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第60話 大喧嘩・2

 有無を言わさない感じでフィリオとパーシヴァルが話し続けているので、食卓は異様な雰囲気に包まれている。

 2人がとてつもなく気を遣っていて可哀想になってくるくらいだ。

 セスとガヴェインはその異様な雰囲気に何かを察しながらも、特に何かを言うことはなく黙々と食事を摂っていた。


 その後の任務でもエレンとリーゼロッテはお互いに口を利かなかった。まぁ、パーティーが別々だったというのもあるが、そのおかげでエレンと組んでいた私は非常にやり辛かった。


 任務終了後のお風呂、ここにはセスとガヴェインを除いた男子が揃っている。

 フィリオたちから説明を求められた私とニコラは、やり取りの一部始終を3人に話した。


「リーゼロッテがそんなことをねぇ……。よっぽど気に食わなかったんだろうな、エレンのことが」


 アイゼンが大きなため息を吐きながら言った。


「何が原因なのか僕には分からないけどね……」


 私たちがベルナから聞いたのは、エレンが何かでリーゼロッテの機嫌を損ねてリーゼロッテがエレンの服をゴミ箱に捨てたということだけだ。


「エレンはさ、小さいころに両親を魔族に殺されて孤児院で育ったんだ。結構苦労して来たみたいで……。だから高貴な生まれの人たちに対してひねくれてるところがあってね。だからリーゼロッテに対してもきつく当たってるんじゃないのかなぁ」


 ニコラが言いづらそうに切り出した。

 エレンにそんな過去があったとは。


「そういえばリーゼロッテは、高貴な家の出なんだっけ?」


「オルコット家といえば、ベリシア6大公爵の一つだよ。本家なのか分家なのかは分からないけれど、カルナに住んでいるなら本筋に近いところではあるんじゃないかな」


 私の質問にニコラが答えてくれた。

 爵位についてはよく知らないのだが、とりあえずすごい家の子ってことだけは分かった。


「なるほどね、だからエレンは俺に対しても当たりがきついのか」


 アイゼンが言う。

 そういえばアイゼンが自己紹介した時にもエレンは顔をしかめていた。家族を魔族に殺されたから魔族そのものに対して悪いイメージが定着してしまっているのかな。


「魔族だからって全員がそうなわけじゃないのにね……」


「まぁ、いつものことさ」


 ニコラがフォローするように言ったけれど、アイゼンはそこまで気にしていないようだった。

 そうなるくらい、魔族であることで今まで言われ続けてきたのだろう。


「それにしてもそんな名家の令嬢がなんで討伐隊へ? カルナの学校を卒業したらそのまま騎士見習いになれるんじゃないの?」


「普通は貴族の令嬢だったら教養のために学校に行くだけで、騎士団に入ろうなんて思わないよ。公爵家お抱えの騎士団がいるくらいだしね。なぜリーゼロッテがこの討伐隊にいるのかは分からないけれど、家の命令で卒業と同時に騎士見習いにならなかったんだろうっていうのは分かる」


「なるほど」


 私の質問にニコラが丁寧に答えてくれた。

 そういうものか。確かにお偉い貴族様だったら騎士団には入らないか。


「とりあえず、そういう理由であの2人はいがみ合っているということですか。今までも見えない部分ではそうだったのでしょうが、あそこまで露骨にみんなの前でやられるのも困りますね」


「そうは言っても口の挟みようもないよな」


「班長も何も言わないしな」


 フィリオの言葉にパーシヴァルとアイゼンが首をひねる。

 班長も何も言わないというか、フィリオとパーシヴァルが言わせる隙を与えなかったというか。


「放っておけばいいんじゃないの。そんなところまで面倒見なくてもいいでしょ」


 ああいう女子のいざこざには首を突っ込んではいけない。今まで通り、ベルナに仲裁してもらうのが一番丸く収まりそうだ。

 そんな私の言葉に、とりあえずそうだね、と4人も頷いてひとまず話し合いは終了となった。

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