第40話 任務開始・4
「しかし案外出てこないものなのだな。退屈だ」
ここに来てからまだそんなに経っていないが、ベルナは暇なのだろう。そんなことを口にした。
「頻繁に出てこられても困るけどな……」
パーシヴァルがそう返した瞬間、何の音もなく襟巻トカゲみたいなモンスターが現れた。瞬間移動が現実にあるとしたらこうなんだろう、という感じに本当に音もなくいきなり。これはバジリスクか。体長3mくらいはありそうだ。想像より大きい。
「!」
場に緊張が走る。
私は素早く右手を前に突き出し、バジリスクに向かって石つぶてを3つ放った。
ここからバジリスクまでは15mくらい。前世での爬虫類よろしくこちらの爬虫類も360度見渡せる目を持っているのだろう、3つとも避けられてしまった。
「キィエエエェェ」
しかし引きつけるという目的は達成できたようで、バジリスクは甲高く鳴いてこちらへと向かってきた。図体が大きい割に速い。さすがトカゲ。
「地の槍よ。かのものを貫け!」
だいぶこちらへと迫ってきたところでリーゼロッテが岩で槍を作って放った。しかしそれをバジリスクは器用に避ける。予想以上に回避能力が高い。だがその避けた場所にベルナが先回りしていた。
「はっ!」
大きく横に凪いだ剣がバジリスクの肩口を大きく裂いた。緑色の血を噴き出し、耳障りな甲高い声を上げてやつは動きを止める。私はバジリスクの上から岩石の槍を一本落とした。それが背中に刺さるのと同時に、パーシヴァルもバジリスクの頭を上から剣で突き刺して止めを刺した。中々エグイ。
「よし、いいぞお前たち。その調子だ」
「お疲れ様です」
ガヴェインとフィリオ、エレンの3人がこちらへとやってきた。
残りの2人は向こうで待機している。ガヴェインとフィリオがバジリスクの襟を掴んで向こう側へと引きずって行き、5人全員で先ほど教わった死体捨て場へと捨てに行った。
「シエル」
後ろからセスが声をかけて来た。
「君には今まで必要なかったかもしれないけれど、パーティーで戦いをする時は簡単でいいから詠唱をした方がいい。君がどんな術を使うか前衛に把握させるんだ。そうすれば前衛が動きやすくなる」
「なるほど……」
それは考えてなかった。
無詠唱の方が早く相手を仕留められると思っていたけれど、確かに前衛に把握させることは大事なのかもしれない。ゲームならこちらが使った術は味方に当たることはないが、実際には巻き込んでしまうことだってあるかもしれないわけだし。
「分かった。そうする。ありがとうセス」
最初にバジリスクが出てきてからしばらく間が空き、再びバジリスクが1匹出てきた。バジリスク1匹ならなんら問題なく、私たちは先ほどと同じように狩った。
その後割とすぐに今度は土色の大きいヘビが出てきた。それは私の想定以上の大きさで、全長10mくらいはありそうだった。持ち上げた頭までは3~4mくらいの高さがある。
「う、うわぁ」
ヘビは正直苦手だ。小さいヘビですら嫌なのに見たこともないくらいの大きさのヘビに足が竦む。
「石つぶてよ、かのものを撃て!」
引きつけ役の私が尻ごんでいるのを見てリーゼロッテがスネークに石つぶてを放った。3つのうち1つがやつの体に当たり、やつはそのままこちらへと向かってきた。こいつも図体の割に速い。
シャアアアァァァと声を出しながら開いた口は、バジリスクを捕食するに相応しいほど大きい。
こういうヘビ型のモンスターは射程も長い。私のような術師がモンスターの間合いに入っては危険だ。なので、スネークが近づいてくるのと同時に私は後ろに下がった。リーゼロッテも同じように後ろに下がってきた。私の行動は正しいようだ。
スネークは頭を左右に振ってパーシヴァルとベルナを近寄らせない。だがその場から動いてはいないので、地についている部分を狙えば命中しそうだ。
「岩石の槍よ、かのものを貫け!」
スネークの足元(足と言っていいのかわからないけど)から鋭い地の槍を3本出現させて足止めをする。
槍に貫かれたスネークは体をくねらせて苦痛の声を上げた。
その隙にパーシヴァルがスネークの胴体を剣で貫く。そしてベルナが高く飛び上がり、スネークの首を深く切り裂いた。よくあんなに高く飛べるもんだと感心してしまう。
血しぶきを上げてスネークの体がゆっくりと倒れた。




