↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力タンクと蔑まれた魔法使い、魔力で強くなる魔剣を拾う  作者: マコト
シエラ/ノークリッド編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/142

残された時間

 セリカさんのもとまで来ると、ユーリさんとサーニャが治療している最中だった。


「セリカ!」


 そしてティルも人の姿に戻り、俺の手から離れてセリカさんへと駆け寄る。


「あぁ、ティルヴィング様……お懐かしゅうございます」


「しゃべらなくていいわ。もう、こんなに無理して……アナタは昔からそうね」


 苦しげに声を絞るセリカさんの頭を、ティルがそっと抱きしめる。その仕草には、深い慈しみが滲んでいた。二人が再会できて良かったけど、状態はかなり悪そうに見える。その証拠に、治療を行っている二人の表情は暗かった。


「二人とも、セリカさんの容態は?」


「外傷はわたしの回復魔法で治療出来たのですが……」


「精霊が存在を維持するには、特別な力が必要なのです。いま私の力を分け与えていますが、このままでは……」


 サーニャの言う通り、セリカさんの体に外傷は見当たらない。しかし全身から光のようなものが漏れ出ており、徐々に存在感が希薄になっているように感じられる。


 漏れている分をユーリさんが補っているようなのだが、それもかなり辛そうだ。


「もう良いのです、ユーリ。ティルヴィング様が来るまでの時間が稼げれば、それで良かった。私の役目は終わりました。だから、貴方まで苦しむ必要はないの」


「そんなこと言わないでください、姉様!」


 これ以上力を分け与えることを止めるよう、優しく諭すように言葉を紡ぐセリカさん。しかしユーリさんは泣きそうになりながらも、必死にそれを否定した。


 恐らくセリカさんは、最初からその身を犠牲にするつもりだったのだろう。誰にも相談せず、一人で覚悟を決めて。後のことはティルが全て解決してくれると信じて。


 そして俺たちがたどり着くまで、神樹の暴走を抑え込んでみせた。全てセリカさんの想定通りと言えるし、客観的にみればその判断は正しかったのかもしれない。


 だけど――。


「ノークリッドには……私には、まだ姉様が必要なのです!」


 必死に自らの力を姉に分け与えるユーリさんを見ていると、本当に正解だったとは思えなかった。それは理屈じゃなく、感情の部分で受け入れられなかったのだ。


「ティル……」


「直ぐに浄化を始めるわ。神樹を元に戻せば、そこから力を得られるはず。それに賭ける。フリッツ、クロエを呼び戻して」


「わかった」


 色々な感情を押し殺したようなティルの指示に従い、直ぐにクロエの下へ向かう。


 新しい浄化魔法自体は、道中で何度も術式展開の訓練は行ってきた。時間はかかるが発動までは問題なくもっていけるはずだ。後は浄化後に神樹が本来の力を取り戻せるかにかかっているが、この大陸の人々の長年の祈りはきっと届く。


 そう信じている。


「クロエ、浄化魔法の発動に入るからこっちに!」


 俺が叫ぶと、神樹の攻撃に対応していたクロエがすぐさま反応し戻ってくる。だが彼女が離脱した瞬間、それまで分散していた神樹の根が一斉にエレノアへと向かう。


「くっ!」


「エレノア!」


 エレノアはその卓越した技術で全ての根を打ち払い、防ぎ、回避した。だが、今の葉かなりギリギリだった。神樹の攻撃が、先ほどよりも明らかに激化している。


 もしかしたら、俺たちが何かしようとしているのを感じ取ったのかもしれない。


「フリッツ、浄化魔法の発動に入るのか!?」


「あぁ、だけどエレノアの方が……」


「私は大丈夫だ……と言いたいところだが、あまり長くはもたないかもしれん。手数が予想以上に多い」


 神樹の根は、何本も枝分かれして無数の攻撃を仕掛けてくる。さっきの攻撃だって、本来なら一人で受けきれる量ではなかった。


 エレノアだから無傷で済んでいるが、並みの冒険者では命がいくつあっても足りない。さすがに魔法発動まで彼女一人に任せる訳にはいかない。


「分かった、俺も魔力供給が安定したらすぐ戻る! それまで何とか……」


「あぁ、任せておけ! ふふ、お前に頼られるのは何だが心地良いな。いつも一人で何とかしてしまうから、たまにはこういうのも良いだろう」


「ったく、こんな時に何言ってんだよ……。すぐ戻る!」


 そんなに余裕も無いだろうに、エレノアからはまるで不安が感じられなかった。


 信頼してくれているんだろうと思うと少し照れくさいが、俺だって信頼している。彼女が任せろと言った以上、少しでも早く自分の仕事を終わらせて戻るだけだ。



 セリカさんのいたところに戻ると、既にサーニャとクロエが準備万端といった感じで待機していた。しかし――。


「ユーリ、フリッツが戻ってきた。浄化魔法の準備を始めるわよ」


「ですが……」


 ティルがそう促すが、ユーリさんは治療の手を止めることはできなかった。


 気持ちは痛いほど分かる。浄化魔法の発動準備を始めると、力の受け渡しは行えない。それはつまり、セリカさんへの治療を止めるということだ。今にも存在が消えてしまいそうな彼女を、妹であるユーリさんが放っておけるはずがない。


 だけど、エレノア一人で神樹の攻撃を防ぐのにも限度がある。


 非情だと思われても良い。神樹を浄化することが、唯一セリカさんを救うために残された方法なのだ。俺はユーリさんを説得するため、覚悟を持って口を開いた。

読んでいただきありがとうございます!


少しでも「面白いかも」「続きが気になるかも」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】から評価して下さると嬉しいです。


少しでも皆さんに面白いと思って貰える物語を作ることが出来ればと思います。応援宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 厳しいですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。