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第45話 神力量

「手合わせをしていたら私が撃った気が当たってしまったんだ。それまで私の攻撃をずいぶんと上手く避けていたものだから、当然気も避けるものだと思って……」


「……なるほど」


 ベルナの説明にそれだけ答えて、セスは再び沈黙した。

 痣の前に手をかざし、集中しているようだ。やがてその手が淡く光り、その光が当たった部分の痣がスゥっと消えた。そうして痣の上をなぞっていき、まるで何事もなかったかのように綺麗に痣は消えた。


「どうかな? 痛みも引いたと思うけど」


 体を動かしてみる。怪我をしていたのが嘘のように痛みも違和感もない。


「全然痛くない。ありがとう、セス」


「どういたしまして」


 セスは少しだけ呼吸が乱れているようだった。

 戦闘で激しく動いた後でも息1つ乱していなかったセスだが、やはり治癒術というものはそれだけ神力を消費してしまうのだろう。申し訳ない。


「ありがとうセス。申し訳なかった」


「ありがとう」


 ベルナとアイゼンもセスにお礼を言う。


「これくらいならすぐに神力も回復する、大丈夫だよ」


「ほんとにごめん……。僕、ベルナの気が全く感じられなくて……」


「そうだな……。それだけの神力量を持っている君は、訓練を積まないとベルナデットの気を感じるのは難しいだろう」


 当然とばかりにセスが言う。

 その口ぶりに私は目を丸くした。


「どういうこと? 僕の神力量がセスには分かるの?」


「俺は天族だからね。分かるよ。君はエルフとして考えても桁外れの神力量を持っている。不自然なほどに」


 ずいぶんと不穏な言い方をする。


 以前父からも異常だ、と言われたことがあるのを思い出した。

 ということは父が普通で、私の方が異質な存在だったのだろうか。しかしこの神力は小さいころから訓練で使い果たしてちょっとずつ増やしていったものだ。最初の頃なんてちょっと術を使っただけで倒れていたし、転生者としてチート能力を持っていたわけではないはずなんだけど。


 不自然と言われても反応に困る。迂闊に発言してボロが出てもいけない。


 あぁ、私は今ちょっと動揺が顔に出たかもしれない。


「俺も大体だけど魔属性の人がどのくらいの魔力を持っているかは分かる。まぁ、あの人よりあの人の方が多い、ってくらいだけど」


 アイゼンが言う。

 天族や魔族ってそういう能力を持っているのかな。知らなかった。


「天族は神力を、魔族は魔力を感じる能力が地族よりも長けているからね。まぁ、それはいいとして、つまりシエルは神力に慣れすぎているんだ。匂いに鼻が慣れるのと一緒で、君の元に膨大な神力が常にあるせいで神力を感じることができなくなっている。だから逆に魔属性であるアイゼンが撃った気なら、感じることができたかもしれないね」


 アイゼンが口を挟んだお陰か、セスは先ほどの話にこれ以上深く踏み込むことはなかった。


「そういうものなのか」


 セスの説明に、ベルナが感心したように言った。


 しかし私はどこか胸がざわついたままだ。


 不自然な神力量とは何を意味するのだろうか。天族にそれが分かってしまうなら、そのことでどんな影響があるのだろうか。聞いてみたい。でもそれが転生者だからということなら聞くことによって自分の身が危うくなる可能性もある。リスクが高い……。

 

「訓練すれば感じることができるようになるのか? 慣れた匂いを嗅ぎ分けることは難しいのと一緒で、訓練でどうにかなるものとは思えないけど」


 アイゼンが首を捻って言う。

 その言葉で考え事をしていた頭を現実に戻す。あまり考え込んでいても不審に思われてしまう。いったん、今のことは考えるのをやめよう。

 

「そんなことないよ。神力の残量をギリギリまで減らせばいい。魔力濃度が高い所に行くのもいいね。まぁ、体への負担も大きいし、それだけの量をギリギリまで減らすのも、減らしたものを戻すのも大変だろうから、やるなら覚悟は必要だな」


「……なるほどね」


 ずいぶんと荒治療だ。

 でもいつかはやらなければならない気がする。神属性の気を使う人間と戦闘になった場合、今のままでは対処ができないと言うことだ。


 まぁ、やるにしても訓練に付き合ってくれる人が必要ではあるのだけれど。

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