行方
朝から歩き始めて、違和感ともうひとつの感情を抱いていた。
ひとり、むなしいひとり
隣にいつもいるはずの里予の姿も声も何もかもがなくて、和春は思わず独り言をこぼしていた。
「あいつ、寝坊でもしたのか?」
違う、そんなこと分かり切っていた。いつもの明るい声が耳に入って来ない、一緒にいる少女がどこにもいない。
愛想を尽かしたのだろうか、別にいい、構わない。そう言い聞かせるものの、どこかにそれらの言葉を否定する自分がいた。弱さを叫ぶ強い自分、現れるにはあまりにも遅すぎた。
本音に気が付いてしまった。
学校まで全力で駆け始める。息を切らしても苦しくてもかまわずに。肺が痛みを叫び散らしても無理やり息を深く吸い込んで、駆け抜けて。
先に学校に着いているはず。
そう言い聞かせてアスファルトで塗り固められた黒い道を力強く踏んで前へ。風を切って、信号機の示す色すらも残像の残光となり果てても前へ前へ前へ。
学校へとたどり着いたその時、見渡して見回して探して。
瞳に移る人々は他人、探し人はその部屋にいる誰でもなく。
「里予? 和春お前がちゃんと見とけよ」
訊ねてはみたもののそのような回答をいただいてしまっては何も分からない。もう他人には頼ることもない、そう思いつつ駆け出した。そのスピードについてくる者はなく、ついて行こうと思う者もない。
走って進んで探して、前へ前へ前へ。
風を切って地を揺らして進み続けるもどこにいるのか一切手がかりがなくて無力を思い知って歯を食いしばる。
弱音はいけない
弱音を吐いてしまわないように歯を食いしばる
言葉にしたら負けそのもの
何と戦っているのだろう、それは分からなくてもただひとつ分かること、誰も助けになど来てくれない。孤独を愛するような気取りと強がり、その行為による過ちは既に見えていた。
孤独の中、ただひとりこの男を見捨てなかった少女の名を呼んだ。
「さとよ! どこにいるんだ、さとよ!」
寂しがりの彼女のことを見捨ててしまえば望まぬ孤独の闇の中でひとりもがき苦しむかもしれない。
失って初めて気が付いた、遅すぎたのかも知れない。
それでも探す。手遅れでないことを祈って走り、名前を呼んで探し続ける。
見かけない見つからない見当たらない、いないいないいない現れない。
「どこにいるんだよ」
探していても見つけてもらおうにもどこにいるのかも分からなくて。和春は己の無力を実感していた。
見つかることもなく、時間ばかりが過去に流れて行って良き成果は流れてこない。
もう、なにも出来ることなど残されてはいなかった。




