キンキンドキドキ愛人契約か!?
どうしても行くとか行かないとか?
私の雇主はあくまで月城なので、呼ばれれば行くしかなかった。
しかし、それは翌朝まで拒否されてしまった。
私は二央の腕の中にいる。
こんな感覚は能丸の時以来だ。
「なんでこんなことしたの?」
部屋に軟禁するまではともかく、ここまですることはないだろう…。
「マリアの時も4代目家庭教師の時も先代の時もそうだった…。
あいつはある日突然、家庭教師を呼び出して…自分の手籠めにした…。」
「え…。」
「あんたで7代目だ。」
「2代目3代目5代目さんたちは…?」
「2代目3代目は男だったし、5代目はすぐに出て行った…。」
なるほど…。
「俺は、あいつの女から世話されるのがイヤなんだよ!」
「だから、自分が先に手を付けちゃえばいいと思ったわけか…。」
「そうだ」
「でもさ、あなたが先に手を付けたからと言って、これからそうなるかもしれないのよ?」
「そこはいいんだ。」
「いいっていうけどさ、」
「あいつ、自分より先に手を付けられた女にはなぜか手を出さなくなるんだよ。」
なんなの?その俺が初めてを奪ってやった的な支配欲は?
先に手を付けたからと言って、別に意味なくないですか?
確かにここでは初めてかもしれないけど、それ以前にお手付きになった過去があるなら、あまり意味ないのでは?
「まぁマリアにしても他の女にしても、この家来る前にとっくに外の男のモノになっている女は当たり前のようにいるけどな。でも、あいつはその件に関してはなぜか不問なんだよな。」
とのこと。
なんか、納得いかない。
「現に少なくともここにいる上原さんと朝美さんは違う。この二人は執事の女だ。」
「え?どういうこと?二人とも小野坂さんの…。」
「ばか。まぁ朝美さんは小野坂さんとできているが、上原さんは先代執事の未亡人だ。あいつは少なくとも、この二人には手を出してない。
だから俺は、この二人は特に嫌ってはいない。」
まぁ上原さんはどうであれ、朝美さんは小野坂さんと?小野坂さんは月城よりは若いとはいえ40代。20代前半の朝美とは待つ20歳以上も年の差がある。
言われてみれば、二央の担当リーダーは朝美さんだ。
じゃあ朝美さんは上原さんと同じく、ここに残れる人なのだろうか?
「まぁ俺がこんなことしてどうにかなるかは判らんけどな。」
「何よそれ!?無責任な!」
「何とでも言え。」
「そもそも、わたしみたいな年増よりもさ、しのぶさんとかユキちゃんとか同年代の子の方を助けてあげなさいよー。」
「バカ言え!あいつらは無理だ!」
無理って…。二人ともギャル系ではないし、メイドの中では二央と同世代で若くてかわいらしい感じの子だ。あの中では最も危ないのでは?
「しのぶだ?あのこはああ見えてここ来る前に地区内空手大会少女部門優勝者だぞ。手出したら、俺の方が殺される。しのぶはあいつがスポンサーになっている道場での期待の星だ。
そんなだから、しのぶはほっといても大丈夫だ。」
そんな事情があったのか…。
夜に球にしのぶが不在な時があるけど、その日はおそらく道場通いが原因でいなかったわけだ。
なるほどな、ここではそういう事情は融通が利くわけか。
「あとな。ここでは口に出してはいけないルールだから、大きな声では言えないけど…」
二央は私の耳元で…
「ユキは俺の妹だ。母親は違うけどな。」
と小声で言った。
「えーーーーーーーーーっ!!」
「バカーーー!声が大きい!」
あーそうだった…。ここ二央の部屋だった。
こんな時間にまで私がいるいうことがバレるのはさすがにまずい…。
「だから、ユキもほっといてもあいつはユキには何もしねぇよ。」
さすがに月城も実の娘には何もしないか…。
「てことは、ユキちゃんはまだ中学生?」
「まぁ一個下だから、そういうことになるな。」
じゃあ、あの制服は…この辺でよく見るけど、地元の高校の制服じゃなくて、地域の公立中学校の制服だったわけか。どおりで、二央の制服に比べて、明らかに何代目かのおさがりっぽさもあるし、古いデザインで垢ぬけてないわけだ。
そういえば二央の左腕には、サキが言っていた通り、サキとは違う位置にあったとはいえ確かに月の形をしたあざがあった。となるとユキの体のどこかにもあざがあるという事になる。同じ部屋とはいえまだ見たことがないけど。
「いいか、このことは俺が言ったなんてこと絶対に誰にも言うなよ。この話をするのはこの屋敷ではタブーだ。」
なんか、さらに厳しい掟があるのか。
「もし口にした場合、身内でもない先生こそ、ここから真っ先に追い出される思ってな…」
そこまでかよ?
