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【急募】男女比1:60世界で国ごと生き残る方法(仮題) Part5945  作者: 月丘
第一章 陽没海の日章旗

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先行降下

 陸軍の輸送仕様ティルトローター機のキャビンで俺は眠気に耐えつつ、ヘッドセットの内側でラジオを聞いていた。


 『——ラジオネーム、ムーンヒルさんからです。『私は貧乳キャラが好きなのですが、平らと言いながら凹凸のあるキャラに憤ってしまいます、私の心は狭いのでしょうか?』ええっと〜、ムーンヒルさんはたぶん貧乳好きじゃなくて、無乳好きなんだと思います。手元の板で調べてみてください。そうですね〜例えばゆ——ザザッ。』


 最近増えてきた合成音声のラジオ放送は、不感地帯にでも入ったのか、溌剌とした声は途切れ雑音しか発しなくなった。耳に入るのは、甲高いエンジンとローター音のみ。

 北海道の北、樺太上空を航空灯を消して飛ぶティルトローター機内は暗く、薄く赤いライトがたった2人の乗客、俺と花谷をおぼろげに照らしていた。


 「……で、何でお前と二人なんだ?」


 「ん〜?向こうの男女比が1:60だからだろう?潜入できるのは831だと私と捻茂ぐらいだからな。」


 独り言のつもりで呟いた言葉に、アサルトライフルを抱き背中を丸めていた花谷が答える。なんだ起きていたのか。

 愚連隊どもはゴツい奴が多いからな、女性兵士がほとんどを占める『連邦』軍に潜り込めるのは、紅一点の花谷と不本意ながら俺か、残りの連中は別行動と。


 闇に紛れ森の木々スレスレを飛ぶ機体は、やがて速度を落としローターを上へ向けホバリング飛行に移った。合流地点に着いたらしい。


 久しぶりのロープ降下をした俺たちは、『連邦』軍の迷彩服にヘルメット、手には鹵獲したアサルトライフル、腰には拳銃と銃剣、頭の暗視装置以外は完全に連邦兵の格好だ。


 「さて、忘れ物を取りに行くとするか。落とし物センターの人、優しいといいな。」


 どうだかな、事前偵察によると一個中隊に装甲車付き、戦車の歓迎は無さそうだ。


 月明かりすら無い、暗い森を歩いていると赤外線モードの暗視装置の視界に光る物、目印の木の枝にぶら下げられた赤外線レーザーポインターだ。無言で頷いた花谷がスイッチを切ると、枯れ草の塊が動いた。


 「ヨーグルトは好きか?」


 「勝手に食うと怒られる。」


 草を纏ったヨーグルトの妖怪、もといギリースーツを纏った陸軍第2師団北端連隊の偵察兵は、俺の返答に銃を下ろした。


 「ようこそ北の端へ、帰りにトド岩観光でもどうだ?」


 「O市はちと遠いな、さて、何か変わったことは?」


 微光モードのナイトビジョンを着けた北端連隊の偵察兵は、薄い星あかりの中を自宅の庭のような足取りで歩き始めた。


 「戦術ネットワークに上げたとおりだ、周辺に外哨点は3つと30分ごとにパトロール、これは予定の5分前にこっち(北端連隊)で消す。」


 「ああ、始末したらすぐ逃げろ、巡航ミサイルが山ほど飛んでくる。」


 時間になれば、作戦の成否を問わず海軍の巡航ミサイルと対地モードの対艦ミサイルが、基地を残骸に変える手筈だ。『泥棒がバレたら家に火をつけろ』海軍は基地を放棄するらしい。その上、虎の子の特別警備隊を出し惜しんで俺たちに危ない橋を渡らせようとしている。


 「いや、あそこが吹き飛ぶまで見張るのが俺たちの仕事さ、ちなみに始まったらアンタらの援護は出来ないからな。」


 お達者で、と抜かしやがった。クソ、突入した途端俺たちごとドカンなんてつもりじゃないだろうな?どうも情報軍の実力部門は扱いが悪い、旧自衛隊から見れば外様だからか。


 「二個小隊で一個中隊を相手にしながら荷物回収か、正気とは思えないな。」


 全く、花谷の言うとおりだ。後から来る連中のために引っ掻き回すだけ引っ掻き回すさ。ああ、人材不足ここに極まれり。敵勢力の海上撃破をドクトリンとする国防軍の予算は、空、海軍に多く振り分けられている。割を食ったのが最後の砦こと陸軍と、何をしているかよく分からない胡散臭さ溢れる情報軍だ。


 ここだ、と偵察兵が立ち止まってブーツの底で指したのは、草木で偽装されたマンホールの蓋。これがロシア軍が残したバックドア、地下基地内部にまで繋がっているらしい。


 梯子を降りた先は、地上より寒く湿っぽい。上に残った偵察兵は最後にグーサインをして錆びついた蓋を閉めた、まるで墓にでも埋められた気分だ。いや、人柱か?ああ嫌だ嫌だ、気が滅入る、こんな作戦さっさと終わらせよう。


 アサルトライフルを構え直した俺たちは、足早に歩き出した。

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