
そうだ、二央にだって自分の姉妹を救える力など、まったうないのだ。
「俺だってショックだったよ!」
「シキ姉がお嫁に行くときも、マキ姉がお嫁に行くときも、他のメイドがお嫁に行くときも…。」
「ほかのって…?」
まさか他のメイドの子も月城の手で嫁がされていたわけ?
そんな…。
「ただただ黙って…見送るしかなかったんだよ……。」
二央はさすがにそのままうつむいたまま、黙り込んでしまった…。
おそらく、ショックすぎて声も出せない状態なのだろう。
それでも
「…それも……他のメイドは…あいつが手を付けておいて……飽きたら…どこかに……することを繰り返してて…」
それでも必死で声を振り絞って話した結果がこれだ…。
声はだんだん小さくなっていっていた。
うわ…そんな状況だったなんて…。
「二央…辛かったね……。」
と私は二央の肩に手を置いた途端。
ガシッ!
「ちょ…」
いきなり抱きしめられてしまった。
そのまま、すぐ脇にあった別途に倒れこんでしまい…
「待って!今回ばかりはだめっ!」
「…いいじゃないか・」
「…え?あ、あの…。」
「たまには母ちゃんの代わりになってくれ……。俺、甘えた記憶がさっぱりないんだよっ!」
「えーーーーーーーーーっ!!」
まぁホントにその後は服着たまま、ただ単に甘えられただけで済んだけどさ…。
まさか、
「俺の母ちゃん、産後の肥立ちが悪くて、ほとんど俺を産む代わりに死んでいったようなものだから…。」
というのには驚いた。
もっと、アキさんたちみたいな人には言えない何かがあるとは思っていたので、割と普通に闇はなかったことはよかったとは思えた。
私がしばらくここでお母さんの代わりになったことで、二央くんも落ち着いてはくれたようだ。
本当にいろいろありすぎて、中1の時の春休み以来の波乱な春休みだった。
そして、この春休みにはまだ私の知らないところで、とんでもない波乱が起きていたのであった。
それは、あの例のあいつが…私がいないところでとんでもないほどのことをまたやらかしていた。




