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第43話 手合わせ・1

「……どうすればいいの?」


 結局、1対1で練習試合をすることになった。

 とは言ってもこちらは術だ。迂闊うかつに威力の高い術を使ってそれが当たってしまえば怪我をさせてしまう。


「なに、当たらなければいいのよ」


 そう言って、ベルナは不敵に笑うが大丈夫なのだろうか。まぁ、自信あり気だし当たるかも分からないけど、一応怪我をしないように水の術を使おう。普段戦闘では地の神術をメインに使っているから練習としてもちょうどいい。


「詠唱してたら相手にならなそうだから無詠唱でいい?」


「ああ、いいぞ」


 最初の対戦相手のベルナに許可を取る。

 正直前衛と1対1で戦って勝てるとは思えない。ましてや詠唱なんてしていたら一瞬で懐に入られて終わる気がする。


 まぁ、何事もやってみよう。


「いくぞシエル」


 そう言うなりまっすぐこちらへと向かって走ってきた。速い。

 私は腕を前に突き出し、手から水を噴射した。水鉄砲の巨大版みたいなイメージで。ベルナはそれを予想通りとばかりに大きく上に跳んでかわした。そしてそのまま私をめがけ急降下してくる。さすが猫。よくあんなに高く飛べるものだ。

 私はベルナが私の元へ到達する前にその場から横へ大きく動いて避ける。ベルナの着地点に水溜りを出現させ、それを噴水のように噴射させた。


「はっ!」


 ベルナがその水を切るように剣を横にぐ。と同時に私の術が空中分解したように散って消えた。どうなってるんだ。それが"気"ってやつなのかな。

 ベルナは着地すると同時に地面を蹴って私の方へと向かってきた。やばい、速い。避けられない。


「っ……!」


 ベルナが左下段から右上段へと振り上げた木刀を、瞬時に作り上げた岩の盾を使って防ぐ。咄嗟のことで強度も出せなかったその盾は、ベルナの木刀を受け止めた衝撃で砂となって崩れた。

 ベルナが再び下段に剣を構える。それを振る前に私はベルナとの間に爆発的な風を発生させ、お互いの体を飛ばし距離を離す。

 器用にくるりと回って着地したベルナはすぐに地面を蹴ってこちらへと向かってきた。私は手を前に突き出し、ベルナの足元に水を発生させ、足を絡め捕る。突然のことで対処できなかったのか、ベルナの動きが止まった。

 しかしベルナはその場で地面に木刀を走らせて上段へと振りぬいた。


 なんだ……?


 とりあえずベルナの頭上から滝のように水を降らせる。リーゼロッテがワイバーンにやった手法だ。水の勢いでベルナの体が地面へと倒れた。


「ぐっ……!」


 と思ったら、何か見えない力が私の上半身へ強くぶつかり、衝撃で後方へと吹き飛ばされた。

 予想もしていなかったそれに対処できず、派手に地面を転がる。

 なんだ?

 全く見えなかった。気を飛ばしたのか?

 前にフィリオが言っていた衝撃波ってやつだろうか。防御もできなかったせいでまともに食らって胸と腹部が激しく痛む。こっちは水の神術で怪我をしないように気を遣ったのにベルナのやつ……!


「なぜ避けない?」


 びしょ濡れになったベルナが、まるで本物の猫のように体を震わせて水を落としながら言う。


「避けるも何も……見えなかった……っ」


「それは見えないだろう。気を感じなかったのかと言っている」


「……感じなかった」


 ベルナが不自然に木刀を振った時点で本当はそれを予測しなければならなかったんだろう。しかし"気"を使われたのはこれが初めてのことなので全く分からなかった。


「大丈夫か、シエル」


 アイゼンが私の側までやってきて手を差し出した。

 私は素直にその手を借りて立ち上がった。木刀を叩きつけられたかのように胸とお腹が痛む。


「うん……大丈夫。ありがとう」


「セスに診てもらうか。まともに当たってただろう」


「怒られそうだからいいよ……。動けないほどじゃないし」


 任務時間外で、ましてや仲間内で手合わせをやっていて怪我をしたなんてセスやガヴェインに知られたら呆れられるを通り越して怒られそうだ。

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