第57話 クリフォード
次の日の午前中に、簡易ながら葬儀が執り行われるらしく、私たちはちょうど休みなので出席するようにと指示を受けた。
この日の任務は暗い雰囲気に包まれていた。
エレンとニコラの動きも鈍かったように思う。いつもと何も変わらなかったのはガヴェインとセスだけだ。
何も感じていないのか、表に出さないだけなのか。
同じパーティーだったニコラが、空いている時間でクリフォードのことをよく話していた。私たちに聞かせたいというよりも、そうすることで自分の気持ちを落ち着けているように見えたので、ただ相槌を打ちながら話を聞くに徹した。
任務終了後、朝食とお風呂を済ませ、私たちは葬儀場へと向かった。
駐屯地の端の方に小さな建物があり、そこが葬儀場だった。もうすでに1班、2班の面々と騎士団の人間が揃っている。4班は今まさにデッドラインで討伐に当たっているのでここにはいない。
この世界でも、葬儀の時は黒い服を纏う。ただ当然ながらそんな礼服を持っている人はいないので、みないつも通りの普段着だ。
部屋の奥にある祭壇に、クリフォードは横たわっている。体には白い布がかけられ、周りを光の触媒が淡く照らしている。
隊長であるヴィクトールが一言挨拶した後、神父っぽい服装をした人が鎮魂の言葉を紡いだ。この世界でも宗教はあるのだろうが、私は詳しく知らない。みんなが手を合わせて祈っているので、私もそれに倣った。
その後、みんなで生花をクリフォードの周りに供えて葬儀は終了となったが、皆すぐには立ち去らず、クリフォードに縁があった人たちのすすり泣く声が静かな部屋に響いていた。
私が死んだら3班のみんなはこんな風に泣いてくれるのだろうか。そんなことをぼんやりと思った。
クリフォードはすぐに馬車に乗せられ、故郷であるシスタスへ帰還となった。火と水の混合術が使える術師が付き添い、氷でその遺体を冷やしながら行くんだとか。ずいぶんと準備が万端だ。
部屋に戻ってもニコラは塞ぎこんでいて痛々しかった。
任務中に聞いた話からはそんなに仲がいいというわけでもなさそうだったけれど、やはり学生時代を共に過ごしてきた仲間の死は堪えるのだろう。
1人になりたいだろうニコラを部屋に残し、私はフィリオたちの部屋へと向かった。3人が快く迎え入れてくれたので、部屋の奥にあった椅子に腰かける。
「いざこうやって現実に直面すると辛いものがあるよな」
「そうですね。僕たちも今まで以上に、気を引き締めなければ」
パーシヴァルの言葉にフィリオが険しい表情で答えた。
そして沈黙が流れる。直接的に故人と関わりを持たなかった私たちの心にさえ、深い影を落としているくらいだ。ニコラとエレンの心情は察するに余りある。
お昼までの1時間余りを、私たちは言葉少なに過ごした。
昼食、ニコラもエレンもちゃんと食堂へは来たが口数は少なく食欲もあまりないようで、重々しい空気のまま私たちも昼食を済ました。
午後からはニコラと共に部屋で休んだ。
朝までの任務時間だったのでさすがに眠く、私はすぐに眠りについてしまったが、ニコラはどうしていたのだろう。
夕食時には再び重い空気で皆食事を摂った。
「お前たち、落ち込むのは分かるがそんなに塞いでいると任務に支障をきたす。そうなったらお前たち自身が危なくなるんだ。自分や仲間の命を守るためにも立ち直れ」
さすがにこの空気はやばいと思ったのか、ガヴェインが言った。
みんなも分かってはいるのだろう、誰もが神妙な面持ちで頷いた。
次の日以降、表面上はいつも通りだった。それぞれ思うところはあるのだろうが、それなりに雑談もするし、笑顔も見られる。
しかしその話題は不自然なくらい誰も出さなかった。ニコラやエレンからもクリフォードの名前は出てこない。そうやって無理やりみんなが立ち直ろうとしていた。
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