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【急募】男女比1:60世界で国ごと生き残る方法(仮題) Part5945  作者: 月丘
第一章 陽没海の日章旗

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Guided Missile Cannon Carrier 《CCGー901 むさし》 《下》

墜星暦5945年秋 『連邦』海軍陽没海管区司令部


 大西海管区に並び『連邦』海軍の半身を司る司令部の指揮所。地下壕には無数の通信機器が壁に並ぶ部屋の中央に、陽没海を模したボードが置かれている。


 それを囲む参謀の目線の先は全て一致、一隻の戦艦を示す駒に注がれていた。


 「だ、第一次攻撃隊全滅。」


 「どんな魔法だ…。ニホン海軍は海防艦程度しか持たないはずでは…。」


 復号された暗号電文をグシャリと握りつぶし、誰かが呟く。

 攻撃機を示す駒は全て取り除かれ、一機の『グラディウスⅢc』のみが戦艦を見下ろしていた。


 「第二攻撃隊は何機集まる?」


 「301、345飛行団から『グラディウスⅢ』『グラディウスⅡ』が40ずつ、『アクィラⅣ』が80ほどです。」


 「おそらくこの戦艦はニホン海軍の虎の子(ホール・カード)、コイツさえ沈めれば残りなど。」


 横の机に散らばる資料、写真のニホン海軍の艦船はどれも、直線で構成された平べったい船体に単装砲を載せるのみで、攻防共に貧弱に見えた。


 実際それを示すように、N県上陸作戦時もニホン海軍からは一切の迎撃を受けなかった。海保巡視船決死の機銃掃射と、民生用自爆ドローン程度が当時の日本国防軍がとれる迎撃行為だった。


 「沿岸部の避難指示は進んでいるか?」


 「それについてですが…。統合参謀本部(ヘックス)は『警報は発令しない。現有戦力で対処せよ。』と。」


 歯切れ悪く、通信員は命令文を読み上げる。

 上級司令部は市民に不安が広まることを恐れて、避難警報をまだ出していない。最高意思決定者たる大統領は、選挙を控えていることから、元々高くはない支持率がさらに下がることを極度に恐れていた。


 「無能共め!私の名前でいい、州知事いや、間に合わんな。陸軍にも避難を手伝わせろ!」


 陽没海管区の司令官は、お粗末な保身に走る上層部に声を荒らげ机を叩く。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 『コメートⅠ』がほぼ払底したため、数の上では主力のレシプロ戦闘機『アクィラⅣ』に率いられる2機種の攻撃機。対艦ミサイルを運用できない『グラディウスⅡ』は魚雷を抱えている。


 第一次攻撃隊の末路の情報から、グラディウスシリーズが安全に投弾できるよう、対空火器を潰す爆撃役は、爆装『アクィラⅣ』が担う。

 対艦ミサイルの実用化で時代遅れと考えられた対艦爆撃機は、『連邦』西海岸の大西海管区へ配置換えになっていた。


 「コイツ(500kg爆弾)で主砲天蓋が抜けると思えないが…。中隊全機続け!」


 驚異的な対空射程を誇る主砲を沈黙させるべく、砲身でも曲がれば御の字と、先行する『アクィラⅣ』が高高度から『むさし』めがけて迫る。——急降下爆撃、空中分解寸前のスピードに機体が悲鳴を上げ震える。


 一方『むさし』は主砲、副砲を最大仰角に上げそれを待ち構える。


 ——ドォッ


 摩天楼のように林立する砲身から光が迸り、装薬と電磁力で加速された砲弾が放たれる。——この角度で、と驚いた瞬間にはすでに遅く、火球とベアリングに引き裂かれ『アクィラⅣ』は破片へ姿を変えた。


 「まだか…早く早く…。」


 『ピルムMk.Ⅰb』を下げた『グラディウスⅢ』は虐殺される戦闘機隊を囮に『むさし』を左右から挟み込む。

 本来の投下高度なら射程20kmの対艦ミサイルだが、悠々と高空を飛べば『むさし』の主砲対空砲弾の歓待を受けてしまう。第一次攻撃隊の犠牲を無為にするほど陽没海管区の将兵は無能ではない。


 雷撃機と共に海面を這うように滑り、水平線に隠れ投槍を握る。戦闘爆撃機が全滅すれば、次は恐るべき砲火が自分たちを襲う、直線機動のグラディウスシリーズなど対空射撃のいい的だ。


 「方位000目標捕捉(ターゲットロック)投下!」


 水平線から飛び上がった『グラディウスⅢ』は赤外線シーカーを起動、灼熱を発する『むさし』各砲塔を嗅ぎ取った『ピルムMk.Ⅰb』を切り離す。一瞬の自由落下ののちロケットモーターに火が灯り、白煙を曳きながら成形炸薬対艦徹甲弾頭の槍は母機を置き去りに急加速、『むさし』に喰らいつかんと飛翔する。


 役目を終えた『グラディウスⅢ』だが雷撃を敢行する『グラディウスⅡ』支援と、残る250kg爆弾を叩き込むべく陽没海の風を灰翼で切り裂く。

 飽和攻撃、戦闘爆撃機が、対艦ミサイルが、雷撃機が、この世界では過剰な火力が、『連邦』海軍の殺意が、四方八方から異世界の戦艦を滅せんと突き進む。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 「ひいふうみぃ、コレ堕としたら帰るか。ボクも暇じゃないからねぇ。」


