第53話 雨
任務開始から2週間ちょっと。本日は7時から15時までの任務時間。この時間が夜を唯一含まないので一番やりやすい。
でも雨が降っていた。土砂降りと言っていい。そのせいで視界がかなり悪い。雨でも関係なしに外で待機なので風邪を引いてしまうかも、なんて話をしていたら、風邪を引いた時はなんと駐屯地にいる治癒術師が治してくれるというのだ。便利。
昼休憩直前の今は横穴側で待機中だ。
パーティーメンバーはフィリオ、パーシヴァル、ニコラ、私。ヒューマ色が濃い男パーティーである。向こうのアイゼンはさぞ居心地が悪かろう。
と思ったが、私だって男の中に女が1人なのである。体が男なだけで。
正直、男勝りなベルナはともかく、エレンやリーゼロッテとなら男パーティーの中にいる方が楽だ。
エレンもリーゼロッテも私とはあまり話すことがない。別に仲が悪いとかではないのだが、いかんせん話題もない。雑談を振ってみても2人ともあまり話に乗ってくれるわけでもないし。
かと言って、女子3人が仲良く話している感じもしない。女子の部屋はさぞかし殺伐としているじゃなかろうかと考えるだけでちょっと怖い。
なんてことを考えていた時、リザードマンが現れた。
リザードマンへの対策を立てたもののあれからリザードマンが出てくることはなかった。
むしろ2日目にして遭遇したことの方がびっくりだったくらいの出現率なのだろう。
正直あの日以来出てこなかったため、警戒心もだいぶ緩んでいた感じはある。
とりあえず無詠唱で石つぶてを放って引きつける。前のやつと同じように、放った石つぶては簡単に手で振り払われた。
リザードマンが両手を刃へと変え、こちらへと向かってくる。心なしか、前回のやつよりも足が速い気がする。個体差なのか、水を無効化するようなやつだから雨でパワーアップでもしているのか。
フィリオとパーシヴァルが迎え撃つために剣を構える。セスもすぐに動けるように私の左前方へと出てリザードマンを見つめている。
リザードマンにより近いのはパーシヴァル。きっとリザードマンはパーシヴァルに仕掛けに行くはずだ。
私は手を前に突き出して集中する。踏んだ瞬間に足を挟んで捕捉する動物用の罠のイメージで、パーシヴァルの間合いに入る手前の地面を踏んだ瞬間にそこから岩の槍を出したい。
が、リザードマンはそこに到達するもっと前、パーシヴァルとの距離がだいぶ離れている段階で跳躍した。
狙いは変わらずにパーシヴァルだが、予定が狂った。リザードマンは高いところから刃を構えてパーシヴァルへと急降下していく。
パーシヴァルは大きく後方へと飛んでそれを避けた。なのでリザードマンが着地した瞬間を狙う。
「……!」
リザードマンは着地してすぐさまパーシヴァルへ向かって地面を蹴る。私が地面から出現させた槍はわずかに足を掠めただけに終わってしまった。
リザードマンが振るった刃をパーシヴァルが剣で受け流す。そのままリザードマンの胴体を狙って剣を横殴りに振った。
リザードマンが後方へと飛んで避ける。着地した瞬間、やつの足元へと再び岩の槍を出現させた。
槍の1本が右足へと刺さる。私はそれをリザードマンの足へ絡めるように変質させ、動きを止めた。その瞬間、駆けつけたフィリオが両手で握った剣をリザードマンへと上段から振り下ろす。
それを左の刃で受け止めたリザードマンは、すぐさま空いている右の刃を横殴りに振る。後方へ飛んで躱そうとしたフィリオだが、あまりの速さに躱しきれず、その刃がフィリオの脇腹をざっくりと切り裂いた。鮮血が舞う。
「ぐっ……!」
フィリオがバランスを崩し、後ろへと倒れ込む。しかしその瞬間、フィリオの後方から走ってきていたパーシヴァルが倒れたフィリオを飛び越し、リザードマンの首を跳ね飛ばした。
その体がゆっくりと倒れていく。
「フィリオ!!」
パーシヴァルが倒れたフィリオに駆け寄り声をかける。左手で押さえた傷口から止めどなく溢れる血を雨が流していく。
出血量からいってずいぶんと深い傷のようだ。あれはやばいのではないだろうか。




