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第34話 特訓・2

「すごい、どれも同じ大きさだ」


 落ちた石つぶてを拾い上げ、ニコラが言う。


「詠唱をするなら、何か身近なものと同じ形になるようにするといいよ。例えば銅貨でもいいと思う」


 ポケットから銅貨を取り出し、それを見ながら再び空中に石つぶてを5個作り出す。今度は銅貨と同じ大きさで同じ薄さだ。パラパラと地面に落ちたそれを1つ拾い上げ、銅貨と重ねる。


「同じでしょ? ほら」


 ぴったり重なったそれをニコラに手渡すとニコラは驚きの表情を浮かべた。


「すごい、石でできた銅貨だ……。今までこんな風に石つぶてを作り出したことなんてなかったよ」


「確かに攻撃するためって考えたらこんな形は不向きだろうね。でも身近なものと同じ形に形成することはすごく練習になる。やってみるといいよ」


 ニコラは銅貨を左の手の平に乗せ、それを見ながら意識を集中しだした。


「地よ、我が声を聞け。この手の銅貨と同形に5つ現れ給え」


 私がやったのと同じように、空中に5つ平べったい石つぶてが浮かび上がった。ニコラが地面にパラパラと落ちた5枚を拾い上げて見比べる。


「うーん、大きさや薄さがバラバラだ」


 ニコラから銅貨と一緒に手渡された5枚の岩石を私も見比べる。確かに大きさもバラバラだし、薄いものから厚いものと形は不揃いだ。


「最初から5枚も作らなくていいと思うよ。1枚を何度も同じ形に作れるようになってから枚数を増やしたほうがいい」


「あ、そっか。そうだね」


 それからニコラは何度も同じことを繰り返し、銅貨と同じ形の岩石を作り出した。初めは大きさや厚さが不安定だったが、やっていくうちに徐々に同じように作れるようになってきた。きっとすでに基礎ができているから上達が早いのだろう。


 私はそれをただひたすらに見守っているだけだったけど、意外と退屈ではない。ニコラの上達が早いからというのもあるし、子供を見守る親のような気持ちになっているというのもあるかもしれない。父もこんな気持ちで私の練習に付き合っていたのだろうか。


「ニコラ!」


「えっ、な、なに!?」


 大きめの声で呼んだのがびっくりしたのか、ニコラが素っ頓狂な声を上げた。


「ニコラ、そろそろ終わりにした方がいい。倒れちゃうよ」


「え?」


 だいぶ息が上がっている。作り出しているものは小さいが、それを緻密ちみつに形成しているせいで魔力の消耗は激しいはずだ。そしておそらくニコラはそれに気づいていない。


「はぁ……はぁ……確かに、疲れた……。いつの間にかずいぶん魔力を消耗しちゃったみたいだ……」


「明日から任務が始まるからね。今日はもう終わりにしよう。魔力を回復しておかないと明日に支障が出る」


「うん……そうだね……」


「でもニコラ、この短時間ですごい上達ぶりだよ。自分でもわかるでしょ?」


 銅貨と同じ大きさ、同じ薄さに形成された岩石が何枚も地面に転がっている。ニコラはそれを数枚拾い上げて、嬉しそうに笑った。かわいい。


「うん、自分でもびっくりだ……。地は苦手だと思ってたけど、こんな風にできるなんて……。シエルのおかげだよ。ありがとう」


「ううん、ニコラの実力だよ。よかったね」


 しかし学校ではどんな教え方をしているのだろうか。こんな風に練習すれば苦手としていた元素だって短時間で上達するのに、効率の良い術式の練習しかしないのかな。

 そんなことを考えながら、ちょうど昼食の時間だったのでそのまま2人で食堂へと向かった。

 ニコラは相当疲れているのかあまり食が進まないようだったが、それを心配したパーシヴァルに聞かれてもあいまいに笑ってごまかしていた。

 午後はニコラと部屋でのんびりして過ごし、お風呂も何とかやり過ごして1日を終えた。

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