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【急募】男女比1:60世界で国ごと生き残る方法(仮題) Part5945  作者: 月丘
第一章 陽没海の日章旗

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Guided Missile Cannon Carrier 《CCGー901 むさし》 《中》

墜星暦5945年秋 陽没海


 哨戒機からの通報を受けた『グラディウスⅢ』40機と護衛の爆装『コメートⅠ』は、示された座標へ舳先を向ける。


 双発レシプロエンジンの唸りと振動を響かせる『グラディウス』シリーズの三代目は、空母への搭載はできない陸上機だが、対艦ミサイルの優秀な発射母機として『連邦』海軍の主力陸上攻撃機に採用されている。


 2機のエンジンが最高速度580km/hで曳く三人乗りの機体には、機首下部と後部に自衛用の20mm機関砲を備え、胴体下部には対艦ミサイル、翼下には250kg爆弾が吊り下げられている。

 そのコクピットには、パイロットの他に航法士兼後部機銃手を兼ねる通信手が同乗し、機首には副操縦士がレーダーや火器管制装置などの電子兵装、下部機銃の操作を担当していた。


 「たかが戦艦一隻に多すぎないか…。」


 一番槍の栄誉を授かる機の副操縦士が全員の心を代弁するように呟く。横を見れば美しく蒼天へV字に翼を並べる『グラディウスⅢ』、上を見れば対艦対空兼用のロケット弾を携える爆装『コメートⅠ』。

 護衛機を含めれば50機を超えるジュラルミンの鳥は、この後にも数をさらに増やす手筈だ。


 ――パッ


 突如、目標の戦艦がキラリと輝くと、巨大な黒い花火が先頭の『グラディウスⅢ』の群れを覆う。一般的な高角砲の射程外からの対空射撃、訳もわからず最初の編隊は砕け散った。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 電磁火薬複合砲(レールガン)特有の青白いプラズマ砲煙を480mm主砲から吐き出した『むさし』、その全てを掌握する電子の神は、経済的に片を付ける意志を固めた。

 数だけは多いレシプロ機に高価なSM-6、ESSMは()()()()と判断し、安価な艦砲の480mm対空砲弾射撃試験の的、程度に解析演算回路は割り切る。一応、対宙自律砲弾も搭載されているが、今回は無誘導、通常の対空弾を撃つ。


 「いきなり主砲とは、コスト意識まであるのかコイツは…しかし、軍用防空AIとしてはどうなんだかね?」


 主砲発砲の薄い振動をその身に感じつつ、『むさし』から飛び立つ砲弾の射撃マーカーと、それに触れては消える敵機のマーカーを中将は指先でなぞった。


 「副砲、11番から13番自動射撃開始。」


 RTD防空システムは前部副砲塔、三連装155mm電磁火薬複合砲(レールガン)の火力も哀れな鳥へと向ける。猟銃というには過分な『むさし』の存在意義は、砲口を煌めかせ淡々とFICディスプレイの《捕捉》表示を《撃破》に塗り替える。


 戦闘行動中、『むさし』FIC直上の第一艦橋は防御力が低いため無人となる。レーダー機器に近いここには電磁装甲も無く、複合装甲も薄い。


 秋の日差しと発砲のプラズマ光が、金を蒸着コーティングさせた電磁遮蔽ガラス越しに無人の艦橋を交互に照らす。


 だが、主がいないはずの艦長席に、一人の少女が眠っていた。日本海軍の士官用制服に身を包み、振動軍刀(ヴィブロソード)を抱き、肘掛けにもたれ、長い銀の髪を椅子に伝わせる少女。その身体は薄く透けている。

 ホログラムで艦橋に投映された『むさし』艦載RTD防空システム、電子の神の分霊は磁気嵐でクラキ=ニューロン発火反応に異常をきたし、未だ眠っていた。


 「『やまと』(CCG-900)『むさし』(CCG-901)『いせ』(CV-950)『ひゅうが』(CV-951)…寝ている艦が多すぎるな。」


 人間のいない空間に呟きが響く。

 窓際にはもう一人白衣の少女。艦橋のガラスにその姿は映らない。この艦の艦載RTD防空システムに瓜二つな彼女は、山梨先端技術研究所から代理(リモート)で『むさし』を操る。

 今の国防軍戦略ネットワークは、全てのRTDシリーズ、仮想下士官の(オリジン)である彼女の手のひらの上にあった。磁気嵐が破壊した後始末は、電子の神の権能をもってしてもまだ途上にある。


 ——ボクでも過労死しちゃうよ。と眠そうに欠伸をすると、艦橋の幻は消えた。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 「バカな!認められるか!通信『第一次攻撃隊()()、二次攻撃の必要あり。敵艦への打撃確認できず。』畜生!」


 戦場を遊弋する『グラディウスⅢc』機長は怒りと恐怖に肩を震わせた。攻撃機は『ピルムMk.Ib』を切り離す間もなく全機喪失、護衛の『コメートⅠ』すらも逃れられず死の黒煙に呑まれる現実。


 対潜爆弾程度しか持たない哨戒機では、基地に無電を打つことしかできない。傍観者の自らの不甲斐なさに歯を喰い縛る。


 「機長…燃料が帰投限界です。」


 「…貴様ら、泳ぎは得意か?」


 電子機器に囲まれた狭い機内で、部下に低く問う。


 「仕方ありませんなぁ、遠泳なんて兵学校以来ですよ。」


 「あのう…浮き輪ありましたっけ。」


 着水覚悟で監視を続けることを機長は決める。この化物を見失うことは、『連邦』の庭、聖域に等しい陽没海沿岸が魔の海に変貌することを意味した。

 前大戦でも攻撃を受けたことのない『連邦』本土、機長の故郷の港町もこの陽没海に面している。


 友軍機が全滅した今、この機長には単機で逃げ帰るほど臆病さも、単機で突撃する無謀さも無かった。


 第二次攻撃隊飛来まで、しばしの幕間の時間『グラディウスⅢc』は『むさし』上空を漂う。

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