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魔力タンクと蔑まれた魔法使い、魔力で強くなる魔剣を拾う  作者: マコト
シエラ/ノークリッド編
72/142

それぞれの覚悟

【お知らせ】

前回の話を少し編集致しました。

話の大筋は変えておりませんので、読み直さなくても問題ない程度です。

ただ話のテンポに少し違和感がありましたので、読み易くなるよう少しだけ調整しております。

「っ! ……驚いた、本当に目を覚ましている」


 ステファンさんの家に入りベッドで休む彼の姿を見て、兵士の人はそう驚きの声を上げた。一方、待っていたみんなは突然の来訪者に戸惑いを隠せないようだった。


「フリッツさん、こちらの方は?」


「シエラ王国の兵士の人だって。名前は……」


 サーニャに答えつつも、そういえば名前を聞いていなかったと思い出す。


「あぁ、まだ名乗っていなかったね。私はシエラ王国軍のノリス。国王様の命を受け、各地で疫病に苦しむ人たちへ支援を行っている者だ」


 兵士の人――ノリスさんはそう名乗りつつも、自分の任について説明してくれた。


「この村にも二日前に来ていたんだが、その時は全員が昏睡状態でね。点滴による最低限の処置は施したものの、我々では根本的な治療が出来ない状況だったんだ」


 二日前ということは、ちょうどルカと入れ違いになってしまったのか。


「他の村の様子も確認しに行く必要があったから、ひとまず見張りだけ残して一旦この村を離れていたんだが……昨日その見張りから町に誰かが侵入した形跡があると連絡を受けてね。急いで戻ってきたら住民の症状が改善していたんで驚いたよ」


 なるほど、それで俺たちと鉢合わせることになったという訳か。


「フリッツ殿、先ほどは失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした。あなたがいなければ私たちは民の命を救えず、我が身を犠牲にして疫病の原因を突き止めた王にも顔向けすることが出来ないところでした。本当にありがとうございます」


「いえ、自分は気にしていません。それにお礼なら、そこにいるサーニャに言ってあげてください。村のみんなを治療したのは彼女ですから」


 ノリスさんにそう答えつつ、俺はサーニャの方へと視線を向ける。


「そうでしたが……彼女が治療を。本当にありがとうございました。シエラ王国を代表して、お礼申し上げます」


「えっ! いえ、その……わたしは自分に出来ることをしただけで……」


 頭を下げらたサーニャはしどろもどろになっているが、それだけのことをやってのけたのだ。限りある時間の中で浄化魔法を修得し、成功させた――その全ては彼女の頑張りから来ているものであって、俺がしたことなんてほとんど無いに等しい。


「ところでノリスといったかしら? 少し聞きたいことがあるんだけど」


 そんな中、いつの間にか人の姿に戻っていたティルがそう尋ねた。


「何でしょうか? 自分に答えられることであれば良いのですが……」


「さっき『シエラ王が我が身を犠牲にして原因を突き止めた』と言っていたけど、国王は食料が原因であることに気付いていたということかしら?」


「はい。とは言っても、国王様がその答えにたどり着かれたのはつい最近のことです。その後すぐに各地へ自国産の食料を口にしないよう御触れが出されましたが、この町のように王都から離れた場所では既に重症化している者が多く……」


 確かにこの町は東大陸イーストリアの北端に位置している。王都からも相当な距離があるはずだし、逆に王都にいた人達は直ぐに対応できたことで重症化を免れたのだろう。


「アナタたちがこの町の住人と違ってピンピンしているのはそういうことね。それで、国王がその身を犠牲にしたっていうのはどういうことかしら?」


 ティルも今の説明でおおよその事情は察したみたいだけど、さらに切り込んだ質問を投げかける。この遠慮ない物言いは彼女らしいと言えばそうなんだけど……。


「ティル。その、もう少し聞き方と言うか……」


「いえ、構いません。むしろ皆さんには聞いていただきたいのです」


 王の安否も関わってくる話だし、もう少し気遣った方が良いんじゃないか――そう思い口を開いたが、それを遮ったのは他でもないノリスさんだった。


「皆さんだからお話し致しますが、わが国の王は少し前から生死の境をさまよっておられます。ですから私の話を聞いて、どうか国王様を救って頂きたいのです」


 その言葉はあまりに切実で、俺だけでなくそこにいた全員が息を吞むのが分かった。決して安請け合い出来る問題ではないが、この大陸に来たのは元より疫病で苦しむ人たちを救う為。その対象が民であろうと王であろうと、身分は関係なかった。


「話してもらえますか、いったい王様に何があったのか」


 俺の言葉にノリスさんは頷くと、少しずつこの国に起こったことを語り始めた。


 ※


 事の起こりは半年前、とある農村で一人の男が原因不明の病に罹ったのが始まりだった。その病は体に黒い斑点が浮き出ることから、当時は黒斑病と呼ばれていた。


 その病は次第にシエラの各地で確認され、遂には王都にまで噂が届いた。シエラ王は感染の規模から黒斑病を疫病と認定し、直ぐさま原因の究明に乗り出したそうだ。


 その中で焦点となったのは、症状が重たい者とそうでない者の差だった。


 王はそれぞれ該当する者から話を聞き、少しずつ原因の切り分けを行っていった。その過程で見えてきたのが、両者の食生活に差があるという事実だった。


 片方は食事の全てを自国で取れた食材で作り、片方は別の国で暮らす家族から送られてくる食料で食事を作っていた。また農作物を主食としていた家と、遠洋で取れた魚を主食としていた家でも疫病による症状に明確な差が出ていたらしい。


