第56話 公平性・2
「デッドライン討伐は班ごとに討伐数、怪我人の統計を取っている。セスを主戦力とすることで他の班よりも著しく怪我人が少なくなったとなれば、それは公平性に欠けるだろう。しかし他の班と同等の怪我人を出してしまっても治癒術師の実力差で公平性に欠ける。だからセスを戦闘のサポートに置くことで均衡を保とうとしているのだが、実際それで保たれているのかはまだ分からない」
「まだ2週間ちょっとですもんね」
しかしなるほどなぁ。人命よりも大事なことはない、というセスの考えも分かるし、騎士団の判断もまた理にかなっている。
これは難しいところで、どちらかが正解でどちらかが間違っているということではない気がする。
騎士団だってセスの意見を尊重したい気持ちはあるのだろうが、組織として動いている以上それを簡単に許可するわけにもいかないのだろう。
"公平性"これが全ての答えだ。
「前の3班ではセスはそれなりに戦闘に参加をしていた。2週間という短い期間ではあるが、そこだけを見ればやはり統計上、他の班より負傷率は著しく低い。残りが2週間だったし、異例の事態ということもあってその時の隊長も目を瞑ったらしいが……」
「難しいところですね。セスの気持ちや、体への負担のことを考えるとセスの希望通りにしてあげてほしいような気もしますが、それをしてしまったら均衡が崩れてしまう。セスのサポートも受けずに怪我もしない、ということができればそれが一番なんでしょうが」
怪我をしない、というだけではセスがサポートに入ってることが戦力過多ということになってしまうだろうから、サポートのない状態で負傷者も出ない。これができれば万事解決だ。
……できないだろうけど。
「まぁ、無理な話だろう。対リザードマンではどの班も毎回1~2人の怪我人が出ている。後衛は手を出さないという対策を取ったとはいえ、無傷でやれるかと言ったらそうではないからな」
「ちなみにそれは公平性的にはどうなんですか? セスの助言によって、戦略性は他の班と変わってしまったと思いますが」
「リザードマンが詠唱に反応することは遅かれ早かれ皆気づくことだ。そこでどういう対策を取るのかは班によって変わってくる。お前たちみたいに後衛は手を出さないとする班もあれば、そうしない班もある。3班は早くそのことに気づき、そういう対策を取ったというだけの話だ。実際その対策を取った後でもフィリオは負傷しているわけだしな」
なるほど、そういうものなのか。
なら術師を狙う、じゃなくて詠唱反応するって最初から教えてくれてもいいのに。
「まぁ、解決策としては、なるべく怪我をしないということしかないのですね」
「そうなるな」
解決策と言っていいのかどうか。
怪我などしたくてするわけでもあるまいし。
結局のところは代わりの要員がいない以上、このまま頑張るしかないということだ。
それから1か月後、リザードマンによって初めての死者が出たと知らされた。
私たち3班も、リザードマンではどうしても怪我人は出る。フィリオのような大きな怪我はないが、腕を切っただの、防具を壊されただの、何かしらのアクシデントはある。
今回亡くなったのは1班の術師で、名はクリフォード。姓までは聞いていない。エレンとニコラの同期なんだそうだ。
2班が休みの時は1班から引き継ぐこともあるので、私たちも顔は合わせたことがある。そんなに話はしたことがなかったが、優しそうな普通の少年という印象を持っていた。
この日は、1班が7時~15時までの任務で、私たちは23時から7時までの任務だった。1班が16時に帰ってきた時には私たちはみんな夜に備えて寝ていたため、起きてから夕食を摂っていた時にガヴェインから聞かされた。
同期であったエレンとニコラは当然ながらショックを受けていて、なぜ出発前にわざわざ言うんだろうと、そんな2人を見ていて思った。




