レジのおばあちゃん
2021年 喫茶店でコーヒーを飲んだ時のお話
おばあちゃんがカワイイ。
いつも行く喫茶店のレジカウンターにそのおばあちゃんは座っている。見た感じ90近いだろうか。おそらく家族経営の店なのだろう。店の制服を身に着けベレー帽を斜にかぶり、小さなメガネをかけてレジの前にちょこんと座っている。こう言っては失礼なのだろうがとてもカワイイ。
席はそれほど多くはないからレジが混むこともない。そんなにうるさい客だっていない。おそらくレジ係はいなくても十分に回せるだろう。だが、あえておばあちゃんをレジに据えたのだ。それはボケ防止のためだったかもしれない、生きがいを与えるためだったかもしれない、目の届くところに居てもらうためかもしれない。
だが、レジに座っているおばあちゃんを見て「いいなあ」と思う私がいる。また来たいと思ってしまう私がいる。家族にも、おばあちゃんにも、店の客にもベストな選択なのではないだろうか。
このお店の看板娘は紛れもなくこのおばあちゃんだ。少なくとも私がこの店に通う理由の一つになっている。
おばあちゃんの周りの空気がゆっくりと流れている。心が落ち着く。かわいさというものは歳と関係ないのだと思い知らされる。
「ごちそうさま」
コーヒーを飲んだ私はおばあちゃんに声をかける。おばあちゃんは人差し指だけを使いゆっくりとレジを打つ。うまく打てるとこちらを見てニコッと笑う。いいなあ、実にいい。
このおばあちゃんはカワイイ。