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その名もキンキンちゃん

妹へ…


お前がこの手紙を読んでいるころには、

俺はすでに死んでいるかもしれない。

俺はどちらにしてももうダメあろう。

だからお前だけでも逃げてくれ。

母さんは死んで父さんは…。

おそらくあいつはお前の所に行くだろう。

完全にお前に依存しかかるだろう。


このままお前まで捕まれば、

お前はあいつが死ぬまでお前に依存するであろう。


あいつが存在するだけで

ずっとお前には苦労かけてきた。

俺もお前のことをあまり力になれなくて、

本当にすまなかった。

せめてお前だけでも、幸せでいてほしい。


だから、今すぐ逃げてくれ。

間違いなく、あいつはすでにお前を依存先と決めていると思う。

お前の幸せを心から祈る。


兄より



一通のメールが来た。


ああまたか…と思った。

もうこれ何回目だろう?

てか、なんで私の居場所ここまで簡単にわかるわけ?

母さんが生きていた時は母さんが毎回漏らしていたのは判るけどさ。

これどう考えても毎回兄が漏らしているようにしか思えれんのだが、

当の兄もホントになんも教えてないらしい。


私もあいつのことは大嫌い!


私をよく知る者なら、そのことは絶対的に把握しているはずなのに、

なんで毎回こうなる?

ホントマジでそれだ。



でも…



大丈夫。



次こそは絶対に逃げ切るんだ。


その時だった。



ピーンポーン



インターフォンの音が鳴った。



え?もう来たの!?


ちょ、ちょまじやばいんだけど??

前はメール来てもう少しは余裕あったよね?

なんで!!?



「宅配便でーす。」



え?宅配便?

私、なんか頼んだ?


確か、もう引っ越し寸前でここ最近は何も頼んでないはず…

なんで?


疑問に思って静かにしていると


ピ-ンポーン


再びインターフォンが鳴った。




そして…



ピ-ンポーン ピ-ンポーン ピ-ンポーン ピ-ンポーン


連続で何度も鳴らしてきた。

これは何が何でも無視を決めよう思った瞬間だった。


いくら宅配業者でもこれはない…。



そしたら今度は


ドンドンドンドンドンっ!!


もう何なんだ!!?

ドアを思いっきりたたく音がこわくてたまらなかった。



どうしよう?この宅配業者マジでやばい。

これは後で苦情を言いたくなる案件。



「宅配便でーす」



という声が再度聞こえた。


その声をよくよく聞いてみるとなんか違和感がある。


明らかに宅配のお兄さんっぽい男の声じゃない。

でも、かといって、普通っぽい女性の声でもない。


すごく違和感があるのだ。


そしてまた


「宅配便でーす」


という声が聞こえた。


これ


あれじゃん。

鼻つまみながら、声変えてるとか?


にしては



へったくそ過ぎ!!



それもなに?

これどう考えても元の声が生理的に受け付けない声じゃない…?




まさか…?




と思った瞬間だった。




「うるせぇぞーーー!!何時だと思ってるんだーーーっ!!?いい加減にしろやっ!!」



とお隣さんが怒鳴る声が聞こえてきた。


まずい…。


お隣さんを巻き込んでしまった。


「うわーっ!!」


というお隣さんの声が聞こえてきた。


となるとこれは予想通りあいつだ。


お隣さんはあいつの姿を見てびっくりしたらしい。

そりゃそうだあいつの姿を見て驚かない者はいないと思う。


そのあいつを見て、一瞬静かになったが…



「なんだ?宅配業者じゃないじゃないかー!?」


という声が聞こえてきた。



やっぱり…

いやな予感は的中した。


それに続いて



「しーーーっ!こうしないとお姉ちゃん出てこないのよ…。」



当の本人は静かにしゃべっているつもりなのだろうが、外の声は丸聞こえである。


やっぱりあいつだ。


「なんだ?お前、妹なのか??」


「お前いうのやめてよ!それマジいやだ!」



「ああ、めんどくさい女だなー!なんなんだ!?」


「そうなの、私ここに住んでる星子さんの妹、曜子なの。」


「ふーん。あの子星子っていうんだー。」


ああ、近所には個人情報はなるべく言わないようにしていたのに、

名前までばらしてやがって……。あいつ絶対許さん!!


