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世界は彼女中心で回っているのかもしれない

作者: さとうなたろ

小さな庭の真ん中で彼女が一人立っている。

空は曇り空でどんよりと黒い。

彼女は頭にコロッケを生やして、雨を待っている。今日は予報ではソースが降る。

彼女はソースが降るのを今か今かと、遥か上空を見つめながら待っている。

二階の窓から彼女を眺める。彼女と目が合う。手を降ると、彼女は微笑んだ。

ソースが降ってきた。大粒の雨は、彼女の頭上にも降り注ぎ、コロッケをつつむ。

彼女は家の戸口まで駆ける。バタンと音をたてて、扉が閉まる音がした。

横風が吹いて、黒い雨が窓に打ちつける。さっきまで彼女が居た場所は、すでに水溜まりを作っていた。窓に打ちつけた雨粒の中心は薄い茶色をしている。

階段を降りて彼女を手伝う。台所から大皿を持ってきて、彼女の頭に実ったコロッケを収穫する。彼女は良いタイミングで軒先まで駆けてきたらしく、コロッケはちょうどいい具合にソースを纏っている。

収穫し終えると、木の枝のように逆立って、コロッケを実らせていた彼女の黒髪がストンと肩におさまった。

玄関にはソースが少し散っている。大皿にのせたコロッケをダイニングまで運んでから、彼女のためにタオルをとりにいき、手渡した。

タオルで軽く髪や肩についたソースをぬぐうと、彼女はシャワーを浴びに行く。

彼女がシャワーを浴びている間に、付け合わせのサラダをつくり、今朝の残りもののパンをテーブルに並べる。

玄関のソースを布切れで拭き取り、ナイフやフォークを用意していると、彼女が風呂場から出てきた。

ソースはきれいに洗い流され、髪からは仄かな蜂蜜の香りが漂う。

食卓は整い、彼女もそろったところで、テレビをつけてから、食前の祈りを捧げる。

さっそく、コロッケにナイフとフォークを突き立てる。ザクッと軽快な音をたてて、コロッケの中身があらわになる。中には、荒くほぐしたじゃがいもと挽き肉が入っていた。収穫したてなので、まだ温かく、おいしい。

彼女が言った、明日はハンバーグが実る気がするの、と。

テレビのなかでは、ニュースキャスターが明日の天気予報をよみあげる。どうやら、明日も雨で、デミグラスソースが降るらしい。

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