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第63話 パーシヴァル・3

「僕、休憩に入るね」


 この時点でこちら側のメンバーで休憩に入っていないのは私とフィリオだけだったので、あえて自分がエレンと一緒に休憩に入ることを宣言した。

 今のエレンには、何の言葉も意味をなさない。フィリオの慰めは酷だ。

 フィリオも意義を唱えなかったので、私はエレンと共に横穴へと入った。


 エレンは泣いている。

 ここにパーシヴァルもいるのだから、当然だろう。

 無理やりこらえないと、私も涙を流してしまいそうになる。でも今のエレンの前で私が泣くわけにはいかない。私は食事には手を付けず、ただ静かに時を過ごした。


「……私が死ねばよかった」


 不意にエレンが口を開いた。

 あぁ、それは私も家族を亡くした時に何十回、何百回と思ったことだ。


「私が死んだって悲しむ人はいないのに……。パーシヴァルには、悲しむ人がたくさんいる。小さい兄弟だって……ご両親だって……」


 エレンが死んでもパーシヴァルが死んでも、私たちが悲しむ。フィリオだったらそう言うだろう。でもそんな言葉は今のエレンは望んでいない。


「どうしてみんな私を責めないの……私のせいなのに……私のせいで、パーシヴァルは死んでしまったのに……! 私が死ねばよかったのに……!」


 エレンの瞳から、ボロボロと涙が溢れてくる。

 見ているこちらも辛い。


「……僕はね、昔自分のせいで家族を全員亡くしたんだ。君とは状況が違うから君の気持ちが分かるなんて無責任なことは言わないけど、僕はその時、誰から何を言われても何の意味もなかった。たくさん泣いて、涙が枯れるまで泣いて、それでもまだ自分を責めることをやめられなかった。自分の周りには誰もいなくて、いっそこのまま死んでしまおうかと思ったけれどそんな勇気も出なかった」


 私の言葉を、エレンは何も言うことなくただ聞いていた。

 これは前世での話だ。色々と突っ込まれるとボロが出る。でも今のエレンはきっとそれを聞いてこない。そんな気がした。


「だから僕は現実から逃げた。現実から逃げて、それから何年か経って、やっとこれじゃいけないんだと現実に戻ってきた。戻ってきてよかったのかはまだ分からない。大事な人ができたというわけでもない。でも、今こうして僕は現実を生きている。君も立ち直るまで時間がかかるかもしれない。もしかしたら死んでしまいたいと思うかもしれない。でも君の気持ちの片鱗へんりんを知っている僕はここにいる。だからいつだってたくさん泣いていいんだ」


 そう言いながら私は泣いていた。エレンも私の話を聞きながら泣いている。

 そうやって休憩の終わりまで2人で泣いて、一緒に外へ出た。

 横穴から出る時にエレンは、小さく「ありがとう」と私に言った。


 目を腫らして出てきた私とエレンを見て、なぜかニコラが泣いた。

 そんなニコラを見て、私もエレンもまた泣いた。

 エレンはそれでも向こう側に歩いて行くと、リーゼロッテと抱き合ってさらに泣いていた。

 その様子を皆が見ていたが、誰も何も言わなかった。


 交代時、パーシヴァルの死を知った4班メンバーのショックを隠しきれない表情と態度に、正直また泣きそうになってしまった。

 私たちはそんな4班に後を任せ、担架でパーシヴァルを慎重に運んだ。そのための担架がちゃんと用意されていることに少なからずショックを受けた。


 下山すると駐屯地は慌ただしくなったが、私たちはガヴェインの指示でパーシヴァルを安置所へと運んだ。


「誰か、あの時の状況を全部見ていた者はいないか?」


 ガヴェインが私たちに聞く。


 あの状況を客観的に見ていたのは恐らく私だけだろう。

 フィリオとベルナはワイバーンを相手にしていたし、エレンとリーゼロッテは目の前でパーシヴァルが倒れて状況把握ができたとは思えない。


「僕、見てました。たぶん、全部」


「そうか、シエルすまないがヴィクトール隊長の元へ一緒に来てくれないか」


「分かりました」


 それを説明しろと言うのか。

 できるだろうか、冷静に。


「セス、来れるか」


「……ああ」


 パーシヴァルの遺体の状況を確認していセスにガヴェインが声をかける。


「お前たちは風呂に入って休んでいい。夕食後に一度話をするから無理にでも夕食には来るように」


 そう言って安置所を後にしたガヴェインに私とセスも続いた。

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