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第32話 気

 夕食。

 ガヴェインもいるのかと思いきや、3班のメンバーのみだった。


「明日は休みと言っても特にやることがないよな」


「そうだな。つまらんな」


 アイゼンの言葉にすぐさま頷いたのはベルナだ。

 遠征依頼に面白いも何もないと思うのだけれども、ベルナは戦闘好きなのだろうか。確かに野生の猫という感じはする。


「体を休めるための休みですからね……。ここに来るまでの旅で疲れていないんですか?」


「疲れてないな。むしろこれで疲れたなんて言っていて3か月やれるのか?」


「頼もしいですね、ベルナ」


 やたら元気をあり余しているベルナにフィリオも苦笑いだ。

 やはり獣人だからなのだろうか。私はエルフだけど疲れたかと問われれば疲れたと答える。


「なら手合せでもするか? ベルナ」


「ほぅ、アイゼン、それはいい案だな」


「2人とも元気ですね……」


 やる気満々のベルナとアイゼンにさすがにみんな呆れ顔である。ベルナとアイゼンから言わせれば、ヒューマやエルフが軟弱ということなのだろうけれど。

 その後はフィリオやパーシヴァルを含めて4人で剣技について盛り上がりを見せていた。最初はそれを食べながら聞き流していた私だが、気になる単語が出てきた。


 "気"である。


 4人の会話から頻繁に出てくるこの単語は、エルフの里にいた時には聞かなかったものだ。


「ねぇ、"気"って何?」


 4人の会話が一瞬途切れたところを狙って思い切って聞いてみる。

 4人は一斉に私を見て不思議そうな顔をした。


「そうか、シエルは学校に行ってないから知らないのか」


 パーシヴァルが思いついたように言う。

 なるほど、学校で習うようなことだったのか。


「この世界に生きるものはみな、神力か魔力かのどちらかを保有しているのは知っていますよね。"気"というのは、この神力や魔力と同じものです」


「え、神力や魔力と同じ? どういうこと?」


 フィリオが説明をしてくれたが意味が分からない。それならば"気"と表現する必要性はあるのだろうか。


「シエルはエルフなので神力を使って元素を扱うことに長けていると思いますが、我々のようにそうではないものもいます。ですが我々はそれを苦手とする代わりに、神力や魔力をそのまま放出することに長けています。それが"気"です」


「神力や魔力をそのまま放出?」


「例えば光の触媒に神力や魔力を流すと光りますよね。"神力や魔力を流す"ということは、"神力や魔力をそのまま放出する"ということであり、それがすなわち"気を放出する"ということです」


「なるほど。神力を使って元素を扱うことに長けているか、神力をそのまま放出することに長けているかの違いってことか」


 その説明については分かりやすい。

 確かに神力をそのまま放出しろと言われても、私には触媒に流すくらいしかできないし。


「そうです。で、その"気"で何ができるかというと、殺気を上手く消したり、衝撃波を放ったり、剣に気を纏わせて岩を砕いたりできるのです」


「え、なにそれすごい」


「神術や魔術に長けている者ほど気を操ることは苦手だと聞きます。前衛と後衛のバランスが取れているとも言えますね。まぁ、あくまでも地族の話ではあるのですが」


「なるほどなぁ……」


 術を使えない人たちは気を扱えるから術師にも劣らないということか。そうでなくても術師は懐に入られれば弱いんだし、武に長けている者の方が分があるような気がするんだけど。まぁ、前衛と後衛の役割がはっきりしているってことかな。ゲームでもそうだもんね。


「天族や魔族には気も扱えて術にも長けている者なんて五万といるわ。術を使ってきたからと言って油断はだめよ」


 エレンが口を挟む。言っていることは分かるのだが、なぜ天族や魔族と戦うことが前提なのだろうか。


「天族や魔族は器用ってことだね。覚えておくよ」


 突っ込むとまたこじれそうなので曖昧に頷いておこう。

 エレンもそれ以上に何かを言うことはなかった。

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