 そしてたどり着いた結論が、自国で生産している食料だったという訳だ。


 だが確信が欲しかった王はある行動に出た。なんと城に貯蔵してあった保存用の他国産食料を全て国民に開放し、自国産の食料を全て自らの食事としたのだ。


 当然その施策は誰もが反対したらしいが、王は断固として譲らなかったらしい。そうして自らを実験台とした、命がけの検証が始まりを告げたのだった。



「当時の私たちは、病の原因が自国の食料でないことを祈るしか出来ませんでした。ですが今思えば、無理をしてでも止めるべきだったのです。王を守ることが役目であるにも関わらず、王命だからと受け入れてしまった自分が恥ずかしい……」


 拳を強く握りしめそう漏らすノリスさんからは、強い後悔の念が感じられた。だけど実際に王が下した決断を止められる人なんて、果たしてどれだけいるだろうか?


 自分の命を賭けてまで国民を守る――そんな王の強い意志を尊重した判断は、決して責められるものではないと思う。


「……状況はわかったわ。つまりアナタたちは国民を第一に考えた王の命に従い、今もこうして各地で苦しむ人たちの支援に回っているという訳ね」


「はい。王の為にも、一人でも多くの国民を救う責任が我々にはあるのです」


 ティルの問いに、そう力強く頷くノリスさん。きっと他のシエラ兵たちも彼と同じく、今は動くことの出来ない王の代わりに各地で支援活動を行っているのだろう。


 世界のことを考えても、シエラ王の回復は必要なことなんだけど……。


「ティル。シエラ王のことは治せそうかな?」


 話を聞く限り王はかなりの量の魔素を体内に取り込んでいるはずだ。病状の進行度合いによっては、もしかしたら浄化魔法すら受け付けない可能性がある。


 おそらくティルであれば、その辺りの判断もつくのではないだろうか?


「ここで答えてもいいのかしら?」


 だが返ってきたのは、逆に俺に対する問いかけだった。


 こういう言い方をするということは、やはりもう治療できる段階ではないのか?  

 もしそうなら、俺はどう答えるのが正解なんだろうか?


「……教えてください。私も覚悟は出来ております」


 しかし俺が答えを出すよりも前に、ノリスさんがはっきりとした口調でそう告げた。その表情は何かを悟り、あふれ出そうになる感情を押し殺したものだった。


「一つ教えてちょうだい。王の体にはどれくらい痣が浮き出ていたかしら?」


「……体全体に浮き出ておりました。足先から顔にいたるまで」


「なら残念だけど、サーニャの浄化魔法でも治療は出来ないわ。そこまで進行してしまうと、体が魔法を受け付けなくなるの」


「そう、ですか……」


 やはりダメなのか。覚悟はしていたことだけど、実際に救えない人がいると分かると自分がいかに無力なのかを痛感させられる。そして、それは彼女も同じだろう。


「ティルさん、本当に……本当にダメなんでしょうか!? わたし頑張ります……体に負担がかかっても構いません! だから、なんとかならないでしょうか?」


 サーニャは一縷の希望を求め、泣き出しそうになりながらも懸命にティルへ訴えかけていた。きっと何かやりようはあると、そう信じているのだ。


 だけどティルは、そんな彼女にあくまで淡々と現実を突きつけた。


「サーニャ、魔法は万能ではないの。シエラ王を治療出来ないのは、アナタが未熟だからではない。歴代のどんな聖女にだって、救えないものはあったわ」


 その答えを聞いた瞬間、サーニャはの体は糸が切れたように崩れ落ちてしまった。


「あ……あぁ……」


「……」


 茫然自失となったサーニャも酷い表情をしていたが、、それはティルも同じだった。予想にしか過ぎないけど、先ほどの言葉だって本意ではないのだと思う。


 それでも敢えて伝えたのは、きっと何かしら考えがあってだろうと思う。だけど今のサーニャには、それを受け止めるだけの心の余裕はなかった。


 誰もが口を閉ざし、重い空気が室内を支配する。だがこのままでは、シエラ王の決死の努力が無駄になってしまう。それだけは絶対に避けないといけない。


「……よし」


 ノリスさんの話で、この大陸を取り巻く大まかな状況は把握できた。ここまで得られた情報を整理して、少しでも手足を動かしていくしかないだろう。


 上手く言くはどうかなんてわからない。それでもサーニャがここまで自分の責任と向き合っているのだ。まだ冷静さを保っている俺が考えなけれないけない。


 王を救える可能性だって、まだ決してゼロという訳ではないのだから。

最近書いていなかったので、少しばかり宣伝をば。


読んでいただきありがとうございます!


少しでも「面白いかも」「続きが気になるかも」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】から評価して下さると幸いです。


少しでも皆さんに面白いと思って貰える物語を作れればと思います。応援宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 状況はよくないですが、最善の道をいくしかないですね。
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