見舞いの人々
俺が再び自分の足で立てるようになるまで、それからさらに二週間の時を要した。その間に俺の下には、何人かの顔見知りがお見舞いに来てくれた。
まずはこの大陸に来てから港町で初めて出会った少年、ルカ。父親であるステファンさんの病状が安定したらしく、ノークリッドに戻ってきたらしい。
そしてルカの付き添いとして、シエラ王国の兵士であるノリスさん。聞けばシエラ王の名代を任されたらしく、港町から国へ帰る親子と一緒に来たのだそうだ。
「フリッツ殿、体の調子はいかがですか?」
「大丈夫……と言いたいところですが、まだ自分で立ち上がることも出来ませんね」
「兄ちゃん、トイレとか大変そうだね」
「うん、まあ……」
心配してくれるルカには申し訳ないが、そこはあまり触れないで欲しい……。
「でも兄ちゃんのおかげて、シエラの王様もノークリッドの女王様も助かったんだろ? すごいや!」
「いや、シエラ王が助かったのはセリカさんが調合してくれた薬のおかげで――そのセリカさんも、サーニャがいてくれたからこそだしね」
元の姿に戻った神樹の葉を、セリカさんが薬にしてシエラに送ったらしい。シエラ王だけではなく、重症化し目覚めなかった人達もそれで助かったと聞いた。
本来であれば勇者たち以外に分け与えることは禁じられているそうだが、今回はセリカさんの計らいで特別に許可を出したそうだ。
もちろん、神樹の葉から作られた薬であることは伏せられたが。
「でもセリカ様もサーニャお姉ちゃんも、兄ちゃんのおかげだって言ってたぜ?」
「え、セリカさんが直接そう言ったの?」
「どちらかと言うと、国として今回の件に関して声明を出された形になりますね」
驚く俺に、側で話を聞いていたノリスさんが補足してくれた。どうやらシエラ王と共同で出した声明のようで、俺たちのことを大陸の英雄として紹介したらしい。
「みんなの頑張りが評価されるのは嬉しいけど、自分のことだと恥ずかしいなぁ」
「何をおっしゃいます。フリッツ殿の功績は、歴代の勇者様が行ってきた偉業と何ら遜色ありません。私も国を出る際に、父から少しでも学びを得てくるよう厳命されましたよ。まあその謙虚さが、学ぶべきところなのかもしれませんね」
そういえばノリスさんはシエラ王国の兵士長、ダンテさんの息子だった。
一国の兵士長にそこまで言ってもらえるのは光栄だけど、俺はそこまで大層な人間ではない。なので、その場は適当に笑って誤魔化しておいた。
三人の他には、ノサリア大陸に戻っていたバウンス船長も見舞いに来てくれた。
エレノアとクロエの手紙が効果的だったらしく、見事バルディゴ、ブレーメン、マリアガーデンからイーストリア二国への食料支援を勝ち取って来てくれた。
だがその成果よりも先に、俺はバウンス船長から苦言を聞かされることになった。
「フリッツよぉ……俺、言ったよな。『楽に行け』って」
「そ、そうですね」
「それが何でそんなボロボロになってんだよ、おめぇは?」
たくましい顎鬚を撫でつけながら、白い目でこちらに問いかけてくる船長。
「……すみません」
「役目を終えてノークリッドに来てみれば、お前さんは重症だし嬢ちゃん達は見てられねぇくらい憔悴しきっているし。オマケに姐さんまで怖い顔して……」
目覚めた時の反応を考えると、かなり心配をかけてしまったはずだ。
「あの時の姐さん、怖かったなぁ。おめぇの事を聞いた瞬間、殺されるかと思うほどおっかねぇ視線がとんできたぜ」
言いながらその時のことを思い出したのか、大きな体をブルっと震わせる船長。まあ俺だって、そんなおっかないティルを見たら同じようになるだろう。
それから食料支援が決まった話をした後、思い出したように船長はこう続けた。
「あぁ……それと世界会議だが、どうやら正式に開催が決まったそうだぜ。今回はバルディゴで開くって話だ」
「バルディゴで? じゃあセントシュタットの復興は……」
「あまり進んでいないらしい。俺は詳しく知らねぇが、デカい戦いだったんだろ? お前さんも参加したって聞いたぜ」
「はい、かなり苦しい戦いでした」
そっか……いくら世界最大の国とはいえ、あれだけの戦じゃ復興も簡単じゃないか。きっと俺たちが分かってない部分でも、様々な被害が発生していたのだろう。
「今のところ参加が決まったのはノサリア大陸の四国。そんでシエラとノークリッドもつい先日の共同声明で参加を表明した。後はエルドリアだな」
エルドリアも既に参加が決まったのか。もしローランが軍で出世していたら、世界会議で再会することもあるのだろうか――そんな考えが頭をよぎった。
「後は南のサウサリアと西のウエストリア大陸にある国々だが、こっちはまだ使者が帰ってこないらしい。まあ遠いからな」
サウサリアには一つ、ウエストリアには二つ国が存在する。
世界には全部で十の国があるが、それらが全て集り知恵を出し合えば――きっと勇者についても、そして魔物たちとの戦いについてもいい案が浮かぶはずだ。
この時の俺は、そう信じて疑わなかった。
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