第97話 出立
私は、朝食から昼食までの空いている時間でリベリオのところに向かった。
「何しに来たの?」
開口一番嫌そうに言ったリベリオもこれで見納めなんだと思うと、不快な気分にもならなかった。
「お礼を言おうと思って。僕の処罰を望まないと言ってくださったので。それに、貴方はセスの処分を軽くするようにも言ってくれました。ありがとうございます」
何か要求でもされるんじゃないかとビクビクしていたけど、特に何もしてこなかったので本当に意外といい人なのかもしれない。
「何それ嫌味? 僕が隊長に厳重注意を受けたのは知ってるんだろ? その僕が君の処罰を望めるわけないじゃないか。言ったはずだ、この件の責任の一端は僕にあると。だから君にも謝っただろ」
「はい。聞きました。でもいいじゃないですか、素直に聞いてくれても。これが最後なんですし」
「……はいはい、分かったよ。僕も悪かったね。あいつのことは嫌いなんだ」
えぇ……そんなはっきり言っちゃうの。
「治癒術師として中途半端なのは本当にそうだと思うけど、あいつの性格も気に入らない。僕の手を使わせないようにあいつは無理をしてでも現地で全部治してきたんだろ。君のことは別として、だけど」
「そういえば……そうですね」
私があんなことになるまで3班は誰1人としてここに来たことはなかった。そうしないようにセスが尽力をしていたということなのか。
ただ無理をして現地で治してきたと言うよりは、怪我をしないようにサポートに尽力していたと言ったほうが正しいかもしれない。
「何を言ったって表情1つ変えないし、何を考えているか本当に分からない。嫌いだ」
相当馬が合わないようだ。
子供みたいに嫌いと繰り返すリベリオに、何だか笑いが込み上げてきそうになる。
「だからこれでやっと終わりだ。気を付けて帰りなよ」
「はい、ありがとうございました」
最後に少し笑みを見せて、リベリオは言った。
顔はイケメンなのに本当にもったいない。そう思いながら私はリベリオの診療室を後にした。
昼食、全員が揃う最後の食事だ。
なのに朝とは打って変わってみんなの言葉は少ない。それが何だかとてつもない寂しさを醸し出しているように見えた。
ガヴェインやセスはそんな風に思ってないんだろうけど、残りの私たちは確実にそんな空気の中で食事している。
たぶん、レオンとはこれでお別れになるからだろう。3週間という期間ではあったけど、彼もまた私たちの仲間だ。
あの一件で提出された進言書はレオンの提案だったと後から聞いた。
私自身はあまり深く関わったりはしなかったけれど、いい人だな、という印象は持っている。
出発の前に、全員でヴィクトールの元へ挨拶へ行った。
ヴィクトールはただ、「ご苦労だった。気を付けて帰れ」と言うだけだったが、その顔は柔らかい笑みを浮かべていた。
帰りの保存食と今日の夕食分のお弁当を食堂の人たちから受け取って、いよいよ出発の時が来た。
「みんな、気を付けて帰ってな」
レオンがどこか名残惜しそうにそう口にした。
私たちも同様に名残惜しい気持ちを抑えられずに、レオンに別れを告げた。
ここで出会った人たちにもう会うことないのだろうかと考えると、ひどく寂しい気持ちになった。




