第73話 大喧嘩の理由
次の日、私はリーゼロッテとパーティーを組んだ。
フィリオ、アイゼン、私、リーゼロッテのパーティーだ。
「エレンの様子はどう?」
最初は死体処理側からのスタートでやることもなかったので、私はリーゼロッテに切り出した。
「夜だとやはり気持ちが不安定になるのか部屋では泣いていました。私とベルナはただ寄り添って落ち着くのを待つしかできなくて……」
「そっか……。でもそれがエレンにとって支えになっているんだと思う。僕たちにはできないことだし、そうやって側にいてあげてほしい……。今は言葉をかけるよりもその方がエレンにはいいんだと思う」
「はい……」
「お前ら何か揉めてたけどそれはもう解決したのか?」
私とリーゼロッテの会話にアイゼンが直球で飛び込んでくる。まぁ、別にそれはみんな分かっていることだからいいのか……。
「そのことは今はお互いに触れていません。ベルナはこういうことには不器用ですし、それを気にしていたらエレンは本当に1人になってしまいますから」
大人な対応だな、リーゼロッテ。
自分の気持ちはどうであれエレンのためにそういう対応ができるリーゼロッテを私も見習いたい。
「どうして2人は揉めていたんです?」
フィリオも会話に入ってきた。
アイゼンの質問にリーゼロッテが気を悪くした風もなかったので、今なら聞けると思ったのだろう。
「エレンはオルコット家の私が討伐隊に参加して騎士見習いに志願していることを快く思っていないみたいで。そのことについて度々嫌味を言われていたので、私も報復しただけです」
報復って……。
怖いな、リーゼロッテ。
「エレンは、孤児院の出だと聞きました。そんなエレンから見たら私が討伐隊に志願することはおかしいことなのでしょう。でも私は、オルコット家を出て騎士になりたいんです。家に縛られて一生を送るなんて、嫌なんです」
「なるほど……」
当初の予想通り、身分の差的な問題だったんだな。
そんなことでエレンもいちいち嫌味を言うなんて、と思うけれど、私が知らないだけでこの国には根深い格差問題があるのだろうか。
「その辺りについては僕たちが口を出すことではないので何も言いませんが、きっとエレンはそんな貴女が今までの確執を顧みずに寄り添ってくれて、嬉しく思っているのではないでしょうか。どうか、支えになってあげてください」
「支えになれれば、いいんですが」
フィリオの言葉にリーゼロッテは悲しそうに目を伏せた。
この日の休憩はベルナと一緒だった。
ベルナはエレンとどう接すればいいのか分からない、と肩を落としていた。
ただ隣にいるだけでいいんじゃないの、と言ってはみたものの、納得したのかしていないのか、休憩時間も1人で考え込んでいるようだった。
ベルナもベルナなりに、エレンを励まそうと尽力はしているようだ。
それから1週間が経った。
エレンは笑顔こそあまり見せないものの、ずいぶん普通に振る舞っているように見える。
自分から話を振ってくることはあまりないが、こちらから話を振れば普通に会話もしてくれる。それが雑談と呼べるようなものであっても、だ。
だから私たちはなるべくエレンに些細な話題でも小まめに話しかけるようにしていた。
エレンからしても私たちが励ますためにそうしているだろうことは分かっていると思うが、それに対して不快な態度を取ることもなく、むしろお礼を言ってくることもあった。なかなかいい兆候なのではないだろうか。
「君に聞きたいことがある」
この日の休憩はセスと一緒だった。
横穴でお弁当を広げるなり、セスがそう口を開いた。
「なに?」
あれ以来2人きりで話をする機会もなかったので若干気まずい。
「俺が1週間前、ヴィクトールに解任要請を出したことを誰かに話したりしたかな? そのことについて誰も触れないから、君は誰にも話していないんじゃないかと思っているんだけど」
そういえばあれから1週間、特にそれについて何の動きもない。動きがなさ過ぎて忘れそうになっていたくらいだ。




