第35話 3班の治癒術師・1
次の日の朝、班長のガヴェインから3班のメンバーが呼び出された。
隊長のヴィクトールから説明を受けた部屋がある建物で、その中の少人数用の会議室みたいな部屋だった。ここは3班専用の打ち合わせ室だという。
そんなことより、この部屋にはガヴェインと3班のメンバー以外にもう1人いる。
全く見覚えのない男性だ。見た目的にヒューマと思わしきこの人物は、おそらく班専属の治癒術師なのだろう。
青い瞳に、肩より少し長い透き通るような水色の髪をしている。言葉にするのが難しいのだけれど、水は透明だが集まると水色に見える、という感じの綺麗な水色だ。まぁ、実際には透明じゃないのだろうけど。背もなかなか高く、顔も整っている。
つまりイケメン。
おかしなことに、治癒術師なはずなのに腰に帯剣している。かと言って鎧は身に付けておらず、白いシャツに前面を開いた黒いロングコート、黒いズボンと前衛と言っていいのか後衛と言っていいのかわからない見た目だ。
誰も口にはしないが"この人は一体"という疑問を皆も浮かべているようだ。部屋が物々しい空気に包まれている。
「さて、紹介しよう。彼が3班の治癒術師だ。本来はベリシア騎士団の治癒術師が配属されるのだが、欠員が出てな。彼はヴィクトール隊長の依頼により、君たちより2週間早く3班の治癒術師として入ってくれている冒険者だ。この3か月の任務を一緒にすることになる」
班長のガヴェインが口を開いた。
冒険者?
治癒術師の欠員が出たら騎士団から補充されるのではないのだろうか。それにしても治癒術師の欠員とはどういうことだろう。欠員ということは、亡くなったという意味だろうか。まさか前線に出て戦ったとでもいうのか。
「初めまして。セス・フォルジュ、天族だ。本職は剣士なのだが、今回は治癒術師として依頼されてここにいる。騎士団の人間ではないので、どうか気さくに接してほしい。よろしく」
男性が自己紹介をした。
それを聞いて若干のざわめきが起こる。天族というところにみんなびっくりしているのかもしれないけれど、私的にはセスがイケボすぎてざわついた。
いつまでも聞いていたくなるような、心地いい声色だった。むしろその透き通るような髪色とイケメンとイケボに、天族って言われて納得したくらい。
「天族と言っても治癒術は適性があるから使えるだけで、それを本職としている人よりだいぶ劣る。外れの治癒術師で申し訳ないが、その分戦闘のサポートで補わせてもらう」
ざわめきを聞いてか、セスが申し訳なさそうに言った。
剣士が本職だと言うならば、単純に戦力が1人増えると考えていいのだろうか。それで治癒もできるのだから、外れと言うよりもむしろ当たりな気がする。
「セスはSランクの冒険者だ。戦力としては彼1人でデッドライン前の討伐ができるくらいなのだろうが、あくまでもサポートだからな、甘えないように」
Sランク!?
それはすごい。父でもAランクだった。Dランクの自分からしたらSランクなんて雲の上の存在だ。
皆も同様なのだろう、再び室内がざわついた。
「ガヴェイン、それは言いすぎだ。確かにSランクではあるが、俺は天族だからただ長く生きているだけなんだ。あまり期待しすぎないでほしい」
「しかしどうして治癒術師に欠員が出たのですか?」
こちら側からも一通り自己紹介を済ませた後、フィリオが聞いた。それは全員が疑問に思っていたことだろう。本来なら横穴に待機しているのだろうし、欠員が出るなんてよほどのことがあったとしか思えない。
「神力残量が少ない状態で、助かるかどうか瀬戸際の者を無理に助けて命を落としたのだと聞いた。本来ならそれは規約に反する」
自分の神力残量以上の治癒術を使って亡くなったということか。他人のためにそこまでできるなんて……。それとも、何か特別な関係だったのだろうか。
「規約に反するとは?」
「治癒術師は班全体の治癒術師だ。その場ですぐ代わりを補充できるわけでもない。よって助かるかどうかわからないくらいの怪我を負った者は無理に治癒せず、他の者のために神力を温存するのが決まりだ」
パーシヴァルの質問に、ガヴェインは淡々と答える。それはもう残酷なくらい淡々と。




