出入り激しい月城家の恐ろしき闇
ホント信じられなかった…。
「キキ君。
私からのプレゼントは気に入っていただけたかね?」
そうだ。そういえばプレゼントは今日解禁されるのでした。
一体何だったんだろう?
昨日、この子がもらったメイドになる前の最後にプレゼント。
だったらせめてこの子にとって、納得がいく最高のプレゼントだったらいいな…。
とこの時点で思っていた。
「どうだね?かわいいだろ?似合ってるだろ?この新しい制服であるメイド服。」
「!!!」
なんだって!?
昨日まで楽しみにしていたバースデープレゼントが今この子が来てるメイド服だって!!?
「……。」
キキはここに来てから何一言もしゃべっていない…。
キキは暗い表情のまま、何も喋ろうとしない。
そりゃそうだろう。
昨日までは一応普通に幸せな日々を過ごしていたというのに、10歳の誕生日を境にいきなり、召使になるなんて残酷すぎる…。
キキはこの状況を知っていたのであろうか?
確か小夜も小学生の時から、ここにいたとは聞いたが、その時はどんな状況だったのだろうか?
「では、キキ君の教育係は早苗君にやっていただこう。」
「え?」
いきなり指名された早苗は驚きを隠せなかった。
「あ、あの…。」
「なんだね?」
「私よりも順番的に小夜さんかリキさんかと…。」
早苗は「なんで私が?」とめんどうくさそうな感じだった。
まぁ、教育係に向いていそうなのは、明らかにしっかり者で面倒見がいいリキちゃんだ。
「ああ、そうか…。ただリキくんには、ある人からの指示で他にすることが多くなるため、今回ばかりは早苗君にやっていただきたい。」
そして小夜は誰も何も言わずとも、教育係には無理があるのは明らかだ。
「えー……。」
「意義はないね」
そこで、執事の小野坂さんをはじめとする他の使用人たちからは、拍手されていた。
指名された早苗もしぶしぶ受け入れざる得ない空気になっていた。
「さて」
月城からの話はまだあるようだ。
「この度、3月13日。突然ではあるが、結婚式を行うことになった。」
「!!?」
って誰のだ??
「今から、私を一緒に参列していただくものを発表する。」
月城の隣にいた小野坂さんが手持ちの筒が身を広げる。
上から。
火口二央
阿部カオリ
田中小夜
上原由美子
琴金星子
小野坂 学
ここまでは、なんだか使用人で一番偉い小野坂さんより私が先に名前が記されていたことには、ホント驚いた…。
そして続きは…。
山本アキ
山本フキ
あと
篠原ナキ
だった。
運転手・スタッフ
井上与志之
相原伸久
だった。
当日はチャーターの小型バスで行くらしく、運転手は井上さん一人という事。
「あーあとは、ここにはいないが、三年前にここを出て行った私の身内の一人を途中で拾って参列します。よろしく。」
とのことだった。
多分サキさんの事だろう。
それはいいとしてだ。
見るからにおそらく、内訳のほとんどが身内であろうことは判る。
おそらく、いつもは全く呼ばれもしないナキさんも呼ばれているという事は、おそらく彼女も身内?なのだろうか?
そして…
「あの旦那さま。」
「なんだね?アキ君?」
「今回の年度末の追放審議会はいかがなさいましょう?」
今なんて言った?
追放審議会とか?言わなかった?
「ああ、今年度はなしにするよ。
ちょうどうまいタイミングで新しいメイドさんも入ったことだし、追い出されるのは決まったようなものじゃないか。」
と月城が言ったとたん。
メイド一同はホッとしていた。
ただ一人を除いては
「私は納得がいきません!」
メイドのリキちゃんだ。
リキちゃんは、先ほども紹介したように面倒見がいいしっかり者だ。
高校生メイドのうちの一人で、学校もなぜかメイドメンツの中では唯一まともな進学校に通っている変わり種な子で、この屋敷では私と一番気が合う子だ。
「ああOK。」
リキは今にでも、あの月城のかみつきそうな勢いで睨んでいる。
普通の使用人でここまで強く出られる様を見たのは、おそらく私の人生でこれが最初で最後かもしれない。
「リキくんにはまだお話があるから、この後一緒に来たまえ。君とはこの後、ゆっくりお話がしたい。」
月城はめずらしいことに…
「じゃ、今日の朝食は私は自室でとることにする。
誰か、私とリキくんの食事を私の部屋まで持ってきてくれたまえ。
さぁ皆、持ち場に戻るように以上!」
私は月城がそれを言ったとたん。
えーーーーーーーーーーっ!!?
と頭の中だけで叫んでいたほど驚いた。
一体何なんだろう?
まさかね…。
月城さん今度はリキちゃんを…?
