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第50話 規則・2

「後衛の4人、聞いてくれ。リザードマンがあの時シエルとエレンを狙ってきたのは詠唱に反応したからだ。最初にシエルが無詠唱で引きつけた時、リザードマンは一番近くにいたアイゼンを狙いに行ったのを覚えているか?」


「詠唱反応? 言葉は通じないんじゃ?」


 セスの言葉にニコラが問い返した。

 そういえば最初にヴィクトールがそんなことを言っていた気がする。


「詠唱はただの言葉ではないんだ。目に見えないだけで神力なり魔力なりが言葉に合わせて体の周りで形成されている。それを敵に察知されるんだ。無詠唱はそれを体の中で行うから敵に察知されることがない。つまり詠唱せずに近くにも寄らなければリザードマンからターゲッティングされることはないということだ」


 そうなのか。

 詠唱は術のイメージを体に伝えるためのものと思っていたけどそれだけではなかったのか。

 ということはヒューマは神力や魔力を体の中で形成する能力がエルフに比べて劣っているから無詠唱でできないってことかな。


「つまり、遠くから見てるだけってことか。それは横穴に逃げるのと変わらないんじゃ?」


 アイゼンが聞く。

 確かに結果的には同じことだし、それは逃げだと言われたらそうなのだろうか。

 しかしこれなら前衛を飛び越えて後衛が狙われることはない。効果的な方法に思われる。


「逃げるわけではなく、不用意に手を出さない、ということだ。俺たち前衛だって後衛を狙われたら後手に回ってしまう。それなら初めから自分の元へ向かってきてほしいと思わないか?」


「それは確かに」


 セスの言葉にアイゼンは素直に頷いた。


「どうだ? ガヴェイン。これなら文句はないだろう」


「……ああ」


 渋々といったような顔でガヴェインは引き下がった。


「シエル」


「なに?」


「君は横穴側にいる時は無詠唱で後方から加勢してくれ。できれば攻撃よりも足止めしてくれると助かる。水は混合術を含め無効化されるからそれ以外で」


「分かった」


 しかし水以外でか。水なら昨日ベルナにやったみたいに足止めできそうなんだけどそれ以外だと悩む。考えておかないと。


 話はこれで終わり、任務続行となった。

 ガヴェインは後方に控え、1人何かを考え込んでいるようだった。

 私たちはそんなガヴェインに声をかけることもできずに、ただ自分たちの役目が来るのを待った。


「シエル、怪我は大丈夫ですか?」


「うん、フィリオありがとう。今は痛み止めが効いてきて楽になった」


 ジンジンとした痛みはあるけれど、あの耐え難い痛みはない。ずいぶんとよく効く痛み止めだ。


「お前は死体を運ぶのはやらなくていい。解体できるようならそれだけやってくれ」


 ベルナも気遣って声をかけてくれる。


「分かった。ありがとう」


 しかしそれから1度バジリスクが出てきただけで昼休憩となった。

 横穴側とこちら側のメンバーが交代となるが、私はこちらにいていいとガヴェインから指示が出された。その代わりにずっと横穴側を担当してくれるニコラには後でお礼を言わないとな。

 先に行くかと聞かれたけれど痛み止めが効いてる今よりも切れてくるであろう後に順番を回してもらった。


 昼休憩は2時間半かけて行われる。ちなみにこの場所に時計はないので、感覚的にお昼前くらいになったら休憩が開始になる。

 順番を最後に回してもらったので今は1時くらいだろうか。

 休憩はセスと一緒だった。


「もしかして僕に合わせてくれたの?」


 なんとなくそんな気がして尋ねる。


「君が休憩を最後に取ると聞いたからね。ちょうどいいと思って」


 確かに痛み止めはもうだいぶ切れていて傷はズキズキと痛むが、次の痛み止めはまだ打てないのではないだろうか。


「何がちょうどいいの?」


「ここまで来ればその傷を治癒術で治しても大丈夫だろう。もうだいぶ痛むんじゃないか? それにその手じゃ食べられないだろう」


「え、本当? じゃあお願い!」


 その言葉に思わずあからさまに喜びを露わにしてしまった。

 いやだって痛いし。

 そんな私を見てセスは呆れるかと思いきや、真面目な顔で頷いた。

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