2021.09.25.『騒がしいレストラン』と『植木鉢』の切ない話
初出:2021.09.25.(土) Twitter
お題:騒がしいレストラン が舞台で『植木鉢』が出てくる切ない話を4ツイート以内で書いてみましょう。
タグ:現代,社会人,悲恋,切ない,ヒーロー視点
【1/4】
「こんなに混んでるんだから、あの予約席、空けたらどうです?」
「駄目だ。ほら、無駄口叩いてないで、さっさとこれを三番テーブルへ運べ!」
「はぁい」
目の回るような忙しさの厨房から、不服顔のバイトが姿を消す。
予約なしになだれ込んできた若者たちの声が、店の奥まで聞こえる。
【2/4】
何度目かの乾杯の音頭が響く。
男は無表情のまま、再び愛用のフライパンを手に取った。
◇
閉店後の片付けは一人でやる、と男は言った。
先程の威勢はどこへやら。事情を聞いたのか、バイトの青年も気まずそうに頭を下げ、帰っていった。
喧騒のたち消えた店。残ったのは、表情を殺した男一人。
【3/4】
月明かりを頼りに、窓際の予約席にどっかり腰を下ろし、二人分のグラスにシャンパンを注ぐ。
「なぁ、おい。天国から見えるか?」
一息に片方のグラスを空にして、窓際の植木鉢に目を向ける。
「おまえが置いてった観葉植物、ずいぶんデカくなっだろ?時間、かかっちまったな。悪ぃ…」
【4/4】
ポケットから取り出したのは、金の指輪。
「店が軌道に乗ったら、って約束したもんな。デザイン、気に入んなくても怒んなよ?」
男の震える手が、輝くリングを一本の枝に引っ掛ける。
「愛してる」
こぽこぽとシャンパンの雨が降る。
青々と茂る葉が、男に答えるように静かにその身を震わせた。
ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。