あり得ない…。イヤあり得るかも…。だとしたら、イヤだな…。
そもそもリキちゃんはまだ16歳ぞ…。
なんかすっきりしないままだった…。
そして、この食事中に一番気になったのが…。
「かわいそうにな…あの子……。」
と隣の席で、ぼそっと言っていた相原の一言であった。
まさかね…。
あの後リキは月城の部屋に行ったっきり帰ってこなかった…。
そして、相原も結婚式の準備に忙しいとかで、あの意味深な言葉について聞いている暇すらない状態だった。
そして少し時間があったので、サキさんのところに相談に行こうとしたのだが、サキさんはいつ行っても事務所にはいなかったし、電話にも出てくれなかった。
まぁあの人にも仕事もおそらく留守になる時はなるような職種なので、仕方がなかったといえよう。
そして来る3月13日
その日、私は和服に着替えさせられた。
どうやら、式は和婚らしい。
式に参列する者は、全員着物だった。
連れていかれた場所はそれはもう、大きなお屋敷であった。
ここは都心ではなかったので、月城家よりもまた更に大きなお屋敷であった。
そして、今日こそはここでサキさんに会えると思っていたが、途中で拾われた身内と言われる一人はサキさんではなかった。剣崎さんという、私と同い年ぐらいの女性だった。
私がさらに驚くべき出来事が起こった。
それは…
「イヤです!私、そんなこと聞いてません!」
奥の控室から、何らか言い争う声がしてきた。
「うん、きれいだよ。」
驚くべきことにそこには、花嫁にしては幼すぎる白無垢を着た少女がいた。
「!!!?」
でも、声質的にリキではない。
リキはもっとハスキーな低めでボーイッシュな声だ。
だれ?
少女の顔を見ると、なんとナキだった!
同じく結婚式に参列予定とされていたはずだが、まさかナキ本人が花嫁になって参列するとは…?
「うそでしょ?」
その時だった。いきなり後ろから口を押えられた。
まずいと思ったが、それは相原だった。
相原はもう片方の手で、自分の口元に人差し指を立てて「しーーっ!」としていた。
つまり黙れという事だった。
黙れって…ナキさんだって、学校は行ってないにしても、リキと同じまだ16歳の少女…。
「まぁ遅かれ早かれ、こうなる運命さ。」
「いやっ!」
「では聞くが、君はこれからどうやって生きていくつもりかね?」
「え…?」
「君は同い年のリキとは違って、高校にすら行ってないではないか。
別に私も大した学歴ではないが、少なくとも高校は卒業している。
今のご時世、大学に行くのすら当たり前なご時世な中で、
高校すら行っていない君はこの先いったいどうやって生きていけるというのだね?」
ナキは残酷な正論をたたきつけられていた。
「今のご時世、中卒で雇ってもらえるところなんてなかなかないから、君に良かれと思って紹介した嫁ぎ先でもあるんだよ。」
「……でも…でも…あまりにも突然すぎです!私はイヤです!」
そりゃそうだ。
いくらなきが学校に行っていない16歳とはいえ、なんも前触れもなく、いきなり結婚させられるなんて状況はないわ…。
「それにこれは悪い話ではないんだよ。
君の嫁ぎ先は、確かにうちとは違って地方でのどかな田舎ではあるけど、うちとほぼ同格ぐらいの資産家でね。君の生涯の生活財産を保証できるぐらいにある。」
そういう問題じゃないんだけどな。
「おまけにここの御主人は心の広いお方でな。君を高校にまで通わせてくれるらしい。」
「うーーっ(え!?)」
私はここで思わず声を出してしまっていた。
相変わらず相原に口を押えられていた。
まぁ結婚後に高校に通わせてくれるような太っ腹な家なら、さすがに月城もその歳にあった子を紹介したくはなるものだ。確か、現在16歳のメイドの子はリキ、ナキ、しのぶの3人だが、ナキ以外は高校生メイドなので、紹介する対象者はナキのみとなる。
つまりはこれはナキがこれから生きていくための最善な道いうことになる。
ただここで疑問なのは、なぜにナキみたいに高校すら通っていない子がいるかという事である。
サキさん曰く、家庭の事情によりけりとのことだが、それにしても差がありすぎる。
「……それホント…?」
「ああ一応、君のことは君のお母さまより任せられてるから、これで君を無事に送り出せたら、私も一安心なのだよ。だから、判っておくれ…。」
私はこの時月城は完全な鬼ではないと思った。
のが…間違いだった。
式は始まり、びっくりしたことは…。
なんとナキの夫になる男は61歳のジジイだった。
ナキが16で相手の男は61…。数字が逆なだけのとんでもない縁での結婚であった。
歳の差45歳…。
どうも6歳年上の奥さんと20年前に死別して、その3年後16歳年下の20代の女性と結婚したが、10年前に子供を置いて突然出て行ってしまったらしい。そしてその子供がなんとナキと同い年の子らしい。
もうこれ、絶望しかない環境にナキは置かれたようなものである。
それも、ナキ本人もわた帽子を深くかぶっているせいか、隣の婿の顔が見えてないのか?判らんが、堂々としたまでに三々九度の儀式をやってのけていた。
これで結婚式の儀式は完了したというわけだ。
そのとたんだった…。
ナキは隣の婿の顔を思いっきり見てしまってびっくりしたのか?
