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第81話 処分・1

 夜にセスが持ってきてくれた食事は全然喉を通らなかった。

 いわゆる病人食で、消化がいいうどんに似た麺なのだが味は美味しいと思うのに食欲が出ない。

 それでも普通に食事ができるようになったら復帰してもいい、とリベリオが言っていたし何とか食べたくて何度か手を付けては置いてを繰り返した。


「シエル、無理に食べなくてもいい。栄養は点滴から取れているから大丈夫だ」


 そんな私を見かねてセスが声をかけてきた。


「でも、普通に食べられないと復帰できないってリベリオさんが言うから……」


「無理をして食べてもそれは"普通に食べられる"ことにはならないよ。焦らなくていいから」


 確かにそれもそうか……。

 早く復帰したいけど無理するのはやめよう。


「明日には食べられるようになるかな……」


「そう考えるのがよくない。気持ちは分かるけど焦る気持ちが余計にストレスになる。君は本当に死ぬほどの怪我を負ったんだ。ゆっくり療養して大丈夫だから」


「うん、ありがとう……」


 ストレスと言うのなら大体の原因はリベリオだ。

 本当にやつのせいで余計な事態になった。

 リベリオから言わせればセスや私が悪いということなんだろうけど。


「じゃあ、俺はこれを下げながら帰るよ。明日にはみんなも顔を出しにくるだろう」


「あ、待ってセス、さっきリベリオさんと話してた処分のことなんだけど」


「それは君が気にすることじゃない。また明日来る。おやすみシエル」


「待ってよ……待って!」


 私の静止に振り向くことすらせず、セスは部屋を出て行った。


 無視かよ!!


 1人になって部屋が静寂に包まれる。

 処分ってどんなものだろう。私のせいなのにセスが処分を受けることになるかもしれないなんて。どうしよう。

 セスはただ、私を助けようとしてくれただけだ。痛み止めを打つように4班の治癒術師に頼んでくれたのだって、私の痛みを和らげようとしてくれたからだろうし。


「シエル」


 考え込んでいると不意に声がかかった。


「あ、班長……」


 部屋の入口にガヴェインが立っていた。

 ガヴェインは私が眠っている間に何度か来てくれたらしいのだが、こうして話をするのはあれ以降初めてだ。


「目が覚めたとセスから聞いていたが来るのが遅くなってすまなかったな」


「いえ、僕が眠っている時に何度か来てくれたと聞きました。ありがとうございます。それと……すみませんでした」


 私を助けるためにガヴェインはリベリオに頭を下げて頼んだと聞いた。

 暴れた私を落ち着かせてくれたのもガヴェインだし、ずいぶん迷惑をかけてしまった。


「いや、命が助かって本当に良かった。あの時はお前が死ぬんじゃないかと焦ったぞ」


 ベッド横の椅子に腰掛けながらガヴェインが言った。


「すみません」


「もう謝るな。お前の気持ちも分かるしな。それにしてもお前があんな風に怒るなんて驚いた。痛み止めの影響でっていうのはセスから聞いたが、ずっと大人しいやつなんだと思っていたからな」


「痛み止めの影響じゃない、あれは僕が自分でそうしたんです。どうしてもあの言い方が許せなくて。だからセスのせいじゃないんです。この件でセスは責任を問われると聞きました。セスは悪くないって、班長からも隊長に言ってくれませんか?」


「そうか、聞いたのか……」


 ガヴェインは私にはそのことを言わないつもりだったのだろう。

 どこか諦めるような表情で小さく呟いた。


「大丈夫だ。その件に関しては心配しなくていい。俺も隊長に寛大な処分をと進言したし、フィリオたちも全員で署名をして進言書を提出したんだ。隊長も悪いようにはしないだろう」


 フィリオたちがセスのために進言書を提出したことを知って純粋に嬉しく思う。が、セスが責任を取らなければならないという事実は変わりそうにない。


「処分は、どうしても免れないんですか」


「……そうだな。それは致し方ない」


「……僕のせいなのに……僕が、後先考えずにあんなことをしたから……!」


「お前たち2人は、互いのためにと行動したのだろう。今回はたまたまそれがかみ合わなかっただけだ。仲間のためにとやったことを、隊長だってちゃんと分かってくれる。大丈夫だから気負うな」


 そう言ってガヴェインは私の頭をポンポンと軽く叩いた。


 まるで父のようだと、どこか懐かしい気持ちになった。

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