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第49話 規則・1

「班長、先程班長は僕たちに加勢に行かないように指示をしましたが、それは何故ですか?」


 フィリオが口を開いた。

 なるほど、あの時向こう側ではそんなやり取りが行われていたのか。

 確かに私が向こう側にいたとしても加勢を進言しただろう。


「大きい敵に対してならパーティーで戦うことは利点であるが、そうではなく、動きも速い敵に対しては逆に人数が多いことで動きが制限される。仲間を巻き込まないように、仲間を守らないと、そういう守るための行動が命取りになってしまう」


「なるほど……。それは、確かに」


「理想的なのは前衛が1対1か2対1くらいで対峙することなんだがな。4〜5人で戦うより安定性は高い」


 後衛は足手まといということか。真っ先に狙われるのだし安定性を考えたらそうなんだろうな。


「じゃあ、リザードマンが来たら後衛は横穴に避難してもらうのは? 気を飛ばせば俺たちでも引きつけられます」


「でもそれじゃ前衛のみんなにだけ負担がかかって不公平じゃないの?」


 アイゼンの言葉にエレンが反論する。

 まぁ、確かにそれはそうだが逆に足手まといになるなら、いない方がメリットではないだろうか。


「エレンお前さっき動けなかったくせに何言ってんだ」


「なっ……なによ……そんな言い方……!」


「事実だろ? あの時シエルにかばってもらわなかったらお前どうなってたと思ってる」


「やめろ」


 言い争いを始めたアイゼンとエレンをガヴェインが一喝いっかつした。


「確かにアイゼンの言うように後衛が避難するのは効果的だ。だがそれをさせるつもりはない。逃げる事は任務を放棄するのと同等だ」


 ガヴェインの言葉に沈黙が流れる。

 そんな理由でダメだと言うのか。

 そうする事で怪我人が増えても仕方がないということか。自己責任だと、そう言いたいのか。


「くだらないな。人命より大事なものがあるとでも?」


 沈黙を破ったのはセスだった。

 到底私たちが口にできないようなことをハッキリと冷たい声で言った。


「この任務はそういう約定の元、交わされた契約だ。ここにいて動ける以上、任務は遂行してもらう。もし後衛だけ逃げて前衛に犠牲者が出た場合、それこそ問題だ」


「……前衛のみで対峙した時に前衛に犠牲者が出るなら、それは後衛がいてもいなくても同じ結果になるはずだ。むしろさらに犠牲者が増える可能性もある。班長として班員を守るのも任務のうちではないのか?」


 先程のアイゼンたちの言い争いと違ってガヴェインもセスも冷たく静かに言い争っている。

 まさかこの2人がこんな風に言い合うなんて。

 ピリピリとした空気に口も挟めず、私たちは皆動揺を隠せない。


「セス、あんたに思うところがあるのは分かっている。だがここでは俺の指示に従ってもらう。そういう契約のはずだ」


「……契約だの、規則だのに縛られて大事なことを見失ってどうする」


「…………」


 再び沈黙が流れた。

 セスの言うことは最もだけど、ガヴェインの言うことも分からないでもない。そういう契約で私たちはここにいる。それは間違いではない。

 だからこそエレンだって不公平だと言ったんだろうし、私たちに逃げるつもりがあるわけでもない。パーティーのためにそうしろと言われればそうするだけで。


 ガヴェインは何も言わない。

 騎士団という立場でなければガヴェインだってこんな風に言わなかったんだろう。そういう葛藤が覗き見える表情をしている。


「……いいだろう、ガヴェイン。契約通りその指示に従おう。だが俺からみんなへ1つ助言をさせてもらう。それはヴィクトールから許可されていることだ」


 何も言わないガヴェインにセスが静かに言った。

 セスはガヴェインが意見を覆すことを待っていたのだろうか。


「……ああ」


 それを聞いてガヴェインも素直に頷いた。

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