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第2話 冒険者ギルド・1

「はぁ……」


 服を脱げば否応なしに突きつけられる現実は、いつまで経っても嘘であってほしいと思う。

 さすがに自分の体は見慣れたが、どこか認めきれない部分もあって赤子の頃から父とのお風呂は拒否してきた。結果、父からエロガキという不本意なレッテルを貼られることとなったが、致し方ない。


 強くてニューゲームという類稀たぐいまれなる体験をしているというのに、私は何故そこを間違ってしまったんだ。




 各々久しぶりのお風呂を堪能した後、宿の1階に併設されている食堂で夕食を摂った。


「シエル、明日から早速ギルドの依頼をこなしていくぞ」


 並べられた料理を適当に取り分けながら父が言う。

 ちなみにシエルというのはこの世界での私の名前である。


「はい。いよいよ冒険者としての生活が始まるんですね」


 冒険者。それは誰しもが夢見る……かは分からないが、少なくともこんなファンタジー世界に転生してしまった私は夢見た職業だ。

 生まれ育ったエルフの里では15歳で成人を迎えるまで里から出ることを許されず、娯楽設備もない森の中で退屈な日々を送っていた。

 やることと言えば食料調達のための狩りか、魔法の練習か、森の中の薬草を調合して薬を作ることくらい。調合はいまいち才能がないらしくあまり上達しなかったので、私はこの15年ひたすらに魔法の練習に打ち込んできた。


 その結果、里の人間皆が驚く程の大魔法使いへと成長したのである。


 で、晴れて15歳を迎えた私はこうして冒険の一歩を踏み出したわけだ。


「最初は簡単なモンスター討伐を一緒にやってみるか」


「はい」


 そんな大魔法使いに成長した私が何故父親同伴で街に繰り出しているのかというと、里から一歩も出たことがないために世間に疎すぎるからだ。

 どうやらこの世界にも学校というものがあるらしいので、じゃあエルフだってそんな閉鎖的なことをしてないで子供の内から学校に行かせればいいのに……と思うのだが、どうにも昔からの風習というものはなくならないらしい。時代遅れもいいとこだ。


 まぁ、いい。

 読み書きや計算など、生きていく上で必要な知識は母から教わったので、世界の歴史などはこれからゆっくりと知っていけばいいのだ。

 この世界のエルフという種族は、不老に等しいくらいの寿命を持つらしいので時間はたっぷりある。


 ……なんて、この時の私は思っていた。




 この世界がどんなに厳しい世界かも知らずに。




 朝、久しぶりのベッドで熟睡していた私は父に叩き起こされ、寝ぼけなまこで朝食を摂ってから冒険者ギルドへと向かった。


 現在朝7時。

 ずいぶんと早い時間のはずなのだが道行く人は多い。

 ちなみにこの世界には個人が所有するための時計は普及していないので、外の大時計で時間を確認するしかない。非常に不便だ。私が朝起きられなかった要因でもある。

 まぁ、里にはそもそも時計すらなかったので、あるだけマシと考えよう。


 エルフの里から2日ほどの距離にあるこのシスタスの街は、想像していたよりも都会的だ。

 もちろん元の世界のように車が走っているということはない。だがゴシック調の建物や張り巡らされた石畳は、さながらヨーロッパのようだ。

 門から続く広い大通りに面している建物はそのほとんどが何かのお店で、まるで観光でもしている気分になってくる。


 父は大通りから一本曲がって少し細い道へと入った。

 先ほどの大通りとは打って変わり、歩く人はまばらだ。一本入っただけなのに、こんなにも変わるものなんだろうか。

 この道もお店が多いが、趣向が先ほどとはだいぶ違う。

 同じ飲食店でも薄暗い雰囲気の漂うところや、看板だけが外に出ていて店内が全く見えないところもある。

 武器や防具を売っているお店もちらほら見える。大通りが観光地ならば、この通りは冒険者御用達と言ったところだろうか。


 父はそれからしばらく歩き、この辺りでは一際大きい建物の前で止まった。

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