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【急募】男女比1:60世界で国ごと生き残る方法(仮題) Part5945  作者: 月丘
第一章 陽没海の日章旗

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夜闇に紛れ

墜星暦5945年秋 日本国N県


 日が落ち、夜の帳が包む田園地帯。砲撃を逃れるため山林へ逃げ込んだ戦車大隊は、師団本隊から孤立していた。

 援護するはずの海軍航空隊は現れず、一方的に砲撃に削られた大隊は散り散りに野営。兵士たちは陣地の中で秋の冷たい空気に包まれ、傷ついた身体を休める。


 普段なら平野に星々のように散らばる街灯や家々の灯りは停電で消え、かわりに天上では小さな月が銀色の光を放っていた。


 浅い壕の中で身を寄せ合う兵士だが、全員が休めるわけではなかった。


 「どう考えてもハズレくじだろ。」「真っ暗で何見てこいって言うんだ?」


 起こされ、アサルトライフルとナイフ、ヘルメットの軽装で集まった兵は口々に文句を言う。


 定数を大きく割り込んだ歩兵は貴重だが、夜明けとともに移動…前進か、それとも退却して本隊と合流するか、大隊長は判断のために歩兵を後方との連絡に2個分隊、明日の進撃路の偵察に3個分隊を出した。

 

 戦車や装甲車をそのままに分隊ごとに偵察に出た彼女たちは、太古に欠けたままの銀月の薄明かりを頼りに静かに道を進む。一応配備されたばかりの暗視装置もあるにはあったが、ほとんどは昼間の混乱で失われていた。

 斥候のため誰も言葉を発しないのはもちろん当然だが、異国の夜道、二重の緊張がもたらす沈黙の行軍だった。


 「…!?」


 最後尾を歩いていた彼女が見たのは、自らの喉から突き出る刃。

 つや消しの黒いセラミックス製振動軍刀(ヴィブロソード)は音もなく彼女の命を奪った。


 「ん?何かあったの…。」


 背後の気配が変わったことに気づいた兵が振り向くとそこに戦友の姿はなく、かわりに斬撃が襲う。


 「敵——!ガハッ。」


 咄嗟の一撃をアサルトライフルで受けた兵だが、セラミックスの鋸刃は銃身をまるで竹でも斬るかのように切断。そのまま袈裟懸けに殺された。


 「クソッ待ち伏せかっ!」


 ユラリと湧き出たのは迷彩塗装のヒト型、日本国防軍制式採用の自動甲冑(アーマースーツ)。重ティルトローター機で駆けつけた陸軍即応連隊は主力が揃うまで、敵の浸透防止と目を潰すために潜んでいた。

 そして暗闇から隊列に飛び込み、自動甲冑(アーマースーツ)を纏う陸軍即応連隊の隊員と『連邦』兵は白兵戦にもつれ込む。

 銃が棍棒と化し刀が最も威力を発揮する近接格闘は、射撃戦に重きをおいた『連邦』兵のドクトリンでは軽く見られていた。


 「しゃがんで固まれ背後を取られるな!立ってる奴を撃て!」


 それでも分隊長は膝撃ちで方陣を組み、刀を持つ敵に制圧射撃、伏せる味方の上をオレンジ色の光が飛び、自動甲冑(アーマースーツ)が火花を散らす。

 しかし対人用のライフル弾は複合装甲に弾かれ、即応連隊隊員の足を止めるには至らない。

 俊敏性を人工筋肉に増幅された隊員は地面を蹴ると『連邦』兵を撥ねた。装備重量がギリギリ二桁kgに収まる鉄の塊、装甲車にも喩えられる重量級の突進に人体は耐えられない。


 「この野蛮人め!」


 自動火器の発達で戦場では廃れたはずの剣を振り回す敵に、分隊長はアサルトライフルを返し銃床で殴りかかった。

 即応連隊隊員は剣を握る籠手でそれを受けると、分隊長の腹へ拳を一撃、内臓が破裂しない程度に手加減して殴られた彼女は膝をついた。


 あとは一方的な蹂躙、発砲炎と振動軍刀(ヴィブロソード)が散らす火花で影が浮かんでは消え交錯、最後に立つ者は即応連隊隊員しか残らなかった。


 「指揮官は確保したな騒いじまった、増援が来る前にずらがるぞ。俺たちは殺し屋じゃねぇ…隠密(ステルス)行動は無理がある。」「残りはどうします?」 


 血を払った刀をアサルトライフルに持ち替えた隊員は、片手で気を失った分隊長を担ぎ、足下に転がり呻く『連邦』兵のことを聞く。


 「喚かれると面倒ってのもあるがうちは殺し屋じゃねぇ…見込みのある奴だけ持ち帰ってやれ。」「はっ。」


 捕虜を確保した隊員たちは、何人かを抱え上げるとその場に血溜まりと死体を残し闇に消えた。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 「遅いな…。」


 野営地の大隊本部、テントの中で偵察隊の帰りを待つ大隊長は、膝を指で叩く。机の上には地図と戦死/行方不明者のリストがまとめられていた。


 敵砲兵を排除できなかったことや海軍の航空支援が受けられない焦りから斥候を出したが、ここはおとなしく待つべきではなかったか?判断を誤ったかもしれない。

 大勢の部下の手前では余裕を見せていたが、テントの幕僚に焦りは隠しきれなかった。


 「新月が近い、たぶん道に迷っているんですよ。」


 戦死した副官の代わりがコーヒーを差し出す。


 「そうか…敵砲兵はおそらく海沿い…無視してもいいが、横から突かれるのは気分が悪い。第一艦隊に艦砲で片付けてもらうか、師団砲兵は前進に時間がかかる。」


 「では第二陣の到着まで一度退きますか?」


 「ああ、だからリージ中将は下がったんだ、閣下は慎重だからな。首都トーキョーに降りた空挺連中が中央を制圧してくれれば、第二陣と共に隙を突ける。」


 『連邦』陸軍第一空挺旅団、歩兵の中では最精鋭とされる部隊。先の星央大戦後に編成された歴史の浅い部隊ではあるが、敵地の奥深くに降り立つことを想定され厳しい選抜を潜り抜けた猛者に、大隊長は期待を寄せる。


 「空挺の連中に比べれば、コイツがある私たちは恵まれているな。」


 カフェインで睡魔を振り払い外の空気を吸いに出た大隊長は、偽装ネットを被った傷だらけの『テストゥードⅡ』重戦車を撫でる。

 攻勢には軽快な前世代の『テストゥードⅠ』中戦車が適していたが、本来の予定、星央大陸『共和国』でのオペレーション・マークタイム(NSTO同盟演習)では防戦が想定されていたこと、新型戦車をテストしたい上層部と装甲の厚い安全な戦車に乗りたい現場側で意見が一致して『テストゥードⅡ』がそのまま送り込まれた。


 「ニホン軍の戦車がどれほどのものか知らんが、山がちな国土だ大した物は出てこないだろう。」


 星央列強の主力戦車を凌駕する重厚な車体と太く逞しい90mm砲に、大隊長は絶対の自信を持つ。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 「…。」


 寝転がりスコープを覗く花谷は動くもののない国道を不服そうに眺めていた。ひっくり返った装甲車と燃え残りのトラックの残骸が、隣県へ海沿いに伸びる国道を塞いでいる。

 発電所へ乗り込む予定だった831中隊は、陸軍から国道を封鎖するよう要請を受けてI市側から『連邦』軍を抑えている。事実上の待機を命ぜられた831中隊は陸軍主力が揃うまでここで足踏みを強いられていた。


 「隊長、そろそろ交代っす。」「ああ。」「そんなに気になるっすか?」「何が?」「うちの隊長っす。」「さあな。」


 8311分隊…捻茂の部下に聞かれた花谷は、答えをはぐらかした。

X(旧Twitter)やってます

@moriya_tsukioka


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