ホント変な家である。
まぁ私は学校卒業するまでの宿が欲しいだけだから、それまでの我慢だ。
翌朝
朝食にて。
「星子君。昨日の話の件だが…。」
「すみません。忘れてました。えっとなんでしょうか?」
ここは二央の言った通り、みんなが見ている前で食事中に話を済ませた方が無難だと思って、この場で話を聞こうとしたが…。
「いや、ここではなんだから、あとで私の部屋まで来たまえ。」
まずい…。
さすがに二央もこれには思いっきり反応している。
「え?あの、それではお仕事に遅れてしまいます。」
「いや大丈夫だ。今日は少し遅れると連絡はしてある。」
月城はあくまで自分の部屋で話したいとのことだ。
打つ手なしである。
これは諦めるしかないのであろうか?
「わかりました。後程お伺いします。」
とは言っておいたものの。
後ほどどころか、朝食終了後すぐに部屋まで連れていかれた。
これを見た二央も、ぎょっとした表情すら隠せずじまいだった。
そして、月城は部屋についた途端、いきなり鍵までかけられた。
ああこれはいよいよか…とおもった。
「さぁそこに座りたまえ」
月城は部屋にあるソファに腰掛けるようにいってきた。
そして月城も私の正面に座る。
次に月城が言い放った言葉は。
「ありがとう」
だった。
「…え?」
何のことだ?
もうびくびくものだった…。
「イヤぁ君には感心したよー。」
「え?」
「二央のことだよ。」
まさかバレた?
昨日、二央の部屋から、朝帰りいたいうこと!
こんな奴に弱み握られるなんて…。
「二央も君のおかげで」
と言いかけたとたん…
「留年も免除できた。」
一人前の男になったとか言われるか思ってヒヤヒヤしたが、そっちか。
「それにさらにすごいことに、あの子がこの3学期の学年末テストで、一応全教科50点以上とれたなんて、見たことがない。本当に素晴らしいことだ。ありがとう!」
月城は、私が初めて家庭教師を引き受けたあの日よりも強く私の手を握ってきた。
これはおそらく、二央にしても先にしても不審な目で見られそうな光景なのだろうけど、まぁこれぐらいは私も一応この方に雇わられている身なので、抵抗するのはむしろ不自然だ。
なんか、部屋に来て鍵までかけられたので、なんだと思ったがこういう事ならと思った。
「で話は本題にかかるが…。」
え!?これで終わりではないの!?
「誠に言いにくくて、頼みにくいことかもしれないが…」
ああやっぱり…
「そんな実力や魅力がある君に私は……。」
来るぞこれ…
と思って構えていた。
「頼む!お願いだ!」
「!!」
月城はさっきよりも力強く私の手を握ってきた。
それも顔はさっきよりも近すぎて、まるでキスしそうなぐらいだ。
もう駄目だと思った。
私も月城の愛人になってしまうのかと思った。
ごめん二央…。
そしてこんなときに二央の顔が思い浮かぶ…。
ああ二王…。
あんたでいいから、助けてくれるなら助けて…。
さすがに私でも、こんなおっさんとなんかやだ…。
「もう一人追加で、家庭教師についてくれないか!?」
「…へ?」
と頭の中めちゃくちゃな思考だったのが一気に拍子抜けした。
あ、そういえば…二王より一級下のユキちゃんの事かな?
確か、4月から中3で受験生。
やっぱり自分の娘の事を一応考えてくれているんだ。
この人も鬼ではないという事か…
と思っていた。
「実はリキの事なんだがな。」
「え?リキちゃん?」
思わず、いつも通りの呼び方でいってしまった。
「あ、失礼…。」
「あ、いいんだ。君がリキとそこまで友好的ならむしろ都合がいい。」
なんか許された。
「入りたまえ!」
と月城が言ったとたん。
「もう入ってるよ。」
気が付いたら、リキが奥の方の部屋のドアの横に突っ立っていた。
リキは月城相手にすごいため口で話している。
「ああそうか…。じゃあ話は聞いてたなリキ。」
「いいよ。先生が星子先生なら。」
「だそうだ。これからよろしく頼むよ。星子先生。」
話はここで終わった。
「リキも今日から、いつも通りに戻りたまえ。」
なんだよ。そういうことかよ。
と思ったが、リキにもいろいろと話を聞きたいことがある。
「すみません。
これからの進路希望や教育課程とかのことで、リキちゃんと少し話し合いたいのですが、ちょっとリキちゃんを外に連れ出してもいいでしょうか?」
「ああそれは構わないよ。一応、リキは今から解放するので。」
「ありがとうございます。」
屋敷の敷地内から出てからというものの…しばらくの間は無言だった。
リキを連れて行った先はもちろん
サキさんの事務所の近くのファミレス。
一応サキさんも呼んだ。
その後…