ナキはそのまま倒れてしまった。
おそらく、それはナキが初めて夫の顔をまじまじと見た瞬間だったのだ。
そりゃそうだ…。
そうもなるわと思った…。
こんな状況で…。
「あんれまぁ、花嫁さんってば、未成年ってきいてたもんで、普通に水に変えておいたんにー。勘違いして酔ってしまったんねー。」
とそこのばあやさんらしき人が、片付けをはじめた。
「あー。若い衆は花嫁さんを隣りに運んでなー。」
と手際よく片づけをしていた。
花嫁がいた席はほんの一瞬ではあったが、花嫁なくとも宴会はやっていた。
それも、メイド代表できたアキとフキはここぞとばかりに飲みまくって、大笑いしてはしゃぎまくっていた。あの二人は本当に下品だ。
16歳の少女が61歳のジジイに嫁ぐことになって、ショックて倒れてしまったというのに、式中も始終ニヤニヤ顔で、その様子を見ていて気分が悪かった。それも二人とも前から判っていたかのようになれた感じな態度だったから、余計に気分が悪かった。
「相原さんは知ってたの?」
「まぁな…。」
相原も相原で仕事上で仕方なく、見守っていくしかないっという感じだった。
そして…。また席を立った時だった。
気分が悪くなって、外の空気をと思って外に行こうとした時だった。
「いくらなんでも、かわいそうじゃないですか!!?」
という女性の声が聞こえてきた。
「あの子、まだ16歳じゃないですか!?」
誰かと思ってみてみると途中で拾ってきた身うちの女性剣崎さんだった。
すごい剣幕で怒っていた。
「私の時もマキの時も19でそれやってきましたよね!?」
え?剣崎さんも19歳の時に月城の身勝手で、他家に嫁にやられたわけか…。
それにマキさんって誰だ?
「一応、結婚はできる歳だけどねー。」
「ふざけるのも、いいかげんにしてくださいっ!!」
「いやー、なーんもふざけてなんかいないつもりだけどー。」
「マキなんて、あなたのせいで死んだようなものじゃないですかー!!?」
「だっけ?彼女は嫁ぎ先で亡くなったから、違うさ。」
え?マキさんっていう人は亡くなっているわけ?
まぁ今回みたいなことをやっていれば、ショックで死んでしまう人だって出てもおかしくはないであろう。
「まぁ一生、食うには困らない保証だけはしてくれるし、学校まで通わせてくれるらしいではないかー。おまけにきれいな体のままお嫁に行けるなんてさー。
ここまで良い条件はあの子にはないと思ったのだがねー。」
「だからと言って、あそこまで歳の差結婚させるのは、ひどすぎません!?」
まぁ誰もが怒りたくもなるこの状況で、それ言っていただけるだけでもありがたいものだ。
今の私にはとてもじゃないけど、そこまで強くは言えない。
「まぁ、だから君はまだ中卒なんだよね?」
「は!?」
「君のお相手はまだ20代の若造。だからこそ、君を高校に行かせる余裕すらないではないかー。」
ああ、剣崎さんがまだ生きていられる理由は、まだ結婚相手は年相応でまともだっただけのことか…。
でもそれで高校行けるかどうかはまた関係がないことではある。
「それはあなたが…。」
「メイドの仕事を与えて、勉強の邪魔をしてきたからというわけかね?」
「……」
そうだその通りでもある。
何も受験生にまで、働かせる必要性はないとは思うが、どうもここ数日で二央から聞いた話。月城の館で預けられている以上、跡取り以外は全員「働かざるもの食うべからず」な状態らしいのだ。ただし、跡取り予備軍とか、相応の下宿料をもらっている者と月城が気に入った愛人や特別な存在は除くらしい。
「私はね。別に公立高校なら、合格さえすればなんとか卒業させてあげるとチャンスはあげたよ。
でも君は受からなかったんだよね?」
「…」
そういえば、今思い返してみれば、メイドたちが通う高校は全部公立高校のみだ。愛人であるエリナだけが私立高校だったが…あの子は立場が違う。
「受からなかっただけなんだよね?
というか頭悪すぎて、学校側から受験させてもくれなかったんだよね?
だったら、学校に入れなかった君らの自己責任じゃないの?」
「うわーーーーーーーんっ!!!」
剣崎さんはそのまま腰を抜かして、大声で泣いてしまった。
私はさらに深い月城家の闇をまた垣間見てしまった。
やっぱりこの月城という男…。
絶対にこれ以上深く関わってはいけない存在だと気付かされてしまった。
無事に?ナキの結婚式も終わり、ナキは無事に嫁いでいった。
その後のナキがどうなるかは…縁があれば他の話で…。
そして数日後…。
私はまたとんでもないことに巻き込まれてしまう…。
それは夕食後、二央くんの勉強を見ている時だった。
「星子さん。旦那様がお呼びです。キリがいいところで来てほしいとのことです。」
小野坂さんから、伝達があった。
「はい、了解しました。」
まぁ今から別に言ってもいいというところだった。
だから、いこうとした。
「行くな!!」
「えっ?」
「絶対に行かせないっ!!」
「え?何?どうしたの?」
行こうとするとドアに鍵までかけられ、通せんぼされてしまった。
「どうしても行くというなら…。」
二央はすごい勢いで、私をにらんできた。
これってまさか…私も…




