第83話 処分・3
「君は僕のせいだって言いたいんだろ? 確かにその要因は否めないことは分かってるよ。でもね、死の淵にある人間の痛覚を失くすことがそもそも危険なことなのに、そこからさらに興奮状態にさせることがどんなに危険か分かるかい? 結果がどうであったかではなく、その行為自体が問題なんだ」
「……だから、セスは処分を受けると?」
「当然だろ。セスは素人じゃない。ちゃんとした契約の元、ここにいるんだ。プロとして適切な判断ができなかったとなればそれはもちろん罰を受けなければならない」
「僕が処罰を望まないと進言したら?」
処分はもう免れないという話になっている以上、私がこの行動を起こしたのはセスがシェスベルを連続投与した結果によるものとして断定されている。
セスのしたことで直接的な影響を受けたのは私だ。まぁ、リベリオもそれによって想定以上の消耗を強いられたかもしれないが、それはひとまず置いといて、私の命がその行動によって危険に晒されたことでセスはその責任を負わなければならなくなった。
私がそれを許すと言えば、それで済まないだろうか。
「言っただろ。結果がどうであったかではなく、その行為自体が問題だと。君がこういう行動を起こさなければ、セスはシェスベルの連続投与を表沙汰にすることすらしなかっただろう。バレなきゃ問題ない……そう思っていたはずだ。それは医術師としてあるまじきことだと思わないか?」
「…………」
もうこれは完全に私のせいだ。
セスは私がこんなことをするなんて思ってなかった。だから連続でシェスベルを使っても問題はないと判断したんだ。
私が何も問題を起こさなければ、確かにセスはそのことを公にするつもりはなかったんだろう。それについてはまぁ、セスでもそんな風にやっちゃいけないことをやっちゃうことがあるんだなとか思う程度でそれ以上何かを思うことはない。そもそもそれは私のためにやってくれたわけだし。
むしろ、なぜセスはシェスベルの連続投与を公にしてしまったのか。私が暴れたからと言っても連続投与したことを言う必要はなかった。私が勝手にやったことにしてくれればそれでよかったのに。
「……まぁ、言うだけ言ってみたら? 僕は治癒術師長としてセスの判断は不適切だったと進言する必要がある。でもどうするか決めるのはヴィクトール隊長だ。君が処罰を望まないと言うのなら、その意見も判断材料にするだろう。どうせあと2週間で君たちの任務期間も終わるんだ。今さら処罰したところであまり意味もない」
予想外の言葉だった。
なんだろうこの、実はこの人思っているほど悪い人じゃない的な言動は。やり辛くなるから正直やめてほしい。
でもそうか。今さら処罰したところであまり意味もない、か。その言葉で少しだけ光が見えた。
明日自由になったらヴィクトールの元へ行ってみよう。
「で、そろそろ痛み止め打ちたいんだけどいい?」
「あ、すみません。お願いします」
そのためにリベリオがここにいることを忘れていた。
「質問していいですか」
「また? さっきの話はもういいよ」
「違う話です。治癒術を数回に分けるのは神力を温存するためですよね。それが1日に1回というのは決まりがあるんですか?」
リベリオは私が暴れた直後に命の危機を脱するまで一度治癒術をかけ、その次の日、つまり今日私がまだ眠っている時にも一度治癒術をかけたと聞いた。そして残りは明日だと言う。
リベリオに今疲労の色がなくとも、治癒術をかけるのは明日。
「規約としてそれがある訳じゃないけど僕はそう決めてる。ここは最後の砦だから。命の危険がない人の治癒は焦らない。ここは何でもかんでも限られている。人も、物もすぐに補充できる訳ではないからね」
「なるほど……それを1人でやってるんですね」
最後の砦。
セスもここに戻ってくれば大丈夫だと、リベリオに私を託した。
その時にリベリオが疲弊していては救える命も救えない。そりゃそうだよね。聞くまでもなかった。
すっごいいいことを言ってると思うんだけど、本当にやり辛い。なんだろう、リベリオには最後まで悪役キャラでいてほしいのに。




