久しぶりのペスタ
ブレーメンでの報告を終えた俺たちは、バルディゴを通過して第二の故郷とも言えるペスタの村へ向かっていた。距離的にはもう少しで村が見えてくる頃だけど、俺はまだ今後の鍛錬方法について考えがまとまらないでいた。
「うーん……」
個人的に最も優先したい課題は、不測の事態が発生した時の対応だ。魔獣やダンタリオンとの戦いでは、不意をつかれてかなりの危機に陥ってしまった。味方が側に居たから助かったものの、可能な限り自分で対処できるようにしておきたい。
そして、次点は魔力の制御。
現状でもある程度の火力を出せてはいるが、より強大な敵と戦うためには底上げが必要だ。それには魔力を上手く制御し、ティルへ受け渡す量を上げる必要がある。
だがこの二つの技術を磨くために、具体的にどうすればいいものか……。
「むむむ……」
「ティルさん、フリッツさんはどうしたんですか?」
「ほっておきなさい。色々考えることがあるのよ、オトコノコには」
「そういうものですか……」
隣でティルとサーニャが何やら話しているが、今はあまり気にする余裕もない。一応周囲は警戒しているが、この辺りはもうペスタ付近だから危険もないだろう。
そう思っていたんだけど……。
「止まれ、そこの馬車!」
いきなり声が響いたかと思うと、周囲に人間の気配が増えるのを感じた。
――山賊か?
一瞬そう考えるも、どこかで聞いた声だなと思い直す。
「私が行こう。わざわざティルヴィング様の手を煩わせるまでもない」
「あっエレノア、ちょっと待って!」
外に出ようとしていたエレノアを慌てて静止し、代わりに俺が馬車の外に出る。するとそこには、久しぶりにみる顔が驚いた様子でこちらを見ていた。
「って、フリッツの旦那じゃねぇか。何やってんだこんなところで」
「それはこっちの台詞だ、タイガ……」
傭兵から山賊になり、今はペスタの用心棒となったタイガの姿がそこにはあった。
※
「おぉ! サーニャにフリッツじゃないか。よく戻ったねぇ」
「ただいま、おばあちゃん!」
「ご無沙汰してます、村長」
タイガたちに連れられてペスタ村に戻ると、村長が俺たちを出迎えてくれた。
「タイガたちも、今日はもう見張りはいいよ。ご苦労だったね」
「うっす! お前ら帰って飯にすんぞ!」
「「うぃーっす!!」」
村長の言葉を受け、タイガたち元山賊の連中はそれぞれ解散していった。先ほど山道にいたのも、どうやら怪しい連中が入り込んでいないか見回りしていたらしい。
「タイガたちは真面目にやってますか?」
「あぁ。それに若いものが少ないこの村では、畑仕事や見回りなんかやってくれるだけで大助かりさ。前にバルディゴ王国の兵士さんが来て、タイガたちを取り立てるという話があったんだがねぇ……」
俺が魔獣退治の褒美にとバルディゴ王に頼んでいた件か。
「あたしゃ出世するなら行けばいいと言ったんだが、それも断って村に残ると言ってくれたよ。今じゃ彼らも無くてはならない、立派な村の一員さね」
どうやらタイガたちは、俺なんかよりもずっとペスタに馴染んだみたいだ。
「積もる話もあるけど、二人とも少し休んで待っててくれるかい? 久しぶりに帰ってきたんだ、村の者でとびっきりのごちそうを作ってやるさ」
「本当!? ありがとう、おばあちゃん」
「楽しみにしています、村長」
ペスタの料理は久しぶなので、サーニャも俺も思わず笑顔になってしまう。他の国の料理も美味しかったが、思い入れという意味でここの味は特別だ。
ここは村長の好意に甘え、料理が出来るまでは少し休ませてもらうことにしよう。




