服の好みと博士と助手の話
「今日はどんな服を買おうかな~!」
僕と博士しかいない研究室……ではなく、今日は博士と一緒に服を買いに来ている。
いつも通り博士の気まぐれで来たわけなんだけど……
「おっ、この服助手君に似合いそうだね~」
「……はぁ、いきなり『出かけよう』なんて言うから何事かと思えば、急に服だなんて。一体どうしたんですか?」
「ん?ただの気まぐれですが、何か?」
「だと思ってましたけどね。……一応まだやりかけの作業があったんですが」
「大丈夫大丈夫!帰ってやれば良いよ!」
「期限、明後日なんですけど」
「……だ、大丈夫大丈夫!か、帰ってやれば良いよ!」
「声、震えてますよ。まぁ、良いですけどね。何とか間に合いそうなので」
「なんだ~、じゃあ、いいじゃん」
「良くは無いですけどね。それにしても、何で急に服なんですか?」
「んー、お互いいつも白衣だと面白くないだろ?だからこういう華やかな服でも着て、私たちの日常を彩ろうではないか!」
「僕たち、白衣を着るのが仕事までありますけど。……仕事したくないんですか?」
「……」
「目を逸らさないでください」
「ま、まぁ、いいじゃないか。たまには!」
「……はぁ、というか思ったんですけどこの服を買うお金ってどこから来てるんです?」
「げっ」
「この間、僕たち良い顕微鏡買ったばかりじゃないですか?なので、今僕たちにはお金が無いはずなんですけど……」
「……えーっと……それは……まぁ…………スゥー……」
「……もしかして、博士また絶対に手を付けちゃいけないって言った貯金に手を付けましたね!」
「……」
「だから、目を逸らさないでください」
「ちょ、ちょっとぐらい良いじゃんか!どうせ貯まる一方なんだからさ!」
「貯金ってそういうものでしょうに」
「……もー、折角楽しくショッピングしようと思ったのに雰囲気壊さないでよ!」
「今この瞬間でさっきまでのやり取りの記憶消えたんですか?」
博士は僕のド正論パンチに耐え兼ねたのか、服屋の奥へと逃げていく。
「……それにしても、博士って普段そういうファッションとか興味示さないのにちゃんと『好み』はあるんですね」
「えっ?」
「いや、さっきから博士が手に取る服って結構系統が同じだなと思いまして」
「あー……、確かにそうだな」
「何か理由とかあるんです?」
「……うーん、しいて言うなら――」
「『こういう服が好き』って言っていたからかな」
博士はそう言うと、僕に向かってフフッと微笑む。
「……」
「ハハハッ、どうした顔が真っ赤だぞ」
「そ、それはお互い様ですよ」
「だろうな」
博士は軽く「ちょ、ちょっと言ってくる」と、まるで照れを隠すかのようにさっき手に取った服を持ってレジへと向かった。
あの服の系統、前に僕がファッション雑誌を読んだときに「好き」だと言ったやつ……
……博士、貴方という人は……ホントに……。
僕は「ふぅ」と1回深呼吸をして、真っ赤に染まった顔と共に博士の事を待つのだった。
皆さんこんにちわ 御厨カイトです。
今回は「服の好みと博士と助手の話」を読んでいただきありがとうございます。
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