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飯屋のせがれ、魔術師になる。  作者: 藍染 迅
第4章 魔術学園奮闘編

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第239話 クランドのチャレンジ。

「製剤・調剤については別の講座で勉強することになります。残念ながら本講座では実物の薬草に触れてもらう機会はありません。あくまでも基礎的な知識を身につけてもらうことが、本講座の目的であります」


 クランドは短杖(ワンド)を振って、黒板の表示を消した。


「最終的には与えられた症例に対して適切な処方を行えるようになることを、講座修了の目安といたします」


 教室の中がざわついた。


(それって、医者になれってことじゃないのか?)


「はいはい。安心してください。皆さんに医師になれというわけではありませんよ? 何百種類もある薬種をすべて対象にすることはしません。限られたリストの中で、適切な薬草を選べるかというチャレンジです」


 クランドが「チャレンジ」という言葉を口にした。思わず生徒たちがノートから顔を上げる。


「ふふ。それではお待ちかねのチャレンジ・テーマを発表しましょうか。黒板をご覧ください」


 短杖を振ると、黒板に「症例」が表示された。隣には50種類の薬草が並んでいる。


「この症例に対してどの薬草を組み合わせて(・・・・・・)処方すればよいかという問題です。出題内容はシンプルですね?」


 だが、何種類の薬草を組み合わせれば良いのかがわからない。仮に3種類だとしても19,600通りもの組み合わせがある。


「薬草の調剤については考えなくて結構です。分量も無視してください。あくまでも『どの薬草を処方するか』ということのみ考えてください」


(これは……。時間を掛ければ調べられる問題だろうけど、期間内に(・・・・)調べ上げるのは難しそうだ)


 ステファノの想像は当たっていた。


 この時代の文献は「病名に対して症状を列挙する」形式で病気を扱っており、「症例から病名を検索する」ということができなかった。治療法も同様で、「病名に対して記載する」形式で整理されていた。

 ここで求めるような「症状に対して処方薬を選定する」という書き方をしている書物は存在しないのだ。


 医術のアプローチとしては「症状から病名を特定し、病名に適した治療法を施す」という手順に従っていた。それを2段階省略するようなチャレンジであり、相当な前提知識がなければ答えられない問題であった。


 ◆◆◆


 食堂で定食を食べながら、ステファノは考えにふけっていた。


(魔術学入門の方は単位取得の目途がついた。問題は薬草の基礎だ)


 ステファノとしてはこの科目も授業で勉強したいテーマであった。ならば、チャレンジをスキップするか?

 ここでステファノの性格が表に出てきた。


 チャレンジがあるなら、やってみたい。


 我慢続きの生活を振り捨てて、やっとたどりついたアカデミーの世界である。自分の可能性というものを存分に試してみたい。

 試してくれるというのであれば、ぜひやってみたい。


 その欲望を、ステファノは抑えることができなかった。


(チャンスがあるんだからやってみないと「損」だよね?)


 大変な思いをするかもしれなかったが、それでもステファノはこのテーマに挑戦してみることにした。


 そうなると、文献調査が必要になる。少人数の科目とは違い、今回は総勢30名のクラスであった。

 全員がチャレンジに取り組むわけではなかろうが、今までに比べれば競争者が多い。


 参考文献の奪い合いが起きるに違いなかった。


(うーん。他にもやることはあるしなあ。時間を無駄にはしたくない。他の人たちが調べ物を終わった週末辺りに集中して調べようか)


 それよりも今は提出が迫った「魔術の歴史(基礎編)」の課題に集中したかった。情報は入手した、仮説も頭の中にある。後は論文として書き出すだけになっていた。


 ステファノは午後3時までの空き時間を、寮の部屋で魔術史の論文作成に当てた。


 ◆◆◆


 論文作成を切り上げて魔術訓練場に来てみると、スールーとサントスの姿はまだなかった。


(ちょっと早かったかな? あ、トーマが来た)


「よう。お前だけか?」


 トーマは軽く片手をあげて挨拶しながら、ステファノの横に腰を下ろした。


「うん。こっちも今来たところ」


 既にスールーもトーマの加入に同意しているが、こういうことはきちんとメンバー全員がいる場所で確認するべきであろう。そう思ってステファノはトーマに結果のことは告げないようにした。


 やはり結果が気になるのだろう。どことなくトーマがそわそわして見えた。


「あっ、2人が来た」


 思わずトーマが声を出した。視線の先をたどると、スールーとサントスが入り口から入って来たところだった。


 ステファノは立ち上がって、2人に手を振った。


「やあ、揃ってるね。トーマ、久しぶりだな」

「ああ。久しぶり」


 旧知の2人、スールーとトーマがぎこちなく挨拶を交わした。


「サントスから話は聞いている。トーマが情革研に加入を希望しているそうだな」

「その通りだ。俺をメンバーに加えてもらいたい」


 トーマは真剣な目の色で頭を下げた。


「ほう? お前が素直に人に願うとは珍しいな」

「何とでも言ってくれ。俺がアカデミーを卒業するためには、ステファノとこの研究会が必要なんだ」


 茶化されてもトーマは相手にしなかった。


「ステファノの件は、魔力操作を教えてもらうためか? ステファノの方には得がないだろうに」

「う、そこはこの研究会に貢献して恩を返す」


 ステファノを一方的に利用している形になっている部分は、トーマとしても忸怩(じくじ)たる思いがあるようだ。

 ここまで読んでいただいてありがとうございます。


◆次回「第240話 これでお前も情革研メンバーだ。」


「では、サントス、ステファノ。トーマの加入に異論はないな?」

「ない」

「異論ありません」


「良いだろう。僕も異論ない。良かったな、トーマ。これでお前も情革研メンバーだ」


 スールーはトーマに右手を差し出した。おずおずとそれを握ったトーマは、続いてサントス、ステファノとも握手を交わした。


「良し。新メンバー加入式は以上だ。続けて、状況を確認するぞ。まずはサントス!」

「スールーの報告がないのはわかってる。俺の分から行く」


 土曜日から2日しか経っていないが、その間に進めて来たことについてサントスは報告を始めた。

 

 ……


◆お楽しみに。

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