表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/100

2021.11.02.『夕焼けの見えるファーストフード店』と『携帯電話』の悲しい話

初出:2021.11.02.(火) Twitter

お題:夕焼けの見えるファーストフード店 が舞台で『携帯電話』が出てくる悲しい話を7ツイート以内で書いてみましょう。

タグ:現代,社会人,悲恋,別れ話,趣味の合う人,

【1/7】

別れよう。そう決めたのは自分じゃないか。


己への叱咤激励は、もうかれこれ一時間は続いていた。


遅い昼食に、と、入ったファーストフード店。

ほとんど手つかずのまま冷めたポテト。同じく、冷たくなってしまったコーヒー。かろうじて半分だけ食べたハンバーガー。

トレーの上のそれらに




【2/7】

夕陽があたるのをぼんやり眺めながら、懐かしいあの頃を思い出していた。

「少食だね」と、あの人は笑って、私が食べきれなかったごはんを食べてくれた。同期会での出来事だ。くじ引きで偶然隣に座った彼は、大きな体に見合った旺盛な食欲で、瞬く間にテーブルの上をきれいにしてくれた。




【3/7】

食べるのは好きだけどたくさん食べられない。でも、残すのも嫌い。

そんなくだらない不満を受け止めてくれたのもあの人で、「じゃあ、今度一緒に食事に行こう」と誘われた。「好きなものを頼めばいいよ、俺がいるから大丈夫」と。


驚くべきことに、本当に大丈夫だった。


デートは楽しかった。




【4/7】

美しい所作でものを食す彼は、一緒に食事をしていて楽しかった。私たちは、いろいろな場所へ行き、たくさんのものを食べた。

SNSで話題のラーメン。サービスエリアのB級グルメ。会社の近くのメロンパン。懐石料理も、フランス料理も、一緒なら怖くなかった。手料理を振る舞えば、それも美味いと




【5/7】

褒めてくれて、気づけば、アパートは最新の調理器具で溢れた。

でも。

突然の実家からの連絡。もともと体の弱かった母が倒れ、暗に帰郷を促された。

後遺症、リハビリ、いずれ向き合うべき介護という現実。一人娘の私には、帰る以外に選択肢はなかった。


目の前に彼がいる空想をしてみる。



【6/7】

大きな口でハンバーガーを食べるだろう。冷めたポテトは、きっと三本くらいずつまとめて口に放り込むはずだ。そして最後にコーヒーを飲み干して、「美味かった」と満足げに笑う。間違いなく。


美味しそうにものを食べるところが好きで。「いただきます」「ごちそうさま」を欠かさず言うところ




【7/7】

が好きで。幸せそうに笑うところが好きで…。


泣きそうになったところで、テーブルの上の携帯電話が震えた。休日出勤の彼からのメッセージは、いつもと同じ。


『今夜、飯食いに行こう』


返す言葉が思いつかず、私はただ呆然と、散らかったテーブルを見つめ続けた——。

お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