 電子の神はつまらなそうにぼやきながら、両手の拳銃型発射トリガを虚空へ向ける。《捕捉》《捕捉》《捕捉》《捕捉》…探知範囲内の機体が、全て脅威度別に判定されマーカーが付与される。


 「まだまだぁ、まだまだぁ――両舷101番から112番、撃てぇ!」


 一斉砲火、艦中央部に装備された127mm電磁速射砲群が、鋼鉄の暴風を撃ち上げる。爆炎と無数のベアリングが『むさし』に殺到する『ピルムMk.Ⅰb』を歓迎する。

 シースキミング機能など持たない原始的なミサイルは、距離を詰めるごとに濃密な火箭に絡め取られ『むさし』に辿り着くことなく全て撃ち落とされた。


 「むっ?方位225機数3、急速接近!薙げ!」


 超低空で迫る勇敢な『グラディウスⅡ』に馬賊撃ちのように発射トリガを振るうと、格納されていた57mm速射砲がせり出し、近接防御光線砲(レーザーCIWS)が機敏に砲口を向ける。


 凝集された死の束、分間220発の砲声と悲鳴のような高周波音が、海面を叩く。


 タングステンとレーザーが織りなす光の豪雨を浴びた『グラディウスⅡ』、一機はバランスを崩し海面に触れて水柱とともに消え、一機は抱いていた魚雷が誘爆し爆散、一機はレーザーでパイロットが蒸発し火の玉と化す。


 「続けて方位140距離3500!機数12!7から9番で対処!」


 同じく艦尾方向から海面スレスレに吶喊する機を認めると、第3主砲塔が旋回、砲身をほぼ水平に下げ発砲。

 衝撃波が海面を同心円状に圧し潰して480mmの破壊が波を貫通し、理想的なタイミングで近接信管が炸裂。爆炎の中で奇怪なスクラップに加工された機体は海へ散った。


 両手に二丁拳銃めいて発射トリガを握り、多数の敵を薙ぎ払う銃七乗乃拳法にも似た動き。奇しくも最新鋭の防空システムは奈良時代の1対多を基本とする武術に酷似していた。

 加速度的に見えないシールドに触れては消える敵機、()()防空システムではない電子の神でも最低3桁の極超音速ミサイルを迎撃することを目標に建造された『やまと型』という器を得れば、容易く破壊を振り撒く。


 搭載火器が各々のリズムで480mm、155mm、127mm、57mmの砲声を轟かせる。核融合炉の出力に物を言わせた火力投射護衛艦は海上の移動要塞に等しい。ミサイルに頼らない単純な火力の暴威が『むさし』の周囲に鋼鉄の結界を張る。


 やがて空が晴れる。防空システムの壁はあまりにも厚く、CCGを冠する『むさし』の周囲に脅威は存在を許されない。『連邦』海軍は戦艦一隻に対して、一個艦隊と輸送船団、作戦機200機以上を失った。


 「キミほど上手くいかないね。さて、ボクは帰ろうか、返すよ『むさし』。」


 電子の神は被っていた制帽を、眠れる『むさし』艦載RTDシステムの頭に載せると、自らの家へと帰った。


 中将も、陽没海の傾いた陽に照らされる『むさし』と後方で控える第1火力投射護衛艦隊群の針路を母港へとる。

 砲弾に余裕がまだあるが、非戦闘員への艦砲射撃を許すほど日本海軍は落ちぶれていない。かつ、戦後の『連邦』の国民感情を考え市民への犠牲は最小限に、というのが政府の命令だ。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 ——静寂。地下壕の陽没海管区司令部指揮所は沈黙に包まれていた。


 「…だ、第三次攻撃隊の編成を——。」


 堪えきれずに一人が沈黙を破る。


 「稼働可能な機体がない。終わりだ…。」「地方隊の魚雷艇はどうなった?」「無駄だ。それより溺者救助に向かわせろ。」「陸軍の要塞砲が頼りとはな。」「陸軍の超重爆なら…。」「高高度の水平爆撃など当たらん。」


 堰を切ったように参謀たちがざわめく。用意した戦力の大半が失われても、国防の任を放棄する意志は消えない。


 「『アクィラⅢ』と『リベルラ』を飛ばしましょう。砲弾も無限ではないはずだ。」「パイロットに死ねというか!」「しかし!」


 議論の末、残る旧式戦闘機と練習機に爆装をさせる第三次作戦案。無辜の市民を艦砲射撃から護るため、無駄弾を使わせようと命令を下そうとしたとき、


 「敵戦艦、針路変更!退いていきます。」


 通信員が、生き残りの偵察機からの報告を叫ぶ。


 「助かった、のか?」「追撃だ!」「罠の可能性もある、これ以上は駄目だ。」


 安堵する者、追撃を主張する者、脅威が去っても騒ぐ参謀たちとは対称的に司令官は黙想していた。


 ——一体、私達はどこで間違えた?事前の評価を覆す強力な水上艦艇、あの異世界の国家に我々の常識は通用するのか?そもそもなぜ大統領は戦端を開いた?有能な人物ではないが、愚物でもないはずだ。裏に何かが潜むのか?クソ、手札が少ないな。


 思考は加速し、脳内のクラキ=ニューロン発火反応が激しく明滅するが、答えは出ない。


 そんな司令の疑問が解けるのはかなり後のことだった。

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