これホント意味あるの!?
「えっ…」
日比野は突然の私からの申し出にぎょっとした顔をしていた。
「しょ…正気ですか?」
もちろん、正気ではない。
「はぁ……。」
日比野はため息をついていた。
まぁ当然だろうな…多分飽きれている反応だ。
無論私は元からOKされようだなんてことは思ってない。
断られるのを前提で言ったのだ。
「…」
「…」
「…」
何なんだ?この沈黙…。
すごい沈黙が続いた後、
「いいですよ」
は?
ちょい待て!予想もしてないことになってしまって驚きを隠せなかった。
ヤバい。
こいつ能丸曰く、人の内面を見抜く能力は長けてるとか聞いたことがある。
今、思いっきり気を抜いてしまった…。どうしよう…?
「どうしたんですか?」
「…え……っと…」
今さら、「冗談だよーん」なんてこと言えない…。
「…いやあのね、まさか…受け入れてくれるとは思ってなくって…。」
もうこの際、素直に言おう。
そうすれば、日比野もこのまま私に関わらなくなってくれそうだ。
「なぜ?」
えーーーーっ!!?
なぜってどうしよう?ぜんぜん続き考えてなかったわー。
「日比野君ってさ、こういうの興味なさそうだし、意外だなと思って…。」
そうだ。
噂だけでも日比野は結構いろんな女の子から告られていることを知っている。
そして片っ端から振っていることも知っている。
なぜに日比野は、そんなにまでして今まで女の子たちを振ってきたかの原因は判らない。
まぁ日比野は幼馴染にずっと片思いしているという情報も一応は知っているが、多分それだろう。
まぁ一応そのことは、ここは黙ってはおいた方がよさそうである。
だからもし仮に、私が冗談で交際申し出ても振ってくれると思っていたのに、これでは計画がパーだ。
「まぁ…そうですね…。」
って!!?
「正直、女子って自分の幼馴染以外の子は苦手ですね。」
え?
苦手なだけ?じゃ…
「じゃ亮子は…?」
「あぁ亮子さんは、前にも言った通りすごく聞き上手で、気が付いたら、こっちがしゃべらされているって感じですよ。」
たくさんおしゃべりできるコミュ強相手なら、自分の立場がその他大勢でも構わないというわけか…。
でも、どう考えても亮子は顔で選んでそういう態度をとっているように見えるのだよね。まぁたまたま、最初に話したのが日比野たちだったとしたら、そのグループに定着しそうだ。ただ、それだったとしても、どう見ても狙ってやったようにしか見えない。
「まぁ最初は黒さんが、何もわからず困っていた転校生に手を差し伸べたというのがきっかけでしたね。あの人面倒見がよすぎるから…。」
なるほどね。
あんな状況でも一応亮子から、粉かけていたわけではなかったんだ。
「で…その幼馴染さんのことは……」
「ああ、確かに彼女は僕の理想そのものですが、女としては見れないので付き合えないですね。」
きっぱり言いやがったー。
もうこうなったら誰でもいいから、擦り付けたいものあったが、それもダメっぽい。
どうやって断ろう……。
と考えていた時だった。
「安心できましたか?」
何でこうなるーと言いたかったが…。
「えぇまぁ…」
「なら、よろしくお願いします。」
何でこうなるんだろ?
「あの…なんで…」
「ああ、承諾した理由ですか?」
私は首を縦に振りまくっていた。
「勘違いしないでくださいよ。」
「へ?」
ってこいつ今さら、断るってことするんか?マジで鬼だ!
「あくまで仮ですよ。」
「かり?」
「そうです。お互いまだよく知らないので、表向きだけは仮に付き合うだけですよ。いけませんか?」
まぁこっちは実はあまり乗り気じゃないから、そういう期間もありっちゃアリだけど、
「自分はですね。なかなか人を信用しないし、なかなか人を好きになれないんですよ。」
まぁ私もそれは共感できる。
「で?大黒や亮子は信頼できて好きなわけ?」
「まぁ黒さんは長い付き合いなので完全にいい奴だと思って信頼してますね。
亮子さんも女性ウケはよくないと噂ではちらほら聞きますが、自分目線ではいい子だと信じたいです。」
へーほーんはーん
ホンと亮子の裏の顔を知らないこいつは幸せ者でしかない。
「正直、星子さんのことは大嫌いでした!!」
別に嫌いなら振ってくれればいいものを
「でもまぁ外見・実力・スクールカーストに関係なく平等に接している態度を見て、他の女子よりかはいい人いう事だけは判りました。」
なんかなー。口調的に全然うれしくない言われ方でなんか癪に障るー。
「僕を除いては…。」
「それ、まだ恨んでるの?」
「一応」
やっぱなー。
いくら能丸からの情報とはいえ、詳しい理由も知らずに避けていたのは確かだ。
まぁホントこいつらに関わると面倒くさい言うことは判る。
「まぁこんな僕だから…いつ心変わりして、星子さんのことを嫌いになるかもしれません。」
ああもう、今嫌いになってくれ!!
と次に言った日比野の言葉はおそらく一生忘れられないほど衝撃的なことを言いやがった。
「だから星子さんも僕から嫌われないように、これからは努力して頑張ってくださいねー」
ふぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?
お前何様のつもりでそれ言ってるんだ!?
まるで神様じゃねぇかーーーーー!!?
そんなこと、どう考えても神様目線でものを言っているようにしか聞こえんぞ!!?
なんか付き合って早々にとんでもないことを言われてしまった。
ああ、今までの告白もこんな受け取り方ではふられても仕方がないとは思う。
日比野は今まで、ふってきたといううわさは流れていたものの、これって逆に女の子たちからふられてきたのでは?とさえ思う。
なにそれ!?
あくまで、この交際の権限は全部自分が握ってます!というその偉そうな態度!?
なんかすごくムカついてきた。
確かにその気はさっぱりないのに「付き合ってみない」みたいなノリで、先に行ったのは私だが、さすがにそれはないだろう。
お前が私を嫌いになる前に私がお前のことを大っ嫌いになったわっ!
てか、もうすでにこんな奴とはとてもじゃないけど、付き合ってられなかった。
もう、断ってやろうと思った時だった。
「琴金くん」
間が悪いことに誰かに話しかけられてしまった。
「あ、来海くん」
「ちょうどよかった。ちょっと相談したいことがあっったんだけど、お邪魔だったかな?」
確かにお邪魔だ。
今から、交際を断ろうとしていたのだから。
「いいえ大丈夫ですよ。
一応、僕たちたった今から付き合うことが決まったという話は、もう終わりましたから。」
ふぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?
なんで早速報告してるのだよっ!!?
ぶぁかなのか?こいつはーーーーーーーー!!?
「ああそうなんだ。おめでとう。」
委員長は本気で信じ込んでしまっていた。
「あでも、それだと今から彼女借りてもいいんかな?」
「いいですよー。僕これから次の授業あるので。」
次の授業って、もうすぐ4時限目終わりそうだぞ。
「ああー君、教職も取ってるのね。」
ん?教職?
「まぁ資格はあって困るものじゃないし、教師になって子供たちの理解者になるのも悪くはないなと思いまして。」
「じゃあ頑張って」
「はい」
この後、私は委員長にドナドナされて、見事にきっぱり断るチャンスを逃してしまったのであった。
最悪だ…。
別に来海くんとはまぁまぁ仲良くはなれただけだし、別に付き合えなくても問題はない。
ただ、私と日比野が付き合っていることが当事者以外にバレたという事が一番の問題である。
よりにもよって、同じ実行委員の中にはあの大黒もいる。
私と日比野が付き合っているなんてこと大黒の耳に入ったら…、大黒は黙ってないだろう…。
これもう大学生活もつんだと思った。
「琴金くん?聞いてる?」
「あ…ごめんなさい…。」
「ちょっと今日はぼーっとしすぎだよー」
なんかこれでは、ホントに彼氏ができたばかりでぼんやりしすぎな恋する乙女にしか見えないではないか!!?
