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第270話 夢を見るためには・1

 転生者は世界的に危険視されればそれを監視、管理している何かに始末されるのではないか、というヨハンの仮説を、セスは顔色を変えることなく最後まで黙って聞いていた。


「あり得ない話ではないと思う」


 そしてこれが、そこまで聞き終わったセスの第一声である。


 ちなみに夕食ついでにそのまま話したので、ここにはレクシーもいる。ヨハン曰く、レクシーもこの件に片足突っ込んでるから話しておくのが筋だ、とのことだ。そのレクシーもまた、口を挟むことなく静かに話を聞いている。


「他人の夢に遠隔から干渉できるのは魔王か神かそういう次元の存在だ、というカムニ族の発言から、俺はこの件がゼノやガスパルの件と何かしらの関連性があるんじゃねぇかと踏んでいる。だから不明瞭なことははっきりさせておいた方がいいと思って俺は昨日の夜、夢の人物に会ってみることを再び提案した。そういう次元の存在が絡んでいるとするならば、すでにシエルが危険視されている可能性だってないとは言えない」


「……なるほど」


 ヨハンの言葉に少し間を開けて、セスはそれだけを呟いた。

 思うところがあるのだろう。ヨハンから視線を外し、考え込むようにどこか一点を見つめて口を閉ざしている。


「話が飛躍しすぎじゃない? 神や魔王が関わってるなんてヨハンの推測でしかないわけでしょ?」


 今まで黙って話を聞いていたレクシーが真面目なトーンで口を開き、全員の視線が集中する。


「それなのにあたかもそうであるかのように決めつけてシエルの不安を煽るのはどうなの? シエルも前の人たちと同じように消されるかもしれないから、そうなる前に全容を明らかにしておけって言ってるように聞こえるよ」


「……なんだと」


 レクシーの言葉とは思えないほどの鋭さに思わず言葉を失う。が、当のヨハンは痛い所を突かれたと思ったのか、苦虫を噛み潰したような顔でレクシーへと強い目線を向けている。


「だってさ、相手が神とか魔王だっていうなら、事前にそれを知ったところでどんな対処ができるっていうの? いくらセスが強いって言ったって、さすがにそんな化け物みたいな相手に勝てるとも思えないし、世界に都合が悪いからって理由で狙われているなら、アルディナだって安全じゃないよね。シエルが夢の中の人に会う利点って何なの? ヨハンがただそれを知りたいだけじゃないの?」


「んだと、てめぇ……!」


 レクシーの言葉に激昂したヨハンが、レクシーの胸ぐらを掴みかけて寸での所で手を引いた。

 相手が女性だから思い留まったのだろうか。行き場を失った手を強く握りしめて、鋭い眼光でレクシーを睨んでいる。

 レクシーはそんなヨハンに全く怯む様子も見せないが、しかしこれはよくない雰囲気だ。私のことでこの2人が揉めるのは申し訳ない。


「レクシー、ありがとう。ヨハンさんも落ち着いてください」


 私の言葉で、ヨハンは気まずそうにレクシーに向けた体を真っ直ぐにして座り直し、レクシーもまた黙って私の方を真っ直ぐに見つめた。


「僕も知りたいと思う気持ちはあるんだ」


 そう言いながらセスの方をチラリと見ると、一瞬悲しげな表情を見せ、スッと視線を逸らした。その様子に胸がチクリと痛む。

 この話を聞いても、いや、聞いたからこそ反対だという気持ちは膨らんでしまっただろうか。


「ヨハンさんの仮説が正しいんだとしたら、僕は自分がそれに関係がないということを証明したい。だから……会ってみたいんだ。夢の中の人物に」


「……どうやって?」


 会いたい、と言ったことには触れずに再び私の方を見て、セスはそれだけを返した。


「えっと……」


 まず先に聞くことがそれなのか。さすがにその答えはすぐに出てこない。


「夢を見る時は命が危ない時なんだろう? どうやってその状態に持っていくつもりなの? まさか俺にそれをやれなんて言わないよね?」


「それについては俺に考えがある」


 捲し立てるセスの言葉を遮るように、ヨハンが口を挟んだ。

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