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第33話 特訓・1

 その後はまた前衛組で気について盛り上がっている。それに引き替え後衛組はあまり会話がない。もともとニコラは大人しいタイプだし、エレンとリーゼロッテはあまり話さない。私も別段話を振るようなタイプではないので自然と静かになってしまう。たまにニコラとエレンが何かを話しているが、大体が学校のことであった。


 しかしながら何故父は私に気のことを教えてくれなかったのだろうか。

 エルフには扱えないのだとしても存在は知っていたのだろうし、こんなものもある、くらいのことは教えてくれてもよかったのに。




 夜、ニコラと2人きりの部屋。

 変に意識をしてしまって若干挙動不審だ。当たり前だがニコラはそんなことには気づいていないようで、穏やかに過ごしていた。


「ねぇ、シエル。明日はどうするの?」


 ニコラが聞いてくる。

 ニコラはかっこいいというよりは可愛い系の男子で、常に自信なさげになよなよしているけれど顔は悪くない。もう少し凛々しくしていれば女子からモテそうだ。


「特に何も考えてないよ。やることもないし、寝てようかな?」


 引きこもりだった私には1日部屋で寝ていることなんて造作もない。


「もしよかったらなんだけど……明日ちょっと術の練習に付き合ってくれない?」


 言いづらそうに切り出した。付き合ってと言われて何をすればいいのかわからないけれど、これから3か月共に過ごすわけだから親睦は深めておこう。


「うん、いいよ」


「本当? ありがとう! 僕、風と地を使えるんだけど地の術が苦手で……シエルここに来るまでメインで地の神術使ってたよね? だからコツとか聞きたくて……」


 なるほど。

 確かにニコラは道中、地の魔術をメインとして使っていた。私は使い勝手の良さからよく地の神術を使っていたので、それを見て声をかけてきたのか。


「じゃあ明日は特訓だね」


「うん、ありがとうシエル」


 そう言って笑うニコラは非常に可愛らしい。




 夜は意外にもよく眠れた。

 疲れていたというのもあるのかもしれないが、意識しても意味がないことにやっと体が気づいたのかもしれない。


 朝、3班と4班合同で朝食を摂った。

 4班の面々も学校を卒業したてのヒューマが多いのだが、年若いドワーフの男の子もいた。

 一言で言うのならばショタ。小さくて可愛らしい。オンラインゲームでこういう見た目の種族がいたら女の子がよく使いそう。

 だが見た目に反して力持ちで大ぶりの剣を振り回すという。それはそれで見てみたくはある。

 

 朝ご飯を食べたら今日は各自自由行動だ。

 私は約束通り、ニコラと特訓をするため駐屯地側の森におもむいた。


「特訓なんて言ったけど、どうすればいいのかわからないな」


 なんせ人に教えたことなどない。

 幼少時から、ひたすら使い続けて体に覚えさせるというやり方で上達したので、具体的にどうすればいいのかもわからない。


「シエルは無詠唱でできるんだよね? それは最初からそうなの?」


「いや、最初は詠唱して体にイメージを叩きこんで、だんだん無詠唱でできるようになっていったんだ」


「体にイメージを叩きこむ……?」


 ニコラにはピンとこないようだ。しかしこれ以上説明のしようもない。


 エルフが無詠唱で神術を扱えると言っても、何もせず最初からできたわけではない。

 何度も詠唱して術を使ううちに、自然と体が覚えて来たというだけのことだ。


 だがまぁ、ヒューマは無詠唱ではできないと聞く。ならばそれを練習したところで意味はない。


「どっちにしろ上達するにはひたすら使い続けるしかないんじゃないかな。緻密ちみつなものを作り出してみるとか」


緻密ちみつなもの……」


「地の神術を練習する時は小さ目の石つぶてを全部同じ大きさに何個も作り上げる練習をしてる。意外とこれが難しいんだ」


 手を前に突き出し、パチンコ玉くらいの大きさの石つぶてを5個、空中に作り出す。手を下ろすと宙に浮いていた石つぶてが落ち、コロコロと地面を転がっていった。

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