冗談じゃない!!
「大丈夫?」
「ごめんなさい!今日はもう帰ります!ホントは体調が悪くて…」
「そうか…。じゃあおつかれさま。」
来海くんは、明らかにすべてを誤解して察した状態だった。
明らかに「恋する女の子ってかわいいなー」みたいなまなざしで私を見ていたのは確かだった。
あー誤解されたままだ。マジでどうしよう?
「あの…」
「ああ日比野君のこと?大丈夫、僕の口からは何も言わないよ。」
「あ、ありがとう…」
すごいにっこり微笑んで答えてくれていた。
やっぱり委員長は日比野と違って優しい。
ホント日比野じゃなくて委員長と付き合うべきだったかもと、ホント付き合うことになってそうそう思えていた。
こんな時だった。
すごい久しぶりに見る顔を目撃した。
一応、化粧はしてるものの野暮ったすぎてあまりうまくないのが災いしてか、それが誰かという事は明らかにわかった。
亮子だ。
そういえば、亮子は長いこと行方不明になっていたが、生きてはいたか…。
正直、亮子のことはどうでもいいのだが、お世話になった風子おばさんの子でもある。それにまぁこんなに近くに住んでいるという事は、また何らかイヤなことに巻き込まれそうになりそうなので、一応必要最低限の情報は知っておきたい。今からならちょうど何も用事はないので、後をつけていくことにした。
結果的に亮子はある風俗店に入っていった。
まぁあの亮子が独り身でまともな生活してるとはとてもじゃないけど思えれない。
妥当な結果だといえよう。
「すみません…」
私は亮子が入っていった店の前で突っ立っているポンひきらしきおじさんに聞いてみることにした。
「ん?なんだね?募集みてきた子かね?」
私はいきなり腕をつかまれて、中に連れて行かれそうになったので、
「違います!今さっきお店に入って行った子のことで…。」
「あーマリリンちゃんのこと?」
は?え?マリリン?
リッティじゃないん?
「うちのマリリンちゃんが何?」
「あ、んとえっと…。」
そういえば、ここで下手にホントのことを言ってしまえば、めんどくさいことになりそうだ…。
「えっと…その…、さっきのあの子。うちの学校にいる子にそっくりだったんで、びっくりして思わずつけてきてしまって…。」
「あぁーマリリンちゃんの学校のお友達かー。」
といったん納得はしてくれたものの
「あーでも多分違うと思うんだけど?実際はどうなの?」
「え?」
逆に聞き返されてしまった。
「ごめんなさい!人違いかもです!」
と言って私はその場を後にした。
あぶなかったー。かもしれない。
事情はどうであれ、あまりかかわりたくはないとは思った。
あれが亮子本人だという情報は確定ではないが、おそらく亮子であろう。
元々ブリッコな亮子なことを考えるとあれはおそらく本人っぽさはある。
それにしても源氏名がリッティではなくマリリンだったとは意外だった。
マリリンなんてブリッコっぽい名前いったいどこから出たんだろ?やっぱあいつブリッコしすぎで判りやすいわw
と思っていた時だった。
突然携帯電話が鳴った。
母からだった。
まさか…またこっちに来るとか…?こんな時に勘弁してほしい…。
無視を決め込もうかと思ったけど、前みたいに父までこられては困るので、いやいや出ることにした。
「どうした?」
「星子ーーー大変なのよーーーーー!!」
「なによ?」
「曜子が…曜子が……」
曜子のことで、実家では今大変なことが起きているようだった。
そして私は一時期また実家に帰ることになってしまった。