それも私があんなのの身内と名乗られるのは何よりも恥。

だから、私は早々に実家との籍はぬいた。

それはすでに親やあいつにも何度も説明したが、

あいつはそんなことお構いなしに何度も来る。


どうしようもない奴なのである。


どうしよ…これマジで窓から出てくしかないのかな??


「あのさ、今いないみたいだからさ、今日は一回帰ったら?」


お、お隣さんナイスー。


「え?でも…」


「あのさ、ここみてもわかるとおり、集合住宅のアパートなの。

君一人がここで騒ぐのは迷惑なわけ?わかる?」


「私、騒いでないよ?」


お隣さんは深くため息をついていた。


確かに曜子本人は騒いでいるという自覚はないが、

曜子の声は曜子が思う以上にでかすぎて、

曜子が一言喋るだけでうるささ過ぎて迷惑でしかないのだ。

その件に関しては曜子は無自覚だったりする。

まぁ何度か指摘はされたはずなのだが、いまだに治らずに今日に至る。


お隣さんもさすがに初対面の曜子にはその曜子の声に関しては強く言えずにいるようだ。

だから、お隣さんは困った顔してやっぱりため息をついている。


「悪いけど、今日はもう帰ってくれない?」


とお隣さんもさっきよりも強い口調でそう言っている。


おそらくお隣さんもこれ以上曜子とはかかわりたくないのであろう。

もしこのまま、私が帰ってくるまで曜子をお隣さんの部屋で預かるのは、

当然お隣さんも嫌だというのが本音だろう。


もしくは、もし仮にこのまま私が帰るまで曜子にここで待ってもらって、

曜子が私の部屋に泊まっていくという過程でも、

曜子の声で一晩中落ち着けないと踏んでいるのであろう。

その気持ちはすごいよくわかる。


それほどまでに曜子の声はどこまでも響く。


そして陽子はまた厄介なことに


「だって私、帰る家ないし…。」


とまでいいだした。


おいおいおい


確かまだ父さんは生きてたから、実家ぐらいはまだ残ってるんじゃない?

行くならそっち行けよー。

てか、ここどこだと思ってるんだよー!?


札幌だよ!?


あんたから逃げるために、私はここまで逃げているというのに、

何でここまで訪ねてくるんか?その神経がわからん。


さすがにお隣さんも舌打ちまでする有様で


「じゃあ、すぐそこのあれ、ビジネスホテルだからそこに泊まって!じゃ!」


「あっ」


曜子に次にしゃべるターンを与える隙なく、

お隣さんはそそくさと自分の部屋に入っていった。


さて…


これで済めば、いいのだが…


多分…




「うわーーーーーーんっ!!お姉ちゃーーーーーんっ!!!」




この大声に加えて、どんどんとドアをたたく音がする。


そう、絶対無事には済まないのである。




小学生の時も嫌だったが…


小学生低学年ならまだしも…



これで31歳…。



マジでこんなのにお姉ちゃん呼ばれる事態が恥ずかしくてしょうがない。


彼女のあだ名はキンキンちゃん。


誰もが聞いてて耳障りなぐらいなキンキン声をしているから、

そういうあだ名がついたともいえるが、


あだ名の由来はもう一つある。


彼女の旧姓は琴金曜子。

まぁ普通に読めば、「ことがねようこ」と読む。

その苗字である「ことがね」を別の読み方をすれば「キンキン」とも読める。


そのダブルな意味で


その名もキンキンちゃん。


この「キンキン曜子」の存在に悩まされて約30年。

やっと逃げ切れてあの忌々しい声を二度と聞かずに済むと思ったのに…

私はこのままどう逃げよう…

これまで私はどんな気持ちで生きてきたか…


そのキンキンちゃんには、なんもわからないであろう